
現在、日銀による大量購入などで話題になっているETF。日本ではあまり知られていませんがその様々な優位性から過去10年で最も成長した金融資産として世界中で人気を集めています。
プロの機関投資家が広く利用する一方、個人も自分たちの資産を運用する手段として利用しているETF。その中でも海外のETF、とくにETFが世界で最初に誕生した国でもあるアメリカのETFは、種類やパフォーマンスの面において日本の何歩も先を行っています。今日は、そんな海外ETFの魅力とおススメ銘柄についてご紹介します。
1. そもそもETFってなに?
日銀の金融緩和政策の一環として、継続的な買い入れが行われているETF。政府や金融機関にとってだけでなく個人の資産運用にもぴったりな金融商品なのです。名前は知ってるけど、そもそもどういう仕組み?と疑問に思っている方も多いはず。まずはETFの仕組みについて詳しく見て行きましょう。
1-1.ETFの仕組み
ETFはExchange Traded Fund、上場投資信託の略で、これまで銀行の窓口や証券会社で取引していた投資信託が株のように上場しいつでも取引できるようになった金融商品です。投資信託は、株を自分で選ぶのが大変だったり、欲しい銘柄がいくつもあるのにまとまった資産がまだない人が気軽に色々な銘柄を買えるようにした商品です。プロが代わりに銘柄を選び、小口で売ってくれるので手軽に小額から買えるのですが、手数料が高かったり、1日に1回しか取引の申し込みができず売買に制限があったりという難点がありました。そこで、手数料を安く、いつでも気軽に売買ができるように証券取引所に上場させたという訳です。
個人の投資家に代わってプロが分散投資で運用するのがこれまでの投資信託。1日1回取引が基本。
上場していれば市場が開いてさえいればいつでも取引は可能ですし、ネット証券で取引する上場商品は手数料がとても安いので、これまでの投資信託よりずっと自由度が高い商品だと言えます。
また、これまでの投資信託は一般的に上記の図のようにファンドマネージャーと呼ばれるプロが銘柄を選定することでより良い運用成績を目指していた半面、そのプロに支払う報酬も手数料に含まれていたのでコストが高くついてしまっていました。
1-2. ETFはなぜ生まれたの?
そもそもETFは1987年、ブラックマンデーと呼ばれる株が大暴落したイベントをきっかけに誕生しています。この時、実に1日22%もの株価が下落したのですが、当時はETFのように「リアルタイムで取引でき、しかも市場の値段を反映できる」商品がなかったため、売り買いがスムーズにいかず被害が拡大してしまいました。(詳しく知りたい方はこちら)その教訓を元に、急な相場変動が起きても値段の連動性が保て、こういったイベントの際に被害を小さくできるような商品の開発が求められたという訳です。
1-3. ETFの強み
上場していて売買がしやすい、手数料が安い、というETFの良さをここまででご紹介しましたがETFの良さは他にも沢山あります。知らないなんて損!なETFの良さを更にご紹介します。
1-3-1. 手軽に色々な銘柄に投資できる
元々投資信託は色んな銘柄を小額でできるように設計した商品。イメージは、1パックまるごと買うとちょっぴり量が多すぎるコストコの商品を、全部1人前にしてお手頃バラエティパックにしてくれたもの、という感じ。数千もある金融商品から1銘柄だけを選ぶのはどうやって選んだら良いの?とハードルが高いですが、【日経平均株価】【高配当株】【金融セクター】【米国株】等とテーマ別に分けてあるバラエティパックなら選ぶハードルが低くなりませんか?しかも、1銘柄だけを選ぶと予想外の事件や天災、買収などで会社がなくなってしまうリスクもありますが、200銘柄も詰め合わせたバラエティパックなら中の会社が1つくらい潰れてもへっちゃらです。
1-3-2. 小額で投資を始められる
株に投資するぞ!と思っていざ色々調べてみると、1銘柄が意外と高いということに気がつきます。安いものなら10万円以下で購入できるものもありますが、例えば有名なトヨタ自動車(7203)は最低単位を買うために60万以上の資金を用意する必要があります。初心者はちょっと二の足を踏んでしまう金額・・・
ではこのETFはどうかというと、多くのETFは1万円程度の少額から購入することができるのです。え!色々入ったバラエティパックなのに?―そうです。一般の人でも購入しやすいよう、例え2000銘柄に分散投資ができるようなETFでも、中身の1銘柄当たりの量を少なくすることで沢山の銘柄に分散投資できるよう設計されています。1万円で日経平均株価がまるごとかえるとどうなるか、というと、例えばアベノミクスで株価が上がっている!というニュースを聞いた時に、え?でもそれってどの銘柄?60万も払わないと株って買えないの?と二の足を踏まなくても【日経平均株価】ETFをまるっ!と1万円で買ってしまえばとりあえず日本全体に投資できるのです。
1-3-3. コストがほとんどかからない
ETFはコストの面でとても優れている商品です。理由は2つあるのですが、まずは株のように直接市場で取引できるのでこれまでのように銀行の窓口などに仲介手数料や初期購入手数料を払わなくて良くなった事。もうひとつは、ファンドマネージャーを必要としない設計にした事です。これまでの投資信託は、投資のプロであるファンドマネージャーが銘柄を選んでくれていたため、ファンドマネージャーへの報酬が発生していました。ETFは、ファンドマネージャーに中身を選ばせるのではなく、【日経平均株価】【TOPIX】【ナスダック】【ボベスパ指数】などという、もともとはその国の株式市場やそのセクターのパフォーマンスを図るために設定された指数に連動させるという手法をとったおかげでそれが不要になったのです。(ここだけの話、ファンドマネージャーのお給料はとっても高いのです)
1-3-4 透明性が高い
これまでの投資信託は、バラエティパックの中身が決められたタイミングでしか公開されなかったため、自分のお金が実際何に投資されているかがリアルタイムでは分からないような仕組みになっていました。ETFはというと、毎日決められた時間に、今保有している銘柄の割合を全て公開しているため、自分が知らないうちに全然当初の話と違うものに投資されていた!なんて心配は御無用です。
2. 海外ETFはこんなにある 日本ETFとの違いとパフォーマンス
ETFの本場はなんといってもアメリカです。銘柄数も資産規模も、日本とは比べ物にならない規模があります。そして、私たちが思っている以上に世界中で取引がされています。
ここでは、海外ETFについてを詳しく見て行きましょう。
2-1. 世界のETF市場概要
日本で耳にするようになったのはごくごく最近のETF。その歴史は、世界初のETFが誕生してからまだ20年程度と長いとは言えません。しかし既に世界60カ所以上の証券取引所で6000もの銘柄が取引されているのです。過去10年で最も成長している金融商品といっても過言ではありません。最近耳にするなー、程度の日本はちょっぴり出遅れているのです。
2-2.アメリカで爆発的に人気なのはなぜ?
ETFの成長は特にアメリカにおいて目を見張るものがあります。
しかも300兆円近くもある市場規模のうち半分以上は個人による保有。どれだけ一般の投資家から人気があるかが伺えます。これはひとえにETFという商品自体が優れているから、ではあるのですが、それ以外にも理由はあります。なぜ日本ではこんなに流行っていないのでしょうか?
2-2-1. 銘柄数の差
日本とアメリカでは、銘柄数に10倍近くの差があります。日本が200本程度のETFを上場させているのに対し米国は2000本近いETFが存在し、投資対象のバラエティも豊富です。【配当が多い株】【値動きが安定している株】【業種別】などのETFは日本にも存在しますが、例えば【SNSで沢山つぶやかれている銘柄】【女性が活躍している企業】なんて変わり種も!それに対し日本は、基本的にそのほとんどが日本国内の株式に投資するETFのため、日本株以外に投資したい人は直接海外ETFを購入する、ということになってしまうという訳です。
2-2-2.パフォーマンスの差
金融商品である以上、やはり気になるのは「どれだけ成長するか」。せっかく投資してもお金が減ってしまっては意味がありません。日本とアメリカのETFの大きな違いはここにもあります。これは、日本で最も人気があるETF・日経平均株価連動ETFと、米国で最も人気があるETF・S&P500連動ETFのパフォーマンスを比較したものです。
過去20年で60倍以上、過去10年でも28倍もの差があります。考えてみると、日経平均株価はバブルの時に3万円代をつけて以来二度と3万円代の大台に乗る事なく停滞していますが、米国の株価はリーマンショックや9.11の同時多発テロがあった後も上がり続けているのです。海外ETFが注目されるのも納得ですね。
2-2-3.個人投資家にも愛されているETF
日本では、ごく一部の個人投資家と日銀や金融機関といったが取引しているETFですが、米国では広く一般の個人投資家が保有しています。日本ではまだまだ有名な株式の銘柄の方が取引量は多いですが、米国の場合銘柄によってはETFが株式よりも積極的に取引されることも珍しくありません。取引高上位には毎日必ず何かしらのETFがランクインしています。米国が元々金融リテラシーが高く投資に積極的なのも理由の1つではありますが、世界で最も大きな市場でありパフォーマンスも高いETFには国内外を問わず個人投資家の資金が流入しています。
3. おすすめの銘柄5選
ここまで、海外ETFの良いところを沢山ご紹介しましたが、実際に保有するならどの銘柄がいいの?という方に!お待ちかねのおススメ銘柄をご紹介します。ETFを選ぶ時にはいくつか押さえておくべきポイントがあります。
- 預かり資産
- 流動性
- エクスペンスレシオ(信託報酬)
が一般的にまず押さえておくべきポイント。特に①と②に関しては、充分な預かり資産や流動性が無い場合、上場廃止(解約)になってしまう事もあるため、海外ETFの取引を始める場合、まずは上記のポイントに注意して有名な銘柄から始めるのが基本です。
ここでご紹介する銘柄はもちろん信頼性が高い大型銘柄ばかりを厳選しているのでご安心ください☆
3-1. パフォーマンスは10年で日本の20倍以上!スパイダー500®ETF【SPY】
先ほどのパフォーマンス比較でもご紹介した、米国を代表する指数であるS&P500 に連動するETFなのですが、世界で初めて設定されたETFでもあります。S&P500という、アメリカの証券取引所に上場している約500の銘柄で構成されており、米国の成長そのものに投資が可能。今の上位銘柄はアップル、アマゾン、グーグルなど私たちにもお馴染みの銘柄ばかり。 米国ETF、やってみたいけどどれが良いの?という方におススメです。
3-2. 世界に分散投資!バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【VT】
VTは世界全体の98%の株式銘柄に投資ができるなんともダイナミックなETF。どうやって世界の98%に投資するかって?仕組みは単純、この銘柄は世界の主要47カ国の株約8000銘柄で算出される指数に連動しており、それらの株の時価総額を全て足すと世界の市場の98%に相当しているのです。これは、今はこの国が良い、と思っていても思いがけないリスク(政治・天災など)に左右されるなら、いっそ世界全体に投資してしまおう。という考え方で作られており、長期保有でじっくり成長を待つのに適した銘柄です。しかも、これだけの銘柄を保有しているにも関わらずエクスペンスレシオ(※経費率。投資信託でいう信託報酬)は0.14%と破格。トータルで見ればきっと少しずつでも世界は成長していくだろう、と思う方におススメです。
3-3.新興国はまるごとおませ!バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF【VWO】
世界全体に投資するVTと並んで日本でも人気が高い銘柄がVWO。こちらは新興国に特化した銘柄で、中国を含む様々な新興国に投資が可能。組み入れられている国は中国、ブラジル、ロシア、インド、南アフリカなどなど。新興国はマーケットの成熟している先進国よりも伸びしろがある気はしますが、その中でどれが良いかを選ぶのも難しい・・・という時にこの「新興国バラエティパック」を購入すれば、その中の伸びた国が全体のパフォーマンスを引っ張ってくれるという訳です。
3-4. 保有している金の量は世界一、スパイダー・ゴールドシェア【GLD】
金は、大昔から資産としての地位を築き、注目を集め続けています。時代劇で出てくる大金持ちの象徴は金色に輝く小判ですし、映画の中でも主人公と敵が狙う宝の山には必ず金貨と金塊が出てきますが、21世紀の金は一味違います。実際に金で資産運用をしようとすると、現物の購入または積み立て、もしくは先物取引という選択肢だったのですが、今はETFという強い味方がいます。原資産に純金の延べ棒(現物)を保有するこちらのGLDは世界最大の金を原資産とする金融商品です。1万円程度から金を保有できるのですが、金は景気が悪くなった時にリスクの回避先としてお金が集まりやすいので、株と金両方に投資をすると、安定した運用ができると言われています。
初心者の方が最初に買うならどれ?という質問をよくいただきますが、それぞれ値動きも違い小額での購入が可能なので、出来れば複数銘柄を組み合わせて保有し、その値動きを見る練習から始めてみるのが良いかも知れません。
4.そもそもどこで買える?海外ETFの取引方法と手数料
パフォーマンスや銘柄数ではとっても魅力的な海外ETF。取引は実はちょっぴり面倒なのです。ここからは、日本で海外のETFを取引する方法をご紹介します。
4-1.証券会社の外国口座
先ほどご紹介した海外ETFはすべて米国市場に上場しているものなので、ドルでの購入が前提となります。投資対象に限らず、「上場している国」の通貨での取引になります。
日本の証券会社には「外国口座」という海外の金融資産を運用するための口座が用意されているので、まずはそこで口座を開設し、持っている日本円をドルに変えて売買することになります。取引には①両替手数料②売買手数料という2つの手数料がかかるうえ、取引1回当たりの手数料に関しては日本国内の株の取引に比べずっと割高になってしまうため、小額で頻繁に売買が繰り返せる訳ではなく、ある程度まとまった資金で長期投資をするのが基本になります。また、為替についても円安の時にドルに両替してしまうと、為替で損をするリスクもあるので注意が必要です。もし取引する場合、まずは手数料の安いネット証券を探すところから始めましょう。話題のNISA口座を利用すれば売買手数料を実質無料にしてくれる、なんてキャンペーンをやっているところもあるのでいろいろ比べて選んでみて下さい。
4-2.手数料とか両替が面倒!海外投資は為替リスクが怖い!という方必見のサービス
手数料が割高な事に加え、為替の変動によるリスクもあるのが海外への投資。せっかくETFが順調に成長しても為替で損をしてしまう事も考えられます。
そんな、海外投資の煩わしさに二の足を踏んでいる方には、インヴァスト証券が提供している「トライオートETF」がおススメです。このサービスは両替不要・マニュアルでの売買手数料ナシで国内外のETFが取引できるというもの。為替のリスクを無くす工夫がされており、その代わりに保有期間分の金利が手数料としてかかるのですが、例えば1万円のETFを1年保有した時の手数料はたったの2百円程度。海外のETFを買うためにかかる両替や取引の手数料を考えると気にならない程度の額ですよね。海外投資はやってみたいけど、まとまった資金をいきなりつぎ込むのは怖い、まずは少額から初めてみたい、という方にはおすすめです。
4-3.投資は初めてなので大損しないか心配、という方に最適のサービス
【2017年7月30日 追記】投資に興味はあるけど今までやったことがないので、大きな損をしないかやっぱり不安があるでしょう。そんな方におすすめのサービスが、トライオートETFを利用して積み立て投資ができる「マネーハッチ」です。いくらリスクが小さい金融商品であっても、一度にまとまった資金を投資してしまうとその元金に対して損益が発生します。でも、毎月少額ずつ投資しながら購入価格を平準化できる積み立て投資ならばリスクも分散されるので、初心者が長期投資をするのに適しています。マネーハッチでは、高パフォーマンスのETF自動売買に毎月1,000円程度から積み立て投資することができるのです。
5.まとめ
いかがでしたか?意外と知られていない海外ETFですが、日本にはない魅力が沢山!これまでの投資信託や海外株投資に比べてぐっと身近に、かつ手軽に海外に投資ができるので、ぜひ興味がある方はトライしてみて下さいね。資産運用は、銘柄選も重要ですが、まず最初の1歩を踏み出すことが大切です。