アメリカの金利上昇と銀行株投資

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2008年のアメリカ発の世界金融危機をきっかけとした株価の大暴落はまだ皆さんの記憶に新しいのではないかと思います。
その金融危機の発端は、リスクの高い借り手に対して金融機関が過剰の住宅ローンの貸し出しを行ったことです。
リスクの高い借り手に貸すローンの事をサブプライムローンといいますが、普通なら住宅ローンを貸せない様な信用力の低い人達に対し軽い審査で高利のローン組ませたのです。
この大前提として、アメリカの不動産価格が長期的に上昇を続けてきた事実があったのですが、2006年に不動産価格はピークを迎えます。
不動産価格が下落を始め、住宅ローンの返済ができない借り手を大量に生み出しました。アメリカ発のこのような事態は、世界中の金融市場で連鎖反応をおこし、世界中の株式市場が暴落することになります。
マスコミはこれの事態を、サブプライムショックと呼びます。
そのサブプライムショックの引き金を引いた米国の銀行の株価は市場の中でも特に目立って大暴落を演じる事になります。
株価の暴落だけで済んだ銀行は幸いです。
なぜなら、この金融危機の為アメリカでは400以上の金融機関が破綻したと報じられているのです。
このような事態を受け、当然ですが、規制当局の金融機関に対する対応は厳しくなっていきます。
FRB(連邦準備制度理事会)は、生き延びた金融機関を厳しい監視下に置きます。
銀行はレバレッジ規制やより厳格な自己資本規制などに対して対策を講じさせられると同時に、莫大なサブプライム問題関連の訴訟の罰金、訴訟関連費用を支払うことになります。
しかし、昨年に入り米国のほとんどの金融機関のメガ訴訟も解決済みとなります。
明らかに最悪の事態は過ぎたようです。
この様な環境下、アメリカでは不動産価格も上昇に転じ、もう少しで金融危機前の市場最高値を抜いてしまいそうな勢いがあります。
アメリカの株式市場については、昨年の5月には既に史上最高値を更新し、今年の8月にも新たに史上最高値を更新します。
雇用も増え、景気が回復しつつあるアメリカでは様々な資産の価値も上昇してきたのです。

 

そうした中、昨年末アメリカでは利上げが行われました。
その後も継続して利上げがあると思われましたが、年初には市場では景気後退という見方が浮上し、二回目の利上げの可能性は遠のいてしまいました。

ただ、ここにきて大統領選挙が終わった12月に利上げが行われるのではという見方が浮上しています。
デフレの日本から見ると非常にうらやましいのですが、賃金引き上げという状況も利上げを正当化する理由のきっかけとなっています。

銀行は、金利が上昇しますと預金金利と貸出金利のスプレッドが拡がる、つまり、利ザヤが拡大する事により、収益力が高まります。
0.25%の利上げが行われると銀行業界の収益は4%かさ上げされるという米系の証券会社の試算がありますので、明らかに利上げは銀行にとってはありがたい話なのです。

 

では、そんな銀行株のバリューションはどうなっているか見てみましょう。
銀行株の評価をするにあたり、一株当たりの純資産と株価を比較する事がよくあります。
株価純資産倍率と呼ばれていますが、この尺度で見ると現在(10月10日)の銀行セクターの株価純資産倍率は0.97倍で、2000年以降最も割安なレベルにあります。

 

金融危機直後の銀行は、様々な不良債権を抱えており、銀行が保有している証券の価値は正確に測ることはできず、当時の銀行の簿価の信憑性は低いとみられていました。
金融危機も過去の話となった今、銀行が保有する資産も当時と比べより信頼できる物となって来ています。

 

アメリカの株式市場の中で、株主還元が最も遅れていたのが銀行業界です。
自社株買いや、増配を行うために彼らはFRBにお伺いを立てなければならなかったのです。
お上には、株主還元より自分たちの体力の強化が最初でしょう、と言われ積極的な株主還元策がなかなか許されずにいたのですが、それも変わりつつあります。
銀行株の配当性向も歴史的に言うと低いレベルですから、今後増配の恩恵も見込めます。

 

さて、そんな銀行セクターですが、私は個人的には、来年は相場全体を引っ張って行くのではないかと思っています。銀行株が下がる局面があれば、そこは拾っていって良いと思います。

 

生憎現在日本の証券会社で売買できるETFには、銀行セクターのみに投資できるETFはないのですが、銀行セクターを含む金融セクターのETFが二種類あります。
ステート・ストリート社の金融セレクトセクターSPDRファンド(NYSE: XLF)とバンガード社のバンガード米国金融セクターETF(NYSE: VFH)です。

VFHはS&P金融セレクトセクター指数をベンチマークとしており、VFHはMSCIUSインベスタブル・マーケット・金融25/50インデックスがベンチマークとなっています。
これらのETFは金利上昇の局面で恩恵を受けると思っています。