
■同一指数に複数のETF、どれがいいの?
日本銀行が「QQE(質的・量的金融緩和)」の一環として、ETF(上場投資信託)の購入を表明したこともあり、東京証券取引所の売買高ランキングでもETFは常時トップ10入りを果たしています。
そのETFの投資対象は、平均株価など投資の指標となる「ベンチマーク」と呼ばれる指数です。ベンチマークと価格が連動するように組成されています。ところで、「ひとつの指数にはひとつのETF」と思いがちですが、実はひとつの指数に数多くのETFが設定されているケースがよくあります。
特に、日経平均やTOPIX、上海株価指数、原油価格といったよく目にする指数には、必ず複数のETFが組成されています。たとえば、TOPIXを例にすると、ざっと次のように7種類ものETFが設定され、上場しています。
- ダイワ上場投信-トピックス(株式コード=1305、運用会社=大和証券投資信託委託、以下同)
- TOPIX連動型上場投資信託(1306、野村アセットマネジメント)
- 上場インデックスファンドTOPIX(1308、日興アセットマネジメント)
- MAXISトピックス上場投信(1348、三菱UFJ国際投信)
- DIAM ETF トピックス(1347、DIAMアセットマネジメント)
- iシェアーズTOPIX ETF(1475、ブラックロック・ジャパン)
ちなみに、日経平均株価では8種類、JPX日経インデックス400でも6種類あります。さらに、同じTOPIXでも、指数の2倍の値動きをする「TOPIXレバレッジ(2倍)」、TOPIXの動きの反対方向に動く「TOPIXインバース」「TOPIXダブルインバース(2倍、指数と反対に2倍動く)」といった商品も加えると、その数はさらに増えることになります。つまり、よく知られた指数であればあるほど、ETFの種類も多く組成されているのです。
■同一の指数連動でも、実は様々な選択肢があるETF
同じ指数に連動するETFであっても、なぜこんなにも多くの種類が組成、上場しているのでしょうか。そこにはいくつかの理由があります。
一つは、よく知られた指数には数多くの投資家が関心を示し、売買してくれるニーズがあるからです。近年、日本の株式市場はボラティリティ(変動幅)が非常に高く、世界中のどこかで何かがあると世界で最も敏感に反応する株式市場になっているのが現実です。
個別銘柄への投資は非常にボラティリティが高く、リスクも高くなっており、個別銘柄よりもリスクの少ない市場全体への投資法が普及してきたためと言って良いでしょう。
もう一つの理由は、個々のETFによって基準価額は必ずしも同じではないという現実があることです。同一の指数に連動するように組成されたETFであっても、分配金や信託報酬などが微妙に異なるために、ひとつひとつのETFが個別の動きをすると考えていいでしょう。簡単に言えば、効率よく儲かるETFと、それほど儲けが出ないETFがあるということです。
では、運用成績の良いETFとはどんなものなのでしょうか。ETFのどこを見て、その良し悪しを判断すればいいのでしょうか。コストの種類や注目すべきポイントを紹介しながら、運用成績の良くなるETFとは何かを紹介します。
- 価格
まずはETFの価格そのものをチェックすることが大切です。ベンチマークが株価指数であれば、平均株価が大きく上昇したのにETFは大して上昇しなかったり、平均株価が少し下落しただけなのにETFは大きく下落したりといった違いが分かるはずです。指数とETF価格の「騰落率」をチェックしてみると、分かりやすいかもしれません。
- 分配金
通常の投資信託と同様に、ETFにも分配金が支払われます。分配金によってETFの利回りなどもわかりますから、新規に購入するときには確認しておきたいものです。分配金が出ているおかげで、ベンチマークよりも高い価格になっているケースもあり、その場合は割高になっているかもしれません。ただし、分配金がきちんと出て割高になっているETFは下落しにくいのも事実です。複数のETFを比較してみるといいかもしれません。
- 純資産総額
純資産総額が高いETFの最大のメリットは、出来高が多く流動性が高いという点です。流動性が高ければ、いつでも好きな時に売買ができ、マーケットが暴落してしまうような非常事態であっても、すぐに対応できるという意味で安心できます。
- 信託報酬
ETFのほとんどは、年1%程度の「信託報酬(運用手数料)」しかかかりません。一般的な投資信託に比べて低いため、ETFの魅力の一つになっていますが、同じベンチマークと連動するETFであっても信託報酬が異なる場合があります。
- 売買単位
ETFは、株式市場で売買されているために「売買単位」が決まっています。売買単位とは10株、100株という具合に決められている、一度に売買できる単位のことです。売買単位が大きく、ETFの価格が高いと「値嵩株」となり、投資するのにある程度まとまった資金が必要になってしまいます。
ETFに直接かかるコストではありませんが、売買金額が大きいと、市場参加者にプロの機関投資家が多くなり、市場の価格形成にも影響が出るかもしれません。また、単位が大きいと証券会社に支払う売買手数料も高くなります。
- 運用会社
ETFの運用会社も注目しておきたいポイントです。国内の大手証券系列の運用会社、もしくは日本に進出している外資系運用会社が多くなりますが、運用の上手な会社、大して成績を上げていない会社の違いが少なからずあります。
これら以外にも、資金を管理する信託銀行の違いなどもありますし、ベンチマークが海外の指数の場合には、為替なども関わってくるため、コストなどにも変化が出てきます。
■ETFの値動きや出来高をチェック、類似のETFと比較してみよう
実際にETFを選んでみると、チェックすべき項目が多いことに気が付きます。連動するベンチマークとして何を選べばいいのかも、ETF選びでは極めて重要なことです。
これから株価が下落する可能性が低いときに、株価に連動するETFを購入するのはあまり賢い選択とはいえません。かといって、すでに底値を付けた可能性があると言われる原油価格や中国株も、今この時点で投資しようというのは、無謀だと言われるかもしれません。そういう意味では、どのベンチマークに連動するETFを選択すればいいのかが「最重要課題」ともいえます。
それ以外の部分では、やはり同じ指数に連動するETFをきちんと比較してみることが大切です。
たとえば、組成されて以後の値動きを、ベンチマークとともにチャート表示して比較してみるのもいいかもしれません。ETFのようなインデックス運用では、コスト面でそう大きな差は出ませんが、それぞれETF独自の運用方針などの違いもあります。コスト面にこだわって可能な限り効率的に運用できるETFを選択するのも一つの方法です。