
株価指数を開発するMSCI社が中国本土に上場している人民元建て株式(いわゆる中国A株)について、MSCI新興市場指数への組み入れを行わないことが発表されました。
仮に中国A株がMSCI社の指数に組み込まれた場合、10年間で年金基金や保険会社等から最大4000億ドル(約42兆円)もの資金が中国市場へ流入するという試算が出ていたことからも、その影響力の大きさが分かります。
中国A株は人民元建てとなっており、中国国内における投資家のための市場であることから、日本の投資家にとっては投資アクセスが難しい(と言うより出来ない)という印象が強いですが、今後MSCI社等の指数に採用されていくことで、今後、中国への投資がより身近になっていくかもしれません。
(注:一部ETFにおいてすでに中国A株を対象にしている銘柄も存在しています。)
■そもそもMSCIってなに?
なおMSCIはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルの略称です。
MSCI社が開発・提供するMSCI指数は世界各国の機関投資家から、国際的な投資パフォーマンスを測定するためのベンチマークとされています。
MSCI社の指数では先進国や新興国、また各地域や国別にまたがって産業別や業種別の指数があり、相互のパフォーマンスを容易に比較できるよう、数千の指数が算出されています。
そのデータベースは世界の株式市場において時価総額ベースで85%をカバーするとされています。
ちなみにMSCI指数においては、
「先進国(23ヶ国)」 …米国、日本、ドイツ、英国など
「新興国(23ヶ国)」 …中国、インド、ブラジル、ロシア、韓国など
「フロンティア市場(32ヶ国)」 …アルゼンチン、サウジアラビア、ベトナム、バングラデシュ、クロアチアなど
といった形で市場が分類されています。さらにその中でもアメリカ、欧州&中東、太平洋などの地域ごとに分類されています。
日本でも知名度が高いものとして「MSCIコクサイ指数」がありますが、これは先進国の大型株、中型株を対象にした「MSCI 世界指数」から日本を除いた指数になります。
すでに日本株を保有されているよと言う方であれば、「MSCIコクサイ指数」に投資するだけで一気にポートフォリオの世界分散を図ることもできます。
なお、「MSCIコクサイ指数」は日本以外の先進国を対象としていますので、日本においても最もメジャーな外国株投資のベンチマークとされています。
ちなみに、日本を含めた指数となると、「MSCI ACWI指数」が代表的なものとしてあげられます。これは「MSCI 世界指数」と「MSCI 新興市場指数」を足したものになります。
「MSCI ACWI指数」は日本も含めて、世界全体の株価の値動きを表す指数として生まれたものですので、これ一本で世界市場の成長に投資することができる指数となっています。
「MSCI ACWI指数」についてはこちらの記事でも解説がありますのでご覧ください。
https://www.invast.jp/blogs/etf-list-03/
■すでに新興市場指数での中国株の存在感は大きいものとなっている!
朝の経済ニュースでも速報が流れるなど、「MSCI 新興市場指数」への中国A株組み入れ見送りは注目ニュースとして配信されましたが、実は既に「MSCI 新興市場指数」において中国の存在感は相当大きなものとなっています。
出典:ブルームバーグ
「MSCI 新興市場指数」を構成するポートフォリオの上位銘柄を確認すると、
テンセント :中国
TSMC :台湾
サムスン電子 :韓国
アリババ :中国
中国移動(チャイナ・モバイル) :中国
ハンジャヤ・マンダラ・サンプルナ :インドネシア
ナスパーズ :南アフリカ
中国建設銀行 :中国
百度(バイドゥ) :中国
中国工商銀行 :中国
となっています。
中国企業が10社中6社、台湾を含めた中華圏の企業と考えると10社中7社となります。
レッドチップやH株と呼ばれる香港市場上場の優良銘柄が主となっていますが、将来的に中国本土の中国A株が採用されれば、対象銘柄が増えることになりますので、指数内の銘柄分散もさらに進んでいくかもしれません。
中国側も今年に入ってからMSCI指数への組み入れのため、主要証券取引所において取引停止に関するルールを発表したり、一部運用者に対し中国本土株市場からの資金の移動を認めるなど、採用に向けて従来の方針を変更するなど積極的な動きが見られます。
結果としてMSCI指数への組み入れは3年連続で見送りとなっていますが、中国側の市場開放が進むことで、「MSCI 世界指数」や「MSCI 新興市場指数」への採用は時間の問題かと思われます。
MSCI社は中国A株の組み入れについて、2017年にも再検討するという声明を発表しており、状況が改善すればそれよりも早い段階での導入の可能性を排除しないとしています。
なお、こうした構成銘柄の変化やニュースをさほど気にしなくとも、指数に連動するETFに投資しておけば、ETFは指数の変化に合わせて自動的にその構成銘柄を入替え・調整してくれます。保有者はコストや手間暇をかけることなく最新のトレンドに乗ることができますので、まさにETFは投資家目線に立った金融商品と言えます。