
「ハイリスクハイリターン」という言葉を、これまでに一度は聞いた事があると思います。ギャンブルのイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれないこの言葉ですが、そもそもどういう意味なのでしょうか?
ハイリスク‐ハイリターン【high risk high return】
損失の危険が大きいほど、投資家は高い収益を期待するという投資の一般原則。
―goo辞書
中国のことわざで「虎穴に入らずんば虎児を得ず」という言葉にも同じような意味があります。要はある程度のリスクを冒さないと、見返りを得る事は出来ないという意味です。
実際にこちらの記事でも取り上げたとおり、運用の原則としてはリスクが低いほど元本が減ったりマイナスが出たりする危険が少ない代わりにリターンが少なくなってしまうという構造になっています。
商品 | 安全性 | |
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ローリスクローリターン | 定期預金 個人向け国債 | 元本保証 |
ミドルリスクミドルリターン | 株 投資信託 ETF・REIT | 元本割れリスク |
ハイリスクハイリターン | FX 先物取引 | 元本以上のロスが出るリスク |
その代わり、普通預金や個人向け国債では年間で0.05%の金利がつくのがやっとですがFXや先物取引の場合1月で元手を倍にすることも(上手くいけば)不可能ではありません。
初心者が資産形成をする場合、リスクが高すぎる商品はおススメしませんが、かといってリスクを恐れるあまり元本保証にこだわっているとお金がほとんど増えないという状況になってしまうため、ミドルリスクミドルリターンの枠の中から自分に合った商品を選ぶ事が重要です。
この、ミドルリスクミドルリターンのグループの中には様々な種類の金融商品が存在していますが基本的にはグループ内でも原則は同じで、リスクが高い程期待されるリターンは高く、リスクが低いほど期待されるリターンは低くなります。
直近のETF人気は新興国に集中
昨今、イギリスのEU離脱、米国の大統領選など、先進国が様々な要因から停滞したり不安を抱いたりする投資家が多く、その分資金が新興国に集まっているようです。以下、モーニングスターより引用
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「アベノミクスは売り、エマージングは買い」――。そんな米投資家のスタンスを表すような動きが、7月の米ETF(上場投資信託)市場の資金フローで見られた。純資金流出入額ランキングで、日本株に投資する「iShares MSCI Japan」が全ETFのうち最下位となる約15億ドル(約1,600億円)の純資金流出を記録する一方、新興国株ETFの「iShares MSCI Emerging Markets」が全体で第2位の約40億ドルの純資金流入となったのだ。“新興国ブーム”の兆しが見られるのはETFだけではなく、米投信市場全体でも新興国ファンドへの資金回帰が目立っている。米モーニングスターカテゴリー「新興国株式」に属するファンドの純資金流入額は7月に約65億ドルと、2カ月連続の流入超過となり、2013年9月以来2年10カ月ぶりの高水準となった(図表1)。ちなみに、「新興国債券」ファンドについても約46億ドルの純資金流入と前月から8倍以上に急増しており、新興国への強気姿勢が見られる。
http://www.morningstar.co.jp/fund/analyst/2016/3q/MFA120160818.html
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確かに、インドやミャンマー等の勢いのある新興国のニュースは耳にした事がある方も多いはず。
新興国はそもそも外国人が直接投資をするのに様々なハードルがあり(通貨、言語、流動性など)、自分で銘柄を選ぼうにも情報も限られておりリスクが高いため、投資信託を用いての投資が一般的でした。
通常の投資信託では手数料や透明性、流動性の面でのデメリットがあったため、いつでも取引ができて透明性の高いETFは正にぴったり。現地の通貨がなくても、銘柄を選ばなくても、小額で新興国に投資ができるようになりました。しかもあらかじめ分散投資がされているので倒産などによるリスクも軽減できます。
同じ新興国なら流動性が高いローリスク銘柄を
同じ新興国に投資するETFの中にもリスクが高いもの、低いものがあります。投資の原則でいえばリスクが高いほど期待出来るリターンが多いはずなのですが、この新興国ETFの値動きを比較すると必ずしもそうではないようです。先ほどと同じ記事の中に興味深い比較があったのでご紹介します。こちらのグラフは新興国の株で構成された2つの指数のパフォーマンスを比較したものです。
青い方はMSCIエマージング・マーケットという新興国23カ国の時価総額85%、約900銘柄に分散投資する指数、もう片方の緑のものは新興国の指数からポテンシャルリスクを軽減するように設計されたスマートベータと呼ばれる指数で、期待リスクとリターン(ボラティリティと呼びます)が低くなるように設計されており、含まれる銘柄も3分の一以下しかありません。すると、意外や意外、本来であればハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンが原則の投資ですが、新興国に関してはローリスクのものの方が長期的に見ても高いパフォーマンスを出しているのです。
これは、他の新興国関連銘柄を見ても同じような結果が出ており、新興国関連の銘柄に共通する傾向だと言えそうです。新興国自体がもともと先進国に比べるとリスクが高くリターンが見込める市場だからこそ、その中で更にハイリスクなもの、となるとリスクによる危険性のブレ幅が大きくなりすぎてしまい結果的に低リスクのものの方がパフォーマンスが良くなっているという事かも知れません。
ETFには同じ投資対象でも様々な銘柄が存在しそれぞれパフォーマンスも異なるため、ぜひ色々比較した上で購入を検討して下さい。