
■歴史的な原油安は投資チャンスの到来
原油価格の代表的な指標であるWTI原油先物価格は1月、リーマンショック後の最安値であった1バレル=32.4ドルを下回り、26ドル台まで下落、2003年以来12年ぶりの安値となりました。原油価格は2014年7月まで100ドル以上で推移していたので、1年半の間に70%以上下落した計算になります。原油価格はその後も低迷を続けており、2月下旬になっても30ドルを若干上回る程度で推移しています。
原油価格が下がっている理由としては、世界的な景気の減速で需要が減少したこと、その一方で中東などの産油国が減産を見送ったため供給に過剰感があること、アメリカでシェールオイルの生産が拡大したことなどが挙げられています。また、核開発問題で経済制裁を受けていたイランから、制裁解除にともない輸出が再開されるとの観測も、相場の下落に拍車をかけたようです。
原油価格の今後についてはまだ下げるとの見方もありますが、相場は徐々に落ち着きを取り戻しており、いつ上昇に転じてもおかしくはありません。中国や日本、欧州などでは景気減速に対処するために追加的な金融緩和策が実施されており、G20では景気を支えるために政策を総動員することで一致しました。また、産油国の間では増産を凍結するなど協調の動きもでてきていますし、アメリカでの原油生産も減少に転じています。
「安く買って、高く売る」のが投資の基本なので、「大きく下げたときこそ安く買う一番のチャンス」です。歴史的な安値をつけている原油価格ではありますが、「そろそろ買い時なのでは?」と考えるのが自然な流れといえそうです。
■ドル安なのに原油安、このミスマッチにも注目
原油は「ドル建て」で取引されるため、ドルが上がると価格が下がりやすく、一般に「ドルとは逆相関」の関係にあります。円高になると円建てのブランド品が安く買えるのと同じ理屈です。一方、世界的な株価の下落など投資家がリスクを取りたくない場面では、円高になる傾向があります。日本の物価変動はほぼゼロで非常に安定しており、インフレによって通貨の価値が下がってしまうリスクが小さいからです。
通常、円高・ドル安であれば原油価格が上昇するはずですが、最近の原油価格はドル安とは連動せずに下落を続けており、こうした異常な状態が長く続くとは考えづらいです。また、原油は株とは違い実物資産ですので、価値がゼロになることはありません。企業が倒産すれば紙切れになってしまう株とは異なります。
こうして考えると、世界的な株安に見舞われている現在、原油に投資する魅力は高まっているといえます。ただし、原油に投資したくても実物を買うわけにはいきません。チャンスと前向きに考えて、いざ原油に投資しようと思っても、「どうやって買ったらいいのか?」と思う方もいるでしょう。そこで、おすすめなのが原油ETFです。
■原油へ投資するならETFがおすすめ
原油を買うなら商品先物がありますが、先物取引は大きな借金を抱える可能性がある危険性の高い取引ですので、初心者の方にはおすすめできません。そこで、投資が初めての方にもやさしい、原油価格に連動するETF(上場型投資信託)をご紹介します。
ETFとは株の売買と同じように取引ができる投資信託で、1口あたりの投資額が少ない商品が多いため、これから投資をはじめる方が最初に手を出しやすいでしょう。ただし、中にはほとんど売買されないものもあり、そのようなETFは流動性リスクを負うことになりますので注意しましょう。
原油価格に連動するETFはWTI原油連動型上場投信 <1671> 、NEXT FUND NOMURA原油インデックス連動型上場投信 <1699> 、ETFS WTI原油上場投信 <1690> の3つとなりますが、ETFS WTI原油上場投資信託は出来高が少ないことから、現実的な選択肢としては2つに絞られそうです。
どちらも原油価格に連動するように作られているため、原油価格が上昇するとETFの価格が上がり、原油価格が下落するとETFの価格も下がるようになっています。 名称や対象とする指数に違いはありますが、投資スタイルは一緒です。
■原油ETFなら2000円からでも投資が可能
WTI原油価格連動型上場投信は2016年2月29日の終値が1872円でした。1口から購入できますので、この日の価格なら1872円から売買ができます。また、NEXT FUND NOMURA原油インデックス連動型上場投信の同日の終値は287円でした。こちらは10口単位での購入となりますので、2870円から購入が可能ということです。
いずれにしても、2000円、3000円といった良心的な価格から取引ができます。
■ETFは証券会社を通じて買う
ETFを買うには、証券会社に口座を開設する必要があります。まずは証券口座を開設し、入金を行います。そして、証券口座を通じてETFを購入する運びとなります。
■原油ETFでリスクをコントロールしながらリスクを取りに行く
著名投資家のジョージ・ソロス氏は、下げ相場で顧客からの預かり金の20%以上を失った時、「たった20%しか減っていないのに解約するなんてバカな連中だ」と言ったそうです。彼にとっては暴落時こそ、安く株を買うチャンスだったのです。また同じく著名投資家のウォーレン・バフェット氏も「肉が安ければ買うでしょう?私は安いから株を買うのです」とリーマンショックの時にいったとされています。肉の値段が下がると喜び、上がると悲しむものですが、ほとんどの投資家はこの逆で、株価が下がると不機嫌になり、上がると上機嫌になります。
原油安が続くいま、原油を買うことに抵抗があるかもしれませんが、過去の大物投資家は安い時にこそ積極的に投資をしてきました。また一度にすべてを投資するのではなく、資金を少しずつ毎月積み立てるように投資をしていけば、リスクは大きくならずに済みます。
例えば、資金を均等に分割して定期的に投資する「ドルコスト平均法」と呼ばれる投資手法があります。価格が高いときには購入量が少なく安いときには多くなるため、数量を分割する場合にくらべて有利になるといわれています。このようにして、リスクを抑えながらもリスクを取りにいくことが可能となります。
原油ETFを利用すれば小さな金額からコツコツと積み立てることができますので、歴史的な安値圏にある今、少しずつリスクを取り始めてはいかがでしょうか?