第5章 ETFの銘柄解説

代表的なETF

今回は代表的なETFの銘柄を紹介してゆきます。

ETFは種類が多いし、似たような銘柄が沢山あります。このためどれを選べばよいか迷ってしまいます。

迷ったら、次のことを思い出してください。

  1. 時価総額の大きいETFを選ぶこと
  2. 出来高の大きいETFを選ぶこと

つまりETFの選別に当っては、いちばん賢い方法は、まず最もポピュラーな銘柄を10銘柄ほどしっかり研究し、それに慣れ親しむということです。

ETFをトレードするとき、最初から目移りしてはいけない。まず最もポピュラーな銘柄をじっくり研究せよ

S&P500をなぞる、3つのETF

S&P500指数は米国を代表する株価指数で、時価総額の大きい銘柄を中心に上位から500銘柄が組み込まれています。但し新しい企業で社歴が短い会社の場合、時価総額でトップ500に入っていてもS&P500指数には未だ組み込まれていない銘柄もあります。

S&P500指数は米国の株式時価総額の約80%をカバーしています。したがってこのETFをひとつ買えば、大体、アメリカの株式市場をまるごと買うのに近い投資効果が得られると言えるでしょう。

S&P500をなぞるETFとして代表的なのは以下の三銘柄です:

  • SPDR S&P500ETF Trust(SPY)
  • アイシェアーズ・コアS&P500 ETF(IVV)
  • バンガードS&P500 ETF(VOO)

実はこの3つのETFだけで2,900億ドル(32.8兆円)近い時価総額があります。

これらの3つのETFは、いずれもS&P500指数に依拠しているため(どれを買っても同じじゃないか)と思うかもしれません。しかし微妙なところで相違があります。

まずSPDR S&P500 ETF Trust(SPY)ですが、これは第3章で説明した通り、1940年投資会社法のユニット・インベストメント・トラスト(UIT)という形態を採用しています。UITの利点は、ファンドに取締役会を設置する必要が無い事とファンドマネージャーを置かなくても良いことにあります。

SPYはアメリカ最初のETFだったので、(当時はUITこそが最も望ましい形態だ)という判断から、その方式が採用されました。しかしその問題点はファンドに含まれている企業が払う配当を、四半期に一度にまとめてしか再投資できないという点です。言い換えれば、その分、キャッシュが遊んでしまうということです。

これに対して後発のIVVとVOOはオープンエンド型投信の形態を採用したので、毎日でも配当の再投資が可能です。

次にSPYの費用比率は0.0945%で、これはIVVの0.07%、VOOの0.05%に比べると割高です。

長期保有した際のETFのパフォーマンスの差は、この費用比率の差でほぼ決まって来ます。だからSPYは他の2つのS&P500をなぞるETFにくらべて、ほんの少し、パフォーマンスが劣後するのです。

同じ投資対象に投資するETFを長期で保有した場合、費用比率の差がパフォーマンスの決定要因になる

それではSPYはダメなETFなのでしょうか? それは、そうではありません。SPYの魅力は、その圧倒的な出来高にあります。前回見たように、兎に角、このETFが最も出来高が多いので、BidとAskの差は限りなく0に近いです。

つまりデイトレするならSPYほど最強のETFは無いのです。

S&P500指数をデイトレするならSPYが最強だ

これとは対照的に、もし皆さんが長期保有を考えているのなら、ベストのS&P500関連のETFはVOOということになります。

S&P500指数を長期で保有したいならVOOが最強だ

ダウ工業株価平均指数をトレードするなら

次に同じく日本人が良く知っているダウ工業株価平均指数に投資できるSPDR DJIA Trust(DIA)というETFを解説します。

この株価指数は優良株30銘柄から構成されています。同指数はチャールズ・ダウによって1896年に考案されました。その当時の構成銘柄数は30では無く、僅か12銘柄でした。それらはアメリカン・コットン・オイル・カンパニー、アメリカン・シュガー・カンパニー、アメリカン・タバコ・カンパニー、シカゴ・ガス・カンパニー、ディスティリング&キャトル・フィーディング・カンパニー、ゼネラル・エレクトリック、USレザー・カンパニー、USラバー・カンパニーなどです。

これらの企業の大部分は、今では存在しません。

指数がデビューしてから、こんにちまで一貫して指数構成銘柄となっているのは、ゼネラル・エレクトリックのみです。

アメリカにたくさんある企業のうち、もっとも優良企業の30社だけがこの指数に組み入れられることから、「ダウ30採用銘柄」はとてもプレステージが高いです。しかし逆の見方をすれば頂上まで上り詰めた企業ばかりがダウ工業株価平均指数を占めている関係で(もうこの企業の成長のピークは過ぎた)というような、成熟企業ばかりになってしまう傾向があります。

従ってグロースを求める投資家にはダウ工業株価平均指数は不適切だと思います。

もうひとつ気を付けなければいけない点として、ダウ工業株価平均指数は、いわゆる単純平均と呼ばれる手法で計算されているという点があります。具体的には、30銘柄それぞれの株価を単純に全部足し上げ、それを除数という株式分割などによる歪曲を除去するための調整値で割算しただけの指数だということです。

この株価指数がデビューした当時は、コンピュータが無い時代でしたので、こういう原始的な指数の設計にならざるを得なかったという風にも言えます。

するとこの30銘柄からなるメンバーのうち、株価の数字がいちばん大きい銘柄が、最も指数に占める比重が大きくなります。

下は2016年3月24日のダウ構成銘柄の引け値です。

銘柄 株価
3M 164.46
ゴールドマンサックス 153
IBM 147.95
ボーイング 132.12
ホームデポ 130.46
ユナイテッドヘルス 128.59
マクドナルド 123.29
トラベラーズ 115.39
ジョンソン&ジョンソン 108.31
アップル 105.67
ユナイテッド・テクノロジーズ 99.06
ディズニー 97.22
シェブロン 94.85
エクソンモービル 83.98
PG 82.89
キャタピラー 75.29
ビザ 74.14
ウォルマート 68
デュポン 63.95
ナイキ 61.65
アメリカン・エキスプレス 60.47
JPモルガン 59.48
マイクロソフト 54.21
ベライゾン 53.56
メルク 53.07
コカコーラ 45.58
インテル 31.88
GE 31.11
ファイザー 30.08
シスコ 27.96

(2016年3月24日の引け値、コンテクスチュアル・インベストメンツ)

すると一番株価の大きい3M(164.46)は、一番小さいシスコ(27.96)に比べて5.88倍もの重要さを持っていることになるのです。

これに対してS&P500指数やナスダック総合指数は時価総額ベースで指数へのウエイトが決まります。この違いを理解しないと(なぜダウ工業株価平均指数だけ、違う動きをしているのだろう?)ということがわからなくなってしまいます。

このETFの利点は、ダウ工業株価平均指数なら、我々が普段から慣れ親しんでいる株価指数なので、値覚えがある分、水準も掴み易いという点でしょう。上に述べたような特徴を分かった上で、トレーディングの対象として使うのであれば、十分、利用価値はあると思います。

DIAはダウ工業株価平均指数というアンティークのような株価指数を敢えてトレードしたいという人には十分利用価値があるETFだ

ナスダック100指数に投資するETF

ナスダックは1970年代に証券会社間をつなぐ電子取引システムとしてデビューした店頭相対(あいたい)市場です。

この市場は新興企業を招致することを目的に設立されました。

その関係で、ナスダックには若い企業が沢山上場されています。ナスダック市場の動きを捉える代表的な株価指数はナスダック総合指数になります。

この市場をトレードする際、最もポピュラーなETFは、ナスダック100指数をなぞるように設計されたパワーシェアーズQQQ(QQQ)です。

ここで気を付けないといけないのは、QQQが依拠している株価指数はナスダック100指数であり、我々が普段、見慣れているナスダック総合(Nasdaq Composite)指数とは違うという点です。

ナスダック100指数は先物やETFのように、逐次トレードされる金融商品が設計しやすいようにとの配慮から出来た、ナスダック総合指数に近似する株価指数です。

ナスダック100指数とナスダック総合指数の動きは、ほぼ同一ですが、上に述べたような理由から、完全には一致しません。

またナスダック100指数(4405.53)とナスダック総合指数(4773.51)では数字が違うので、これらを混同しないように気を付ける必要があります。

QQQをトレードするときはナスダック100指数とナスダック総合指数を混同しないように!

ナスダックにはハイテク、バイオテクノロジーなどの若い企業が沢山上場されています。従って、そのような投資対象に投資したいという人にはこの指数が向いています。

日経225に連動する日本のETF

日経225をなぞるように設計されたETFには、以下のような銘柄があります。

コード 銘柄名 運用会社 純資産総額(億円)
1321 日経225連動型上場投資信託 野村 31023
1330 上場インデックスファンド225 日興 14027
1320 ダイワ上場投信 日経225 大和 13907
1346 MAXIS日経225上場投信 三菱UFJ国際 6619

原油に連動するETF

原油の動きをなぞるETFの代表的なものはUnited States Oil Fund(USO)です。USOは原油の先物を保有することで原油の動きをなぞるように設計されています。

ここが重要な点なのですが、先物には限月(げんげつ)があり、時間が経つにつれて次のコントラクトへ乗り換えなければいけません。この乗り換えコストのことを「ロール・コスト」と言います。このロール・コストは避けることが出来ないので、長期に渡ってこのETFを保有し続けると、ロール・コストの分だけ、ETFのパフォーマンスが原油価格より劣後してしまうという現象が起こります。

言い換えればUSOは長期保有には向かないということです。

金に連動するETF

金の動きをなぞるETFで最もポピュラーなものにSPDR Gold Trust(GLD)があります。GLDは実際に金の延べ棒をロンドンにある金庫に貯蔵することで、ちょうど金価格の10分の1の値段でETFが取引されるように設計されています。

このETFは実際に金庫を持ち、延べ棒を保管している関係で、費用比率が0.40%と比較的高いです。

その反面、先物に依拠したETFではないため、ロール・コストによるパフォーマンスの劣後はありません。