
■海外ETFとは海外市場に投資できる投資信託
ETFとは、株式と同様に証券取引所に上場されている投資信託のことで、海外ETFとは国内ではなく外国の証券取引所に上場している投資信託のことです。紛らわしいですが、国内で上場されている海外の株価指数を扱ったETFは海外ETFではありません。
海外ETFに投資するには、外国株投資に関する口座を証券会社で開設する必要があります。また、取引通貨も円ではなく、米ドルなど外国通貨となるのが一般的です。東京証券取引所や大阪取引所に上場されているETFはどの証券会社でも売買できますが、海外ETFについては取り扱いがことなるため注意が必要です。
国内で購入できる海外ETFは主に「米国ETF」と「中国ETF」となります。米国ETFとは米国そのものに投資するという意味ではなく「アメリカの証券取引所に上場している投資信託」のことで、アメリカ以外の国の投資信託でも、アメリカの証券取引所に上場していれば投資できます。米国ETFはニューヨーク証券取引所、中国ETFは香港証券取引所が主な上場先となります。
■海外ETFならアメリカ、新興国などどこへでも投資できる
海外ETFを利用する最大のメリットは、オーダーメイドでポートフォリオを構築できることです。リスク許容度や期待リターンは投資家によって異なりますが、株式、債券、不動産、商品といった幅広いアセットクラスに加え、異なる国や通貨にも分散投資することができるので、自分にあった最適なポートフォリオを見つけられます。日本にいながら、アメリカやヨーロッパ、中国、インドなど全世界のほぼすべてのアセットクラスが投資の対象となります。
海外ETFは海外の取引所に上場しているため、取引時間内であればいつでも自由に売買ができます。また、上場しているので常に市場価値が確認でき、取引価格を把握することも容易です。一般的に、投資信託に比べて信託報酬が低く設定されており、その分取引コストも安くなります。
■投資先の情報はしっかりとチェック
海外ETFは世界中のあらゆる国・地域が投資対象となるので、「カントリーリスク」は避けられません。カントリーリスクとは、投資した国・地域の政治や経済、社会情勢などが不安定となり、投資したETFの価値が予想外に下がってしまうことです。したがって、投資先の国・地域の情報はしっかりとチェックする必要があります。
また、海外への投資となるので、為替リスクも存在します。購入した海外ETFが値上がりしても、為替レートが円高になった場合には、損失が発生する可能性があります。この場合には、為替が円安になるまで現地通貨で保有することも選択肢となります。ただし、FX取引と同様に、為替が円安に振れれば利益となりますので、必ずしも不利益というわけではありません。
米国の取引所に上場されているETFの場合、取引時間は現地時間になるため、日米の時差により売買のタイミングをつかみづらいといったデメリットもあります。
■投資信託より安くて自由度が高い
外国の証券取引所に上場している投資信託である海外ETFは、一般の投資信託とはいくつかの点で異なります。最大の魅力は、信託報酬が一般の投資信託に比べるとかなり低く設定されていることです。一般の投資信託がリアルタイムでは取引ができないのに対し、海外の取引時間内であればリアルタイムで取引することができます。また、指値での注文も可能です。ただし、海外ETFの場合、分配金が再投資できないため複利効果はありません。
さらに、一般的にインデックスファンドは信託報酬が低く設定されていると言われますが、そのインデックスファンドと比較しても、海外ETFの信託報酬はかなり安く設定されています。ただし、投資信託と同様に、インデックスファンドも分配金が再投資されるため複利効果が期待できます。
最後に、海外ETFと株式とを比較した場合、海外ETFは株価指数と連動しているため、比較的値動きが分かりやすいという利点があります。一方、海外ETFの信託報酬は安いとはいえゼロではありません。株式には信託報酬そのものがありません。
■税申告などいくつかの注意点
海外ETFに投資する場合には、いくつかの注意点があります。まず、海外ETFは売買手数料が高く設定されている場合が多いので、コストは売買手数料も含めて計算しましょう。また、海外ETFの取引はほとんどがドルベースとなりますので、米ドルを準備した上で投資を始める必要があり、多くの場合為替手数料がかかります。最後に、米国ETFの場合ですと、分配金に対して米国と日本の両方で課税されます。申告により「外国税額控除」という形で戻ってきますが、確定申告が必要となります。
■アクティブ型ETFの登場でさらに資産運用の幅が広がる
海外、特に米国はETFの先進国であり、随時さまざまなインデックスが開発されています。次々と新しいETFが上場され、人気化したETFには何兆円もの資金が集まります。一方、人気がないETFは上場廃止となります。ETF業界は目に見える形で競争原理が働いているといえるでしょう。
ETFは資産運用業界で最も革新的なアイディアが生まれる分野となっており、ここ数年の注目を集めているのがアクティブ型ETFの普及です。従来、ETFはなんらかの形でインデックス(=ベンチマーク)に連動していましたが、最近ではベンチマークを上回るリターンを追求するアクティブ運用をETFの形で提供するアクティブ型ETFが増えており、投資家の選択肢が広がっています。今後、ETFの活用は単なるインデックスへの投資ではなく、より高い配当、より安定した値動き、より高いリターンといった方向で競争が激化する一方、こうした動きは投資家には歓迎されるでしょう。
ひとくちに「海外」といっても海外ETFが取り扱う範囲はまさに大海のごとく広いものです。特定の業種であれは、情報収集のポイントはその業界にしぼられますが、基準となるベンチマークがある国の主要企業を集めたインデックスだった場合には、その国の政治情勢なども考慮する必要があります。また、複数の国や全世界の主要な株価インデックスに連動している場合には、分析の対象はさらに広がることになります。最初は、興味のある国・地域、テーマに限定した株価指数をベンチマークとするETFがおすすめです。