
ルール改正
10月14日から米国のマネー・マーケット・ファンド(略してMMF)のルールが変更されます。MMFは公社債を中心に投資する投資信託の一種です。
今回のルール改正では、「流動性を確保するための緩衝(バッファー)、つまり余裕を設けなさい」とか「緊急時にはMMFは解約をストップできる」ということが盛り込まれます。
これらは、突発的なイベントの発生でMMFに解約が殺到したとき、整然とそれに対応できるようにするための予防措置です。
咄嗟(とっさ)にMMFをサクサク解約できなくなると、MMFの魅力は殺がれます。するとこれまでMMFで運用されていた資金の一部は他へ流れます。
MMFは投資信託であり、その投資先はコマーシャル・ペーパー(CP)や譲渡性預金(CD)なので、MMFへの資金流入が減るとCPやCDによる資金調達が少しやりにくくなるのです。
銀行はこれらの調達手段による資金調達がやりにくくなったので、その分、他の方法によりお金を借りて来なければいけなくなりました。
これがロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が上昇している理由です。
そこで注目されるのは「10月14日に新ルールが施行された以降、LIBORは下がるのか、それとも高止まりしたままになるのか?」という点です。
いまの時点では正直なところ予測しにくいです。
短期市場の金利が持つシグナル効果
短期市場の金利は、カレンシー・スワップ、中央銀行の金利政策、企業の借入、果てはスチューデント・ローンまで、広範に影響を及ぼします。
今回のLIBORの上昇は、このように技術的な事情によるものであり、けっして銀行が相互不信に陥っているからではありません。
しかし普通、LIBORの上昇は「悪い兆候」という風に市場関係者に受け止められがちです。
折角、有事の際のMMFのリスクを除去することを目的として新ルールを制定したのに、それが誤解されて新たなリスクを生む可能性が出てきたというわけです。
したがってここしばらくの間は短期市場の動向に注目したいと思います。