
連邦公開市場委員会の結果
11月1・2日の両日、連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されました。今回のFOMCでは現行の政策金利、0.50%は予想通り変更されませんでした。
声明文の内容は1)家計部門の支出、2)インフレの見通し、の二つの面で変更がありました。
家計部門の支出
まず前回の声明文では「家計部門の支出はだんだん強くなっている」という表現があったのですが、それが「家計部門の支出は少しだけ増している」と、ややダウングレードする表現になりました。
インフレ
つぎにインフレについては声明文の中の3か所で表現が変わりました。
まず前回の声明文には「インフレは引き続き連邦公開市場委員会の2%の長期目標を下回っている」という表現があったのですが、これが「インフレは今年前半から比べ、いくらか強まった。しかし未だ連邦公開市場委員会の2%の長期目標を下回っている」とアップグレードされました。
加えて「市場がどれだけインフレを予期しているかの尺度は上昇した。しかしまだその水準は低い」という表現が新しく使用されました。
これは例えば5年先5年物期待インフレ率のチャートを見ても一目瞭然です。
さらに以前の声明文にあった「インフレはエネルギー価格の下落の影響で、しばらくは低いままで推移し……」という表現は、今回、削除されました。
この一連の変更で、FRBはインフレに関する見方をかなり軌道修正したことが読み取れます。
ちなみにフェデラルファンズ・レートの先物の取引価格から逆算される、12月14日のFOMCでの利上げ確率は71.5%となっており、極めて高い確率で利上げが実施されることをマーケットは織り込んでいます。
利上げと株式市場
さて、通常、FRBの金利政策がそれまでの利下げから、逆に利上げに転じる時、市場はそれを嫌気して下落することが多いです。しかし2回目、3回目と利上げの回数を重ねるごとに、市場参加者は追加利上げに対して鈍感になるのが常でした。
今回の利上げサイクルは、いまからちょうど一年前の2015年12月に始まりました。利上げが発表された後、翌年の2月にかけて株式市場は軟調な展開でした。
この難関を通過したので「今回は利上げがあっても市場は鈍感だろう」という意見を持つ市場参加者が多いです。
私はその意見には反対です。
なぜなら前回の利上げからまるまる1年近くの時間が経過しており、今回の利上げは、殆ど初回の利上げと同じような緊張感でもって市場参加者に受け止められているからです。
従って、通常、初回の利上げの際にマーケットが受けるような、利上げ前、もしくは利上げ後のどちらかで市場が急落する……という「洗礼」を、再び受けなければいけないだろうと思うのです。
12月14日の今年最後のFOMCで利上げがあることは当然として、その後の利上げピッチがどのくらい急なものになる? という点については、未だ全然、ロードマップが描けていない状態なのです。
その「利上げの間隔」が大体固まってくるまでは、投資家は神経質にならざるを得ないと思います。