
7月8日(金)に6月の雇用統計が発表されました。
非農業部門雇用者数はコンセンサス予想17万5千人に対し28.7万人でした。
これで過去1年間の平均値は20.4万人になりました。
このペースなら、人口の自然増からくる労働人口の増加分を上回る雇用が創り出せていることを意味し、趨勢として、米国の雇用市場は安定的に改善していると結論付けることが出来ます。
セクターごとの雇用の状況
セクターでは、レジャーならびにホスピタリティ産業の雇用増は+5.9万人でした。
ヘルスケアならびに社会援助産業の雇用増は+5.8万人でした。
金融サービスは+1.6万人でした。
情報産業は+4.4万人でした。
このうち通信では+2.8万人の雇用増が見られましたが、これはベライゾンのストライキが終わったことが関係しています。
またプロフェッショナルならびにビジネス・サービス部門の雇用は+3.8万人でした。
過去2か月殆ど成長が見られなかった小売業も+3万人と雇用を増やしました。
この反面、鉱業、建設、製造業、卸売業、運輸業、倉庫業、政府部門では、雇用が減少か、もしくは横ばいを記録しました。
賃金
平均時給は2¢の上昇でした。
これで過去1年間の平均時給の伸びは2.6%になりました。
失業率
失業率は4.9%でした。
今回の雇用統計の総評
5月の非農業部門雇用者数が極めて低かったので、米国経済の鈍化を懸念する声が一部から上がっていましたが、今回の雇用統計は、それが杞憂に終わったことを意味すると思います。
利上げ期待に与えた影響
普通に考えれば、今回、雇用統計が良かったことは、連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの可能性がまた高まることを意味します。
しかし先週金曜日の雇用統計の後の市場の動きをみると、利上げ確率には大きな変化は見られませんでした。
下は今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)である12月14日でのフェデラルファンズ・レートの確率を示すグラフですが、利上げ確率は27.6%(25.4+2.2)に過ぎません。
債券が、へんな買われ方をしている
実際、先週金曜日の強い非農業部門雇用者数の発表の後でニューヨーク株式が買われたことは当然として、債券も買われたことは意外な展開でした。
これは6月23日の英国の国民投票でEU離脱派が勝利したことによる不確実性の増大でFRBは当分利上げ出来ないだろうと考える市場参加者が多いことを反映していると思います。
ドルの弱さにはガッカリ
ドル/円は金曜日の雇用統計が発表された直後は一旦、ドル高に振れたものの、直ぐに「行って来い」になってしまいました。これは(そろそろ円安になって欲しい)と願う投資家にとっては、たいへん落胆させられる動きでした。
ドル高への試みが「腰砕け」に終わったことで、逆に心理的な節目である100円割れの水準を試しに行く展開になることも考えられます。ドルがこの水準を割ると収拾がつかなくなるリスクがあるので、そろそろ介入が必要になっていると思います。