
最近はさまざまなインデックス(指数)のボラティリティーが高まっている(値動きが荒くなっている)こともあって、短期的な利ザヤを狙うトレードに駆使している人も少なくないようです。
そのような相場でフレキシブルに活用できるETF(指数連動型上場投資信託)が投資家から注目を集めています。
しかしながら、多くの投資家が実践しているのは、いくつかのETFを組み合わせて分散投資を行い、それぞれにおいて市場の平均値を着実に得るパッシブ(インデックス)運用でしょう。
買いタイミング 何回かに分けて分散するのが基本
このパッシブ運用においては、買い時や売り時といった投資のタイミングを見計らうことがタブー視されています。
誰もがとことん安く買ってとことん高く売りたいと思うものですが、相場がどこで大底を打って天井をつけるのかは、あらかじめ正確に読み解くことができないからです。
そこで、資金を一気に投入せず、何回かに分けて時期を分散するのが基本となっています。その典型が毎月コツコツと続けていく積立投資で、定額ずつ投じていくことで買付単価を平準化できる「ドルコスト平均法」の効果も期待できます。
売りタイミング 当初の資産配分が崩れてきたら手入れを
売り時(利益確定のタイミング)についても、いつ上げ相場がピークアウトするのかは神のみぞ知ることなので、自分の相場観で判断しないほうが賢明だとされています。
ただし、だからといって、まったく売らないわけでもありません。ETFでポートフォリオを構成したパッシブ運用において定期的に求められるのは、リバランスと呼ばれる作業です。
いわば、これはメンテナンス的な作業で、価格の変動に伴ってそれぞれのETFがポートフォリオにおいて占める割合(資産配分=アセットアロケーション)は、当初に定めたものとは異なってきています。
そこで、当初の比率に修正するために、含み益が出ているものについてはその一部を売って利益を確定し、含み損が出て割合が小さくなっているものを買い増すわけです。
こうした作業を半年ごとや1年ごとといったタイミングで繰り返しながら、ポートフォリオ全体が平均的なピッチで成長(利益拡大)を続けていくことを期待するのがパッシブ運用なのです。
損切りタイミング 長期保有≠損切りせず保有
このため、インデックス運用では損切り(ロスカット)も必要ないと説く人がいます。「相場には何度となく急落局面が訪れるものの、長期的には右肩上がりを描くものであるし、損切りの判断には自分なりの相場観が求められるから、パッシブ運用のポリシーから外れる」といった主張のようです。
確かに一理はある反面、「長期的には右肩上がりを描く」と過信しすぎるのは考えものでしょう。現に、30年前から日経平均株価に投資してきた人は、ほとんどロクに収益を得られていません。定期的なリバランスとともに必要に応じて求められてくるのは、リアロケーションという作業です。
当初にアセットアロケーションを定めた頃とマクロの経済環境などに大きな変化が生じていれば、しばらく割合を下げるべき投資対象も出てくるのが現実なのです。たとえば、30年前に日経平均株価に投資した人もその後に株価がいっこうに右肩上がりに転じず、「失われた20年」や「デフレスパイラル」などといった言葉が飛び交って日本経済に対する悲観論が蔓延した時期に、いったん日本株のウエートを下げるのが一考だったでしょう。実際、海外の機関投資家の多くはそれを実践していました。そういった彼らの動きが1つの指針になりますし、頑なに狭義のパッシブ運用に徹していると、思わぬ落とし穴にはまる可能性も念頭に置いたほうがいいでしょう。
せっかくETFという使い勝手に優れた金融商品を活用しているわけですから、しなやかな思考で運用に臨みたいものです。
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