第1章 なぜETFは大ヒット商品になったのか?

新しく、賢い資産運用が必要な時代に

マイナス金利時代の到来で、銀行にお金を預けておいても資産は殆ど増えません。そこで預金以外の運用を考える必要が出てきています。

普通、我々が思いつく運用の仕方といえば、投資信託、個別株への投資、外貨預金、債券などになると思います。

しかし投資信託は証券や銀行のセールスマンから購入するとべらぼうな販売手数料を取られます。アクティブ運用の投資信託の多くは株価指数にすら勝てないことは広く知られています。

かといって個別株への投資は銘柄を良く知らなければ不安ですし、業績の悪化による株価の急落など、個別株特有のリスクがあります。

外貨預金の手数料は意外に高いですし、その割に金利には魅力がありません。

かといって債券のリターンも知れています。

つまり我々は新しい資産運用先を必要としているのです。

ETF(イー・ティー・エフ)は、比較的歴史の浅い金融商品です。しかしそれがロー・コストで使い勝手が良く、堅牢な設計になっていることは既に証明されています。

ETFは銘柄も豊富ですので自分にピッタリ合った商品を選ぶことができます。

このようにETFは優れもの商品であるにもかかわらず投資家への啓蒙(けいもう)不足で、その良さが理解されていません。

そこでETFというものをこれから紹介してゆきたいと思います。

1分で理解するETF

ETFはエクスチェンジ・トレーデッド・ファンドの略です。エクスチェンジとは取引所を指します。ファンドは投資信託を指します。つまり「取引所でトレードされる投信」なのです。日本語では上場型投信と呼ばれています。

ETFは株のように取引所でトレードされる投信である

これに対して投資信託は銀行・証券のような金融機関から購入するか、直接投信会社から購入するカタチになります。

ETFは人気商品

ETFは、たいへん人気があります。下は米国の投資会社協会(ICI)が公表しているETFの純資産残高です。2014年末の時点でETFの純資産残高は1.97兆ドル(約244兆円)でした。

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米国で最初のETFが認可されたのは1993年のことですから、わずか20年余りで急成長したことがわかります。

ETFは、とても人気がある

ETFの日本での普及は、ハッキリ言ってまだまだです。これはETFそのものに問題があるとかETFの会社が悪いということではなくて、むしろ日本の証券会社やフィナンシャル・アドバイザーなどの金融商品に関するアドバイスをする立場の人々の理解不足、努力不足に因るところが大きいです。

実際、証券や銀行の営業担当者からすれば、個人投資家に知恵がつきすぎて、従来型の投資信託が売れなくなり、ETFの方に資金が流れると高い手数料が取れなくなるので、まことに不都合なことになります。

日本でETFの普及が遅れているのは金融機関がこの優れモノ商品を紹介することを意図的に避けているから

だから我々は金融機関の営業担当者に教えてもらうのを待つだけではダメで、自分でETFについて学ぶ必要があるのです。

なぜETFは大ヒット商品になったのか?

それではなぜETFは大ヒット商品になったのでしょうか? その理由を列挙すると、下のようになります:

  1. コストが安い
  2. サクサク売買できる
  3. 透明性
  4. 分散を得やすい
  5. アセット・アロケーションがしやすい

これらの点について、順番に見て行きます。

コストが安い

いま存在するETFすべてを時価総額で加重平均し、平均費用比率を出すと、約0.30%になります。これは同様に純資産の大きさで加重平均したアクティブ型投資信託の平均費用比率の0.66%に比べると、半分以下です。つまりETFは、まずコストが安い! ということです。

まずETFは圧倒的にコストが安い!

しかも人気の高いETFは、一般に費用比率(エクスペンス・レシオ)がものすごく低いという傾向があります。たとえば:

  • SPDR S&P500 ETF Trust(SPY) 0.09%
  • アイシェアーズ・コアS&P500 ETF(IVV)0.07%
  • アイシェアーズMSCI EAFE ETF(EFA)0.33%
  • バンガード・トータル・ストック・マーケットETF (VTI)0.05%
  • バンガードFTSEエマージング・マーケットETF(VWO)0.15%

といった具合です。S&P500とはアメリカを代表する株価指数で、時価総額の大きい企業を中心に上から500銘柄を網羅しています。これを買うことで、米国株式市場をまるごと買ったのとほぼ同じ投資効果を得ることが出来ます。上のETFの中ではSPYとIVVがS&P500指数に連動しています。

EAFEとは米国とカナダ以外の先進国を指します。だから例えば上述のSPYとEFAと組み合わせても、ポートフォリオがだぶらないという補完性があります。

VTIはアメリカの株式市場全体に投資できるETFで、米国市場の99.5%をカバーできます。言い換えればS&P500指数よりさらに幅広いということです。

VWOは世界のエマージング・マーケットに投資できるETFです。

サクサク売買できる

ETFが機関投資家に人気な2つ目の理由は、サクサク売買できる点にあります。ポピュラーなETFは日々の出来高が大きいだけでなく、BidとAskの間の乖離(かいり)も、殆ど無いに等しいです。これは自分が思った通りの値段で、即座にポジションがたてられることを意味します。

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トレーダーにとっては、サクサク売買できることはそのトレードの勝ち負けを左右しかねない大事な問題です。その点、ポピュラーなETFは合格です。

ポピュラーなETFは、サクサクと気持ちよくトレードできる

ETFはトレードにも適している

ETFは極めて活発にトレードされている点でも大いに注目すべきです。米国では毎日売買代金にして約7.8兆円ものETFが売り買いされているのです。これは米国の全ての株式市場における1日当たりの売買代金約27%に相当します。

ETFは、驚くほど活発に売り買いされている

透明性

米国の投資信託の場合、ファンドの運用報告の義務は四半期ベースであり、しかも四半期でのパフォーマンスを〆てから60日以内に報告書を受益者へ送付すれば良いことになっています。

すると投資家が自分の持っているファンドの中身を正確に知ろうとすると、まるまる2か月もの遅延が生じるわけです。

これに対してETFは、毎日、ポートフォリオの中身が引け後に公表されます。このため自分がいま何に投資しているのか? ということがきちんとわかり、その分、安心感があります。

ETFは基本、毎日、ポートフォリオの中身を公表している

但しバンガードだけは15日遅れでポートフォリオの内容を公表しています。

分散を得やすい

ETFはそれをひとつ買うだけで分散投資が出来ます。このことは個別株が悪い決算を出す、あるいは倒産する、などのニュースから、ある程度、自分の投資資産を守ることができることを意味します。

みなさんの中には(投資には興味があるけれど、とても個別株のことを勉強するだけの時間がない)と感じている方も多いでしょう。そのような場合、ETFは細かい決算や個別株リスクを気にしなくて良いのでありがたいです。

ETFなら個別株のリスクを余り気にしなくて良い

アセット・アロケーションがしやすい

最後のポイントとしてETFはアセット・アロケーションがしやすいという利点があります。

アセット・アロケーションとはいろいろな証券を組み合わせることでリスクやリターンを自分のおあつらえ向きに調整する行為を指します。

先進国と新興国のETFを組み合わせる、株とコモディティのETFを組み合わせる、さらに債券のETFを組み合わせる……などの方法により、自分の好きなアセット・アロケーションをたちどころに実現することが出来るのです。

ETFはアセット・アロケーションがしやすい

ETFは未だ伸び盛り

このようにETFは既に巨大なマーケットに成長しました。しかしそれは今後の「伸びしろ」が無くなってしまったということではありません。

いま機関投資家のETF保有比率を見ると、米国の年金の総資産額は619兆円ですが、その中に占めるETFの金額は僅か3.4兆円にすぎません。これは比率にして0.55%です。また米国のヘッジファンドの総資産額は338兆円ですが、その中に占めるETFの金額は3.8兆円です。これは比率にして1.13%です。

歴史的に米国のヘッジファンドは相場が高くなりそうなとき、てっとり早く株式の比率を引き上げるやり方としてとりあえずSPDR S&P500 Trust(ティッカーシンボル:SPY)を購入する……という使い方をしてきました。

いまでもETFの使い道はその程度だと考えている機関投資家も多いです。

しかしETF自体がどんどん進化していることに加えてETFの使いこなし方も最近はどんどん洗練され、高度化してきています。この連載でも後でそのようなトレード・ストラテジーに触れてゆきたいと思っています。

機関投資家に加えてフィナンシャル・アドバイザー(FA)も最近はETFのメリットに開眼しています。

ETFの成長は、まだまだこれからだ