投資初心者の投資信託選び5つのポイント

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(写真=PIXTA)

 EU離脱を決定した英国の影響で、世界中の株式市場が大きな影響を受けています。変動幅(ボラティリティ)の大きな金融相場を見て、「投資のチャンス」ではないかと考える人も少なくないはずです。

 

ただ、投資と言っても株式の個別銘柄に投資するのは不透明な世界情勢を考えると不安。

預金や債券ではマイナス金利で魅力は低い……。そう考えると、選択肢の多い「投資信託」に投資してみよう、と考える人も多いかもしれません。

 

とは言え、残念ながら投資家の多くは、投資信託への投資で失敗した経験を持っている人が多いのではないでしょうか。

リーマンショック直後には、保有する投資信託が円高で元本割れを起こした。そんな経験があるはずです。

それだけ、投資信託の選択は難しいと思っている人が多いはずです。

 

実際に、株式投資では圧倒的にネットでの売買が多いにもかかわらず、投資信託に限ってはネットでの注文はわずか5%。

95%が証券会社や銀行などの窓口での売買になっているそうです。

それだけ、投資信託の正しい選び方を知らない、分からない、投資家が多いと言って良いのかもしれません。

そこで、今回は初心者でも分かる「投資信託の選び方」について最低限知っていただきたい5つのポイントに絞ってご紹介していきます。

 

「分配金」よりも「トータルリターン」

投資信託への投資方法で大切なことは、投資の目的によっても異なりますが「長期間、安定運用」できることではないでしょうか。

ところが投資家の多くは、どんな投資信託が長期運用で、安定した運用益が出せる銘柄なのかを知りません。

 

どちらかと言えば「人気ランキング」で上位の投資信託を選んでしま人が多いのでないでしょうか。

あるいは、金融機関の窓口などで「キャンペーン中」という理由で選んでしまう人が多いようです。

あるいは、日経平均やTOPIXといった株式指数が上昇しているからと言って、それらの指数に連動する投資信託に投資してしまうケースが目立ちます。

 

では、どうすれば長期間に渡って、安定した収益が得られる投資信託を選ぶことができるのでしょうか。ポイントは次の5点です。

 

 

1. 「純資産残高」が少なすぎる投資信託には注意

投資信託は、株式市場と異なりすべての金融機関がすべての投資信託の銘柄を扱っているわけではありません。

そこで、どうしても投資信託の取扱数が多い金融機関で選択することが多くなりますが、その際大切なことは「純資産残高」の少なすぎる投資信託には注意したほうが良い、ということです。

 

具体的には、30億円未満の小さな投資信託は流動性に問題があり、たとえば株式に投資する株式投資信託では株価暴落時に、運用の途中で運用を中止してしまう「中途償還」などのリスクがあります。

 

ある程度、純資産残高が大きな投資信託で運用することが大切になってきます。

一つの基準として100億円以上の純資産があれば問題ないかもしれませんが、注意したいのは大手の証券会社などの場合、販売キャンペーンなどで全社的に販売して、一気に純資産総額を増やしてしまう投資信託があります。

 

そういった投資信託は、販売直後の総資産残高が大きく、その後少しずつ減少して行くパターンを取ります。

本来、投資信託というのは少ない金額でスタートし、その後徐々に実績(レコード)を積み上げて、純資産残高を増やしていくパターンを辿ります。

 

したがって、純資産残高が大きいからと言って安易に選ばずに、その経緯を確認しておくことが大切です。

販売時にいきなり大きな残高からスタートした投資信託は、運用が上手だったからではなく、販売戦略が成功した投資信託だと思ったほうが良いでしょう。

 

2. 投資目的に合わせて、投資信託の「投資対象」を選択する

投資信託と言っても、実はその「投資対象」は様々です。国内の株式や債券に投資するタイプから、海外の株式や債券に投資するもの。

さらには不動産に投資する「REIT(リート)」などがあります。

 

こうした投資対象の異なる投資信託をどうやって選択すればいいでしょうか。

ここが、投資信託を選ぶ際の難しさですが、いくつか方法があります。

まずは、その資金の使い道です。たとえば、子どもの教育費のようなリスクが取れない資産なのか、あるいは当面使い道のない資産なのか、その人によって大きく異なってきます。

 

たとえば、老後資金として貯めたいという投資家の場合、その投資家が30代なのか、40代なのか。

それとも50代なのか。年齢によってリスクを取れる範囲が大きく異なってきます。

 

30代であれば、失敗しても取り返せる期間が長いですから、ある程度リスクの高い商品を選択して、たとえば日本国内の株式や外国株式に投資する投資信託をいくつか分散して選択します。

逆に50代の場合には大きな失敗をした際に取り返しづらい年齢のため、国内の債券投資を行う投資信託をメインにして、そこに外国債券に投資した投資信託を少し加える……。

40代はその中間と考えるといった具合で投資対象を変えていきます。

 

投資の目的に応じてリスクやリターンを考えて、投資対象別に分散投資を行い、自分に適したポートフォリオを作る。

それが投資信託による運用の基本と言って良いでしょう。自分でやるのが難しいの場合は、投資家向けの「アドバイザリー・サービス」を実施している金融機関に相談してみるといいかもしれません。

 

3. 手数料の金額を確認する

投資信託の選択で大切なものに、各種の手数料があります。何となく見落としがちですが、日本の投資信託は、海外の投資信託と比較すると高い傾向にあります。

 

手数料の中でも、特にチェックしておきたいのが「販売手数料」と「信託報酬」です。

販売手数料は、銀行や証券会社など投資信託を販売している金融機関に支払う手数料で、高いところで3%超の手数料がかかります。

 

信託報酬は、運用手数料と言えばわかりやすいかもしれません。

投資信託を運用する「投資運用会社」や一部の販売会社に支払う手数料です。

たとえば、海外の株式市場に投資する投資信託では、年間3.5%を超える信託報酬がかかることもあります。

 

言い換えれば、購入時に販売手数料で3%、年間のランニングコストと言い換えられる信託報酬が3.5%かかる投資信託も存在するということです。

仮に10年間、その投資信託を保有した場合、信託報酬だけで3割以上も徴収されてしまう可能性があるということです。

運用パフォーマンスをコントロールすることはできませんが、入り口の手数料をコントロールすることはできます。

 

4. 分配金より「トータルリターン」で決める

日本の投資信託の大きな特徴ですが、分配金が多い投資信託が非常に多いということです。

分配金というのは、株式の配当や預金の金利と同じで、一定の期間ごとに支払われるものですが「毎月分配型」や「隔月分配型」といった具合に、毎月、隔月ごとに分配金が出る投資信託が非常に数多く販売されています。

 

本来、じっくりと運用して高い収益を上げるためには、分配金を支払う機会が少ないほうが複利の効果で「運用効率が高い」と言われています。

 

さらに、問題なのは分配金の原資がきちんと運用の成果なのかどうかです。毎月分配金を出している銘柄の多くは、運用成果から分配金を払っているのではなく、元本を切り崩しているタイプが多いといわれていいます。

 

もともと、その投資信託が儲かっているのかどうか、あるいは設定以降、きちんと収益を上げているのかを知るためにも、運用報告書や運用レポートを確認することをオススメします。その際に注意すべきは「トータルリターン」です。

 

トータルリターンというのは、投資信託が得た年間の利益や損失を示したもので、配当金や利息、投資した運用商品の価格変動分などを投資コスト(投資信託の購入金額)で割ったもので示されますが、このトータルリターンの過去の動きを見ることで、投資信託の本当の「実績」を見ることができます。
分配金の大きさはいわば「表面利回り」みたいなものなので、これだけを見て購入するのは避けたほうが良いでしょう。

 

運用報告書、運用会社のホームページ、あるいはモーニングスターなどの投資信託情報専用サイトなどで分かります。

 

5. 「標準偏差」で安定運用かどうかをチェックする

投資信託の運用で大切なことは、安定運用できるかどうかですが、どの投資信託が安定運用できるのかを知るのはなかなか難しいものです。

そんな時には「標準偏差」というデータをチェックしましょう。

 

設定してまだ間もない投資信託などには表示されていませんが、ある程度の月日が経過した投資信託であれば、運用報告書や投資信託の情報サイトを見れば掲載されているはずです。

 

標準偏差というのは、簡単に言えば変動幅を示唆している数字であり、たとえば設定来5%とか年10%という具合に表記される数字です。

たとえば標準偏差10%の投資信託は、プラス・マイナス10%の変動がおこる可能性があることを示しています。

 

したがって、使い道のないお金がハイリスク・ハイリターンでもいいという人は、標準偏差の高い投資信託を選択するといいかもしれません。

逆に、教育資金や住宅資金のように使い道が決まっている資金の場合は、標準偏差が5%以下の安定した運用が期待できる投資信託を目安に選ぶといった形で自分なりにリスクを決めて選択することが重要になります。

 

購入後も運用報告書などで常にチェックを

ざっと投資信託の選択法の基本を紹介しましたが、この他にも投資信託の運用法(テクニカル運用型、バランス型、インデックス型)、あるいはランキングなどによって選択する方法など、様々な選択方法があります。

目的に合わせて、償還日の日程に合わせて選択する方法もあります。

 

投資の初心者にとっては、難しい専門用語が多く、難しいと思うかもしれませんが、投資信託の運用で失敗する多くの原因は自分で分からないものを購入してしまうこと。

自分のマネーは、自分で選択して管理することが基本です。

 

その上で、トータルリターンや標準偏差など、重要な指標は購入後も定期的にチェックすることが大切です。

投資信託にもメンテナンス(管理)が大切なのです。こうした投資信託の注意点を理解して、成果の得られる「投資ライフ」を実現しましょう。