
ETFは基本的に、日経平均株価やS&P500といったような指数に連動する上場投資信託で、原資産の構成銘柄と割合をそのまま保有することにより、市場の動向を研究したり、何が割高で何が割安か?といったようなバリュエーション、その時々の決算内容等によって銘柄の選定や入れ替えを行わず機械的に保有銘柄を決められて、ファンドマネージャーも不要な事から、低コストで商品を組成ができる優秀な分散投資のツールとして知られています。
しかし、近年ではその中身を工夫することで、原資産の2倍や3倍の動きをする「レバレッジ銘柄」や、原資産の動きの逆の動きをする「インバース銘柄」、為替のリスクをヘッジしてくれる「ヘッジ銘柄」などが誕生しています。
1.レバレッジ銘柄
これは、原資産が1上がった時に、レバレッジ2倍の銘柄であれば2上がり、3倍の銘柄であれば3上がる、逆に原資産が1下がれば同様に2または3下がるという仕組みになっています。
下のチャートは米国の代表指数S&P500と、その2倍の値動きをするETF、SSO(プロシェアーズウルトラS&P500)の値動きの比較です。相場の山はより高く、谷はより深くなっていますよね。
ETFは分散投資で個別銘柄のリスクが軽減できる半面値動きがマイルドになってしまうため相場の方向感に自信がある時は、元の指数よりもより大きな値動きをするレバレッジ銘柄を活用しましょう。
2.インバース銘柄
これは、原資産が1上がったら1下がるというような動きが逆になる設計になっているものです。
野村アセットが出しているNEXT FUNDの日経ダブルインバース(1357)は、新聞等で目にした事があるかも知れません。これは、レバレッジ銘柄とインバース銘柄の特徴の両方兼ね備えている銘柄で、「ダブルインバース」というだけあり、原資産が1上がれば2下がる、という仕組みです。(複利効果により2日め以降は値動きが異なる場合がります)
1321(日経225連動型上場投資信託)と1357(NEXT FUNDS日経平均ダブルインバースインデックス連動型上場投信)の値動きの比較がこちら。相場が下がりそうな時や、現物株を持っている場合の急な値動きのヘッジなどに良いかもしれません。
3.為替ヘッジ銘柄
海外の銘柄を原資産とするETFは、その値動きに為替の変動が織り込まれる仕組みになっています。
どういう事かと言うと、海外銘柄を対象にしてそれを保有しているという事は、仮にそのETFが日本に上場していて円で取引ができたとしても中身が海外銘柄なので、「両替」が発生しており、為替リスクが存在しています。
そしてその為替の変動は、ETFの値動きそのものに反映されるようになっているのです。それでは金融商品の値動きそのものと為替変動リスクの両方を取らなければならないのか・・・と購入が少し億劫になってしまいがちですが、そんな悩みを解決するのがこちらの為替ヘッジ銘柄。
中に為替の値動きをヘッジする仕組みを組み込んでいるので、為替リスクを取らず原資産の値動きだけを追う事が可能です。下記は、米国債のETFの値動きの比較です。もともと米国債は安定的な成長と値動きで世界で最も安全な金融資産と言われていますが、下記のように日本から投資する場合その為替のリスクにより値動きがおおきくなってしまっていました。ヘッジの仕組みを組みいれることでそれを解決できるという訳です。
これらの銘柄は、プロの投資家が使うハイリスク金融商品である先物やオプション、デリバティブ等を組み合わせ、プロがかなりの資金を投入する事でしか実現できなかった値動きやパフォーマンスを、小額からマーケットで購入できるETFに落とし込み、個人投資家でもその運用を可能にしていることから、とても画期的な発明だと言えます。
ただし、当然仕組みが複雑になればなるほどエクスペンスレシオと呼ばれるコスト(投資信託の信託報酬のようなもの)が割高になりますし、トリッキーな動きをするものも銘柄によっては存在します。
小額から気軽に挑戦できる、安全性の高い金融商品というイメージのあるETFではありますが、こういった仕組みが複雑なものについてはよくよく勉強してからトライすることをお勧めします。(もちろん、大多数は小額から気軽に挑戦できる安全性の高いものですのでご安心を)
DUST(Direxion デイリーゴールドマイナーズベア3倍)
どの程度エキサイティングか、というのをご理解いただくために、最後にもう一つ銘柄をご紹介します。
こちらは金の動きに-3倍のレバレッジをかけたDUST(Direxion デイリーゴールドマイナーズベア3倍)という銘柄です。Direxion(ディレクション)は、レバレッジ銘柄を専門に組成しているプロバイダーで様々な原資産に連動するレバレッジ銘柄やインバース銘柄を提供しているのですが、その中でも最も値動きが激しいものがこちらの銘柄です。
なんと、過去1年で最高値392.9ドルから、昨日の終値14.94ドルにまで下落しています。もう一度言います。約400ドルから約15ドルです。ざっくり1ドル100円として計算すれば、40,000円が1,500円です。考えただけでもひやりとしますよね。パーセンテージにすると96%のマイナス!!
安易に手を出すを大やけどしてしまうので、どうかご自身の責任で十分に注意してお願いします。