第4章 ETFトレーディングの実際

ETFは誰によってトレードされている?

ETFは個人投資家にポピュラーなトレード対象です。下は米国でETFに投資している世帯の金融資産を示したグラフです。

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これを見るとETFに投資している世帯の平均的な金融資産は50万ドル(5,600万円)もあり、お金持ち層から人気であることがわかります。

ただETF自体は購入コストが非常に低いので、むしろビギナーにこそ使って頂きたい金融商品です。

米国ではETFは金融リテラシーの高いお金持ちの個人投資家に人気だが、その商品性を考えれば、むしろETFはビギナーにこそ向いている

米国のETFが世界の投資信託・ETF市場に占める割合は未だ6%程度であり、ETFの成長が本来、投資信託へ流入する筈だったお金を奪っているという風には言えないと思います。
言い換えれば、従来の投資信託も、新しく出てきたETFも、どちらも成長しているのです。

ETFは本来なら投資信託へ流入する筈の資金を奪うことで成長してきたのではない

ちょっと話が脱線しますが、アメリカ人は一生のうちに何度も会社を変わるので、企業年金だと積み立てが途中で中断してしまいます。
その関係で、転職したら、これまで積み立てた分もそのまま持って行ける401(k)やIRAなどの個人年金が人気になっています。

個人年金では、本人が投資先を選ばないといけません。その場合、個別株を買う人も居ますが、投資信託やETFに投資する人も多いです。
だから個人年金を通じてETFを買っている購買層が、かなり居るということを理解してください。

個人年金の投資先としてETFを買う個人投資家が増えている

それから、これはまた個人年金とは別の話になりますが、アメリカでは証券会社のセールスマンではなく、独立FA(フィナンシャル・アドバイザー)に投資相談し、運用の助言を求めることが一般化しています。

FAは、手数料を上げることを目標とするのではなく、顧客の資産をどれだけ増やすか? ということを目標にして助言活動をしています。

近年、ETFという商品の優位性を理解するFAが増えており、運用の助言の際のメニューとしてETFを積極的に利用するFAが増えています。それなどもETFのブームを後押しする要因になっているのです。

FAがETFの利用価値に気付き、それを積極的に活用しはじめている

ETFは個人投資家だけでなく機関投資家も活発にトレードしています。具体的には年金ファンド、基金、保険会社、投信会社、ヘッジファンドなどです。

とりあえずキャッシュを「駐車」しておく場所として

機関投資家がETFを買うひとつの理由は、とりあえずキャッシュを「駐車」しておく場所としてのETFの購入です。

機関投資家は、とりあえずキャッシュを「駐車」しておくための場所としてETFを購入するときがある

機関投資家は絶えず新規資金の流入や、逆に解約請求を受けます。つまり運用資産は、常に変動しているということです。

いま冬のボーナス・シーズンを例にとりましょう。巷でボーナスの支給がピークを迎えると、「この際、投信を買おう」と考える個人投資家も増えます。すると投信会社には沢山のニュー・マネーが入って来るわけです。

その場合、ファンドマネージャーは既に買いたい銘柄を決めている場合もありますが、そうでない時もあります。

もしニュー・マネーをキャッシュのままで置いておくと、株価指数が上昇したときにパフォーマンスが劣後してしまいます。普段、ファンドマネージャーは0.01%のパフォーマンスを競っているわけですから、ほんの少しでも「遊んでいる資金」を残すと、それが命取りになる場合があるというわけです

それを避けるため、ファンドマネージャーは(とりあえずETFでも買っておこう)という決断をするわけです。これは「インタリム・ベータ(interim beta)」と呼ばれる手法です。

またポピュラーなETFは出来高が大変多く、処分売りもサクサクできます。だから個別株を売却して解約に対応するよりも、ETFを処分することでキャッシュをこしらえる方が有利なのです。

ポートフォリオのヘッジとして

ETFはファンドマネージャーがポートフォリオをヘッジする場合に使われることがあります。

現在、ETFのショート・ポジションは19兆円ほどあります。そのことはつまりETFを「売り」のために使っている投資家も沢山いるということを意味します。

実際、機関投資家のタイプ別のポジションを見ると、ヘッジファンドの場合、S&P500指数をなぞるSPDR S&P500 ETF(SPY)はネット・ベースでショートになっていることが殆どです。これはどうしてか? というとヘッジファンドは個別株のロング・ポジションをヘッジする目的でSPYをショートしているからです。

ヘッジファンドは、個別株のロング・ポジションをヘッジする目的でSPYをショートする

ヘッジファンドは、ある特定のセクターに悪材料がありそうな場合、セクターETFをショートすることで、自分のポートフォリオの中にある一部のセクターのダウンサイド・リスクをヘッジすることもします。

一例として去年、バイオテクノロジー企業の薬価吊り上げが政治の争点化した際、アイシェアーズ・ナスダック・バイオテクノロジーETF(IBB)を空売りすることで咄嗟(とっさ)のヘッジとした投資家が多かったです。

個人投資家がポートフォリオ・ヘッジのためにETFを利用する場合、マーケットが下がった時に価格が上昇する、いわゆるベア型のETFを購入するという方法もあります。

細かい議論になりますが、個別株をショートする際は、借株が出来るかどうかを先ず確認したうえで、その株をショートすることになります。

もし借株市場がタイト、すなわち品薄な場合、借株するコスト(日歩)がとても高くなる場合もあります。

これに対してETFなら品薄を心配する必要はありません。

預け先の変更の際のETF利用

機関投資家のETFの利用方法のひとつとして、預け先を鞍替えする際、ETFを利用するという方法があります。これは具体例で示した方がわかりやすいでしょう。

2014年に「債券の王様」というあだ名を持つ名物ファンドマネージャー、ビル・グロスが突然、ピムコという運用会社から退社しました。ビル・グロスが運用を担当していた「ピムコ・トータル・リターン・ファンド」からは多くの資金が流出しました。

これは「私はピムコという運用会社が好きで自分のお金を預けていたのではなく、あくまでもビル・グロスに運用して欲しかったから、トータル・リターン・ファンドを購入したのだ!」というファンが多かったからです。

その後、ビル・グロスはジャナスという投信会社へ転職し、新しいファンドを立ち上げました。

しかしピムコを辞めてから、ジャナスで新ファンドを始めるまで、準備期間が必要でした。そこでビル・グロスのファンはピムコのファンドを解約した後、次の新ファンドが立ち上がるまでの間、ETFを買ってお茶を濁したというわけです。

具体的に買われたETFは、アイシェアーズ・コアUSアグリゲート・ボンドETF(AGG)、バンガード・トータル・ボンド・マーケットETF(BND)などです。これらのETFにはビル・グロスが辞めた直後の数週間に7.9兆円の流入がありました。

トレーディングに適したETFとは?

次に実際にトレーディングに適したETFとは、どの銘柄であるかを紹介します。

一般にトレーディングに適したETFというと、ポピュラーなETFということになると思います。

そういう単純な考え方でも十分だと思いますが、厳密に言えば、時価総額の大きい(=純資産の大きい)ETFと、出来高の大きいETFは、かならずしも一致しません。

これはどうしてかというと、大手の一角のバンガード・グループのように、会社のモットーとして、長期投資を奨励し、トレーディングを嫌うところもあるからです。

総じて言えばバンガードのETFは、時価総額は大きいけれど、出来高はそれほど多くありません。

皆さんがトレーディングの目的でETFを売買するなら、日頃から出来高が多い銘柄を中心に攻めるべきです。

トレーディングの目的でETFを売買するなら、日頃から出来高の多い銘柄を中心に!

そのような活発に取引される銘柄は、Bid/Askのスプレッドも小さいですし、肝心な瞬間に約定が遅れるリスクも比較的小さいです。

活発に取引されているETFはBid/Askのスプレッドが小さく、約定が遅れるリスクも小さい

下は米国で最も活発にトレードされている10銘柄のETFです。

コード 銘柄 平均出来高(百万株)
SPY SPDR S&P500 ETF Trust 22,909
IWM iShares Russell 2000 ETF 3,700
QQQ Powershares QQQ Trust Series 2,709
EEM iShares MSCI Emerging Market 1,792
EFA iShares MSCI EAFE ETF 1,210
TLT iShares 20+ Years Treasury BO 1,184
FXI iShares China Large-cap ETF 925
DIA SPDR DJIA Trust 839
XLE Energy Select Sector SPDR 826
XLF Financial Select Sector SPDR 805

(出典:ブルームバーグ、エリック・バルチューナス)

BUY&HOLDに適したETFとは?

基本、レバレッジ型ETF以外のETFは、全てBUY&HOLDに適しています。その中でもとりわけ長期保有に適したETFはバンガード・グループの出しているETFです。

バンガードのETFなら、どれを買っても長期保有OKです。

その理由は、同社のそもそもの設立理念が「インデックス投資でBUY&HOLDするのがベストだ」という信念にあるからです。従って、同社のETFは、全て費用比率(エクスペンス・レシオ)が極限まで低くなるように設計されています。