
日銀が2016年1月29日の金融政策決定会合で、マイナス金利導入を決定しました。そして、2月9日には長期金利の指標である10年国債の利回りがマイナス0.035%と史上初めてマイナスになりました。日銀のマイナス金利導入後、金融市場は揺れ、世界の債券市場が大きく動いています。分散投資として債券ETFを考える絶好の機会が到来しています。
■金利が下がると債券価格は上がる? マイナス金利とは?
金利が下がるということは短期の資金調達コストが下がりますので、運用の利回りが低下しても利ざやが確保できます。たとえば、短期資金を長期の国債で運用する場合、調達コストが下がれば運用する債券を今までより高い値段で買い付けても同じ利幅が確保できます。そのため、金利が下がると債券が買われ債券価格が上昇します。
現在、日銀の当座預金には約230兆円の残高があります。2015年の平均残高相当額である約210兆円には、従来通りに0.1%の金利が付きます。マイナスになるのは当座預金のうち、超過部分の10~30兆円についてのみです。銀行へのマイナスのインパクトを出来るだけ減らしながら、当座資金に待機していた資金が市中に出回ること目指しています。
マイナス金利の導入意図は、日銀の「金融市場の維持のためにはなんでもやる」といった市場へのコミットメントと、「これ以上の円高は望んでいない」という強い意思表示だったのでしょう。個人預金のレベルにまで、マイナス金利が影響してくる可能性は今のところ少ないと予想されています。
■世界の金融政策の動向で債券価格は変動する
世界の金融政策はどうなのでしょう。ユーロ圏では、日本よりも1年半早い2014年6月にマイナス金利が導入されました。スイス、デンマーク、スウェーデンでも導入しています。
現在、ドイツ銀を筆頭に、多くの欧州の銀行は収益環境悪化に苦しんでいます。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、12月に追加金融緩和を打ち出しました。3月10日のECB理事会でも追加緩和に動くとみられています。
米国はリーマンショック後のゼロ金利、量的緩和策の導入から、景気は堅調です。米連邦準備制度理事会(FRB)は、2015年12月にゼロ金利を解除し、9年ぶりの利上げを行いました。FRBとしては、通常時の金利に戻すために年内にあと何度か利上げしたい意向ですが、世界的な金融市場混乱もあって先行きは不透明になっています。
中国は2月29日、預金準備金率の引き下げを発表しました。中国発の世界景気後退懸念が広がっており、中国株が大きく下げていることへの対策です。2015年2月以降の緩和局面で5回目、2015年11月以来の金融緩和となっています。
■分散投資として債券投資は理想的
分散投資は、運用資金が大きく損失するのを防ぐために行います。したがって、株式投資がメインの投資先だとした場合、株と同じ動きをするアセットでは分散投資の意味がありません。金利が上がると、債券は下がり、株は上がると言った理論的には逆相関がありますので、株式と債券を組み合わせたポートフォリオは分散投資として最適だと見られています。特に、株式に比べ値動きのブレが小さく、比較的安定した投資対象といえる債券はポートフォリオに組入れることで全体としてのリターンの変動幅を抑え、大きな損失を防ぐ効果が期待されます。
債券には、大きく分けると国が発行する国債と、企業が発行する社債があります。2016年1月末時点で、日本国債は0.3%、先進国の国債の平均利回りは1.1%でした。一方で社債は、為替リスクがあるものの、米国ハイイールド債は9.3%、アジアハイイールド債は9.9%と高いものがまだまだ存在しています。
新興国の国債も、期待成長率が高いため利回りが高くなっていますが、その分格付けは先進国の国債に比べて低くリスクは高くなっています。
■債券投資には低コストの債券ETFが圧倒的に有利
債券投資をする場合、個人で日本の国債や社債、海外の国債や社債を実際に買うことは現実的ではありません。投信で買うことが適しているでしょう。上場債券ETFを利用すれば、株と一緒なので売り買いしやすく、小口でも投資が可能、流動性にも問題がなく、低コストでの運用が可能です。
債券ETFを国際分散投資する場合、利回りだけでなく、世界の景気、金融情勢を判断しながら、格付けなどのリスクも判断して分散投資をする必要があります。分散投資に適した上場海外債券ETFの代表的なものを証券コードとともにリストアップしますのでご参照ください。
1349 ABF汎アジア債券インデックスファンド
1677 上場インデックスファンド海外債券
1566 上場インデックスファンド新興国債券
1361 iシェアーズ 米国ハイイールド債券ETF
1362 iシェアーズ 新興国債券ETF
1363 iシェアーズ 米国債ETF
■ 世界の金融政策と債券ETFの見通し
2016年3月10日のECB理事会、14日からの日銀政策決定会合、15日からのFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)など、重要な金融政策会合が続きます。ECBによる追加緩和観測で金利低下圧力が掛かりやすいことから、世界的に長期金利は一段の低下を予想する向きが多くなっています。
日銀のマイナス金利導入で、イールドカーブ全体の押し下げが鮮明になりました。超長期の40年債の利回りでさえ1%割れとなりました。1%を超える債券が日本の市場から消えたことで、外債や株式などへのシフトがようやく進むとの見方がでてきています。
米国の利上げによる流動性の懸念から、一時売られていたアジアなど新興国の債券の一角や原油安で売られていた米国のエネルギー関連会社のハイイールド債などのリスクの高い債券に資金が貫流し始めたようです。今後も、主要国の金融政策と、債券ETFへの資金フローと値動きには一段の注目が必要でしょう。