
7/29、日銀の政策決定会合があり、日銀が金融緩和政策を更に追加で行う事が発表されました。
今回の金融緩和政策の要点は簡単に言うと以下の3つ。
- ETFを今よりいっぱい買うよ★ 倍増
- 海外展開する企業に安い金利でドル貸すよ★ 倍増
- 日銀が銀行にドルを貸すために担保となる国債を貸す制度をつくるよ★←新設(new!)
通常、日銀が金融緩和を行うと市場により多くの円が供給されることになるため円の価値が相対的に下がり円安になるのがセオリーなのですが、今回は「もしかしたら(マイナス金利をもっと下げるなどの)大掛かりな金融緩和があるかも・・・?」という事前の憶測でもともと円安方向にその期待を織り込んでいたため、結果的に憶測よりも規模の小さい金融緩和政策となっていたことから為替は円高に振れるという、セオリーと逆の結果になっています。
そもそも、日銀ってなんでETFを購入しているの?
今回、日銀はETFの購入を倍増させることを発表しました。
日銀が買い入れるETFは日経平均連動型、TOPIX連動型、JPX日経インデックス400連動型など、対象が決まっています。リーマンショックのあった2008年ごろから日銀は継続的にETFを購入しているので、日銀によるETFの大量買い入れのニュースを耳にした事がある方もいるかも知れません。
この、日銀によるETFの購入は一体何のためか、ご存知でしょうか。
日銀が資産を運用するため?小額で分散投資するため?
答えは簡単。
日本の株価を買い支えるためです。
自国の通貨や市場を守るため、その国の中央銀行は様々な方法で市場に介入をします。
為替市場における中央銀行による介入であれば、アベノミクスの時にかなりの額で介入をし、ニュース等でも騒がれていたのでイメージがしやすいかもしれませんね。
日銀が介入するのは為替市場だけではありません。株式市場も、様々な基準から判断して「下がりすぎている」場合には介入をします。日銀がETFの買い入れを始めたのはリーマンショックで日経平均株価が1万円を遥かに下回っていた頃から。
過去にない金融危機で日経平均株価は1980年代ぶりに7,000円を割ってしまうかもしれない、というところまで低迷していました。
東証の出来高も細り、世界経済も不透明で、このままでは本当に日本の株式市場がどうなってしまうか分からない、なんとかしなければ!と一刻を争う状況だったのですが、日銀はルール上個別株を市場から購入することが出来ない事になっています。
日経平均株価との連動性が極めて高い日経平均先物も、間接的に介入し相場を買い支える事は出来るのですが、あいにくデリバティブに分類されるこの先物も、日銀は直接買い入れることができません。
そこで、大活躍したのがこのETFです。
ETF(上場投資信託)は買い入れができる
ETFはご存知の通りマーケットで取引できる上場投資信託。日銀はこのETFと、上場不動産投資信託REITは購入することができます。
1321(日経225連動上場投資信託)や1306(TOPIX連動型上場投資信託)といった、現物株を原資産として保有しているこれらの銘柄を購入することで間接的に日本のマーケットを買い支え、当時の日本の株価指数は一層の下落を回避しました。(ちなみに、先日のイギリスのEU離脱投票で日経平均が暴落した日も日銀は350億円分のETFの購入によりマーケットを買い支えています。)
日銀はすでにトータル4兆円以上分ものETFの買い入れを行っており、このままでは日経平均株価やTOPIX指数に組み込まれている比率が大きい銘柄の実質株主になってしまうのでは?という心配が出ていたり。(実際の持ち主はETFを設定しているプロバイダーなのであくまで間接的に影響力のない大株主になるだけです)
何でETFを買うと間接的に日本のマーケットを買い支えられるの?
ETFはExchange Traded Fund(上場投資信託)の略で、証券取引所に上場している投資信託です。
元々は、色々な株に投資がしたい!と思った時に全てを自分のお金で購入すると資金が莫大になってしまうため、あらかじめ色々な銘柄を組み合わせたものを小分けにすることで、小額でもいろいろな銘柄に投資が出来るようにと誕生した商品。
なので、日経225連動ETFは実際に日経225に組み込まれている銘柄を同じ割合で保有し、それを小分けにして購入できるようにしている仕組みです。
日銀は別に小分けにしてもらわなくても色々な銘柄に直接投資できるだけの資金はありますが、ルール上直接株を購入できないので代わりにこのETFを購入し、間接的にそのETFに組み入れられている企業の株価を購入することで株価を下支えているという訳です。
日銀が保有できるETFって?
日銀が当初ETFを購入し始めた時は日本を代表するTOPIXや日経225といった代表的な指数に連動するETFが中心でしたが、ETFを通じて国の代表的な銘柄の買い支えをして株価を維持するだけでなく、ETFを通じてそれらの企業の株を購入することで「企業支援ができる」という考えから、JPX日経インデックス400(2014年に算出が始まった、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される指数)や、iSTOXX MUTB Japan 積極投資企業200インデックス(2016年に算出が始まった設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業で構成される指数)などに連動するETFを買い入れています。
具体的にどの銘柄、ということは公表されていませんが、これらの銘柄に連動するETFは元々そう種類が多くないので、それぞれの中で最も流動性が高いもの選べばまず間違いないと思います。(※ただし、これらの指数に連動しているETFでも、レバレッジ銘柄やインバースのものは含まれません)
日銀による企業支援の手段として利用されているETF。買い入れの勢いはしばらく続くようなので、今後はさらに、女性を積極的に採用している企業、環境への取り組みを積極的に行っている企業、子育て支援をしている企業で構成される指数を設定するなどして、より多くの企業を支援する手段となっていくかも知れませんね。