
大統領選挙
11月8日に実施された大統領選挙では、共和党のドナルド・トランプが勝ちました。
来年1月の就任式を前に、政権移行の下準備が始まっています。
優先順位
現在、市場関係者が注視しているのは、数ある公約のうち何からトランプが手をつけるかです。
トランプは貿易問題、移民問題などを選挙戦の争点にしました。
しかし以外にもトランプは税制改革にまず着手する様子を見せています。
税制改革に最初に取り組むわけ
トランプが税制改革に注目した理由は、すでにタタキ台になる法案が下院によって用意されており、それに乗っかることで、てっとり早く実績作りが出来るからです。
税制改革は共和党議員の大好きなテーマです。今回の選挙で党内は分裂気味ですが、それをひとつに団結させるには、党を挙げて税制改革に取り組むのが効果的です。
税制改革案
下院案とトランプ案は、大筋では似たり寄ったりです。
両案ともに現行7段階になっている税率を、3段階(12%、25%、33%)に簡素化することを提唱しています。
現在の最高税率は39.6%なので、新しい税率は裕福層に有利です。
シンクタンク、租税政策センター(Tax Policy Center)は、上位0.1%の富豪層の場合、税金が14%も少なくなると試算しています。
同様に、中流層(年間所得4.3~8.3万ドル)では税金が1.8%、低所得者層では1%のカットになると見込まれています。
税制改革が米国債に与える影響
このように新税制は裕福層にとって大型減税になります。株式市場は減税を歓迎します。マーケットがユーフォリアに包まれたのは、このためです。
トランプ案では、約5兆ドルも政府は減収になります。
これは米国債を二つの面から圧迫します。
まず税収が減るので政府の元本ならびに利払い能力は低下します。米国債の信用は低下します。
つぎに納税者の見地からすれば5兆ドルの減税は、それだけお金が手元に残ることを意味し、それが消費に回れば景気浮揚効果が出ます。景気が良くなればインフレになり、債券は売られます。
まとめ
トランプは、まず税制改革に着手するという見方が、市場関係者の間に広まっています。それは減税を意味し、景気浮揚効果があります。
債券は売られています。
株は景気拡大を囃し、買われています。
このような全般的なリスクオン(=積極的にリスクを取るムード)を背景に、ドルは買われています。
今後は、この債券安という新展開が、投資戦略を考える上でのカギを握ると思います。