注目の確定拠出年金 メリットだけではなくデメリットの理解も

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(写真=PIXTA)

 

 

確定拠出年金が日本に導入されてから、早15年が経過しようとしています。2016年3月末には、企業型確定拠出年金の加入者が約548万2,000人 とあわせて約574万人近くの方が加入しており、いまや公的年金の上乗せ年金として欠かせない存在となってきました。

 

また、法改正によりこれまでの加入対象者とは別に主婦や公務員なども2017年から加入ができるようになります。そのため、今後ますます加入者が増え注目を浴びることになるでしょう。

 

メリットは数多くのレポート等で報じられているので簡単な解説にとどめ、今回は確定拠出年金に加入を検討する際に注意しておきたい、デメリットに焦点をあてて解説をします。

 

■確定拠出年金は掛金が確定している

 

確定拠出年金とは、国民年金や厚生年金といった公的年金を補完する私的年金の1つです。現役時代に拠出する掛金は毎月いくらというように確定しており、その掛金をもとに株式や投資信託などで運用を行います。確定拠出年金には「企業型」と「個人型」の2種類があります。このうち、税メリットを強く感じることができるのは「個人型」です。今回の制度改正で、誰でも利用できるようになったのは「個人型」のことです。

 

確定拠出年金は毎月の掛金が確定しており、運用結果によってもらえる年金が異なるという特徴を持ちますが、税制メリットについて簡単に述べておきましょう。メリットは大きく3つあります。

 

1点目は所得控除です。掛け金が全額、所得控除されるということです。「個人型」確定拠出年金の場合、月額の上限は2万3,000円までとなっております(27万6,000円)。掛け金が多いほど、所得が高いほど、節税額は変わります。課税所得500万円の会社員(税率は所得税20%・住民税10%の計30%/妻・子1人)が、掛け金の年間上限である27万6,000円を拠出すると、節税額は年間8万2,800円、30年では約248万円にもなります。

 

2点目は、運用期間中の売却益や分配金・利息が非課税になるという点です。

 

3点目は、年金・一時金の受取時点にあります。公的年金等控除の対象となり、また一時金受取は退職所得控除の対象となり出口でも税効果が期待されます。

 

このように、確定拠出年金には、入り口・運用中・出口のそれぞれで税制メリットがあります。

 

■確定拠出年金の注意点(デメリット)

 

ただし、メリットばかりではありません。さまざまなデメリットが存在します。

 

まず1つ目に、「途中で引き出すことができない」ことです。確定拠出年金制度はこれまで中途退職時などに脱退一時金を受け取ることができるケースがあり、途中で引き出しが一部可能といった点がありましたが、これが改正によりほぼ全員の方が60歳からの受け取りとなるため、それまでは引き出しができないといえます。長期的な資金として捉え引き出したいと思わないように毎月の資金繰りは検討しなければなりません。

 

2つ目に、「投資対象が限られている」点です。企業によっては20個や30個といった金融商品から投資対象を選択することができるケースもありつつ、投資対象が3~5個など少ない中から選択するというケースもあり、それ以外の金融商品には投資ができない仕組みとなっています。投資対象が限られていることから、その中での運用に限られるため、投資経験者からしてみれば面白みに欠けるともいえます。なお、改正によりさらに金融商品の選択肢に規制が入る見込みであり、投資対象が減る恐れもあります。

 

3つ目に、「自分で運用を行わなければならない」ことです。運用経験者であれば問題はないといえるでしょう。しかしながら、まったくの運用未経験者が確定拠出年金により運用を行わなければならないといわれても、実際に理解して運用ができるかといえば疑わしい面があります。

 

■デメリットはメリットの裏返し

 

こうした点からいえることは、いずれもデメリットに見えるものの、メリットともいえる点です。途中で引き出しができないということは、どっしり構えて老後の資金確保を行うことができます。簡単に引き出せるようでは他の目的に資金を使う恐れがあり、そういうことをしてしまいそうな方ほど強制的に運用を行った方がよいといえます。

 

また、投資対象が限られているからこそシンプルでわかりやすいという面があります。投資対象が拡大されると何に投資してよいかわからなくなることでしょう。自分で運用をしなければならない点を考慮すれば、シンプルでわかりやすい金融商品から選択できる方がメリットともいえます。

 

何はともあれ、確定拠出年金の運用では、運用知識が求められます。一か八かの投資では老後の資金は確保できません。確定拠出年金をきっかけに資産運用について学び始めてはいかがでしょうか。