
米国株式市場のバリュエーションは、いまどうなっている?
11月8日の選挙で共和党のドナルド・トランプが勝利して以来、米国の株式市場はラリーしています。
そこで今、アメリカの株式市場のバリュエーションがどうなっているのか、点検しておきたいと思います。
まず米国の代表的株価指数であるS&P500指数の2016年の利益予想は118.78ドルです。
現在のS&P500指数は2,213.35ですから:
2,213.35 ÷ 118.78 = 18.63
つまり株価収益率(PER)は18.63倍ということになります。過去10年の平均は16.3倍ですので、現在のPERは明らかに割高圏に入ってきています。
業績
米国企業の足元の業績は、好転しています。いまちょうど2016年第3四半期の決算発表シーズンが終わったところですが、第3四半期は前年比+3.9%の伸びでした。
さらに現在のコンセンサス予想では、2016年第4四半期以降も利益は順調に伸びて行くと見られています。
普通、現在のアメリカがそうであるように、景気が加速し、企業の利益が伸びているときは、PERは少々「欲張り」な水準まで買われることが多いです。
だから「歴史に照らして割高水準なので、すぐ売り!」という風には断定できないと思います。
金利
株式の妥当バリュエーションを決定づける、もうひとつの要素は、金利です。
株式と市中金利は、一般に「競争関係にある」と理解されています。つまり「銀行預金で魅力的な利子がつくのであれば、わざわざリスクを冒してまで、株を買う理由はない」という理屈です。
ですから金利が上昇すればするほど株にとっては不利な環境になります。
現在の米国の国債(財務省証券)の利回りを、償還期限の短いものから、長いものまで、ずらっと並べて、その利回りを線で結んだものが、イールドカーブと呼ばれるものです。
上のグラフで、灰色の線が、現在のイールドカーブです。
橙色は、大統領選挙の投票日(11月8日)の前日です。
すると選挙の前と後で、かなり金利が動いたことがわかります。
これらの線は右肩上がりを描いていますが、その傾斜が急であるほど「イールドカーブがスティープ(急こう配)になっている」と表現します。現在は、教科書的なスティープ化が起きています。
普通、このようなスティープ化は、投資家が(今後景気が良くなるぞ)と予想している場合に起こります。
つまり株式のラリーと、債券市場の投資家の期待は、考え方の一致を見ているというわけです。
つぎに金利水準そのものを見てみると、30年債の利回りは、ちょうど3%になっていることがわかります。
この「3%」という利回りは、現在の株式の強気相場をぶち壊してしまうほどの高金利ではありません。ただS&P500指数の配当利回りが2.15%であることを考えると、だんだん債券からのプレッシャーは強まっていることがわかります。
投資家のセンチメント
最後に市場参加者のセンチメントも点検しておきましょう。下はブルベア指数と呼ばれるものです。
現在、強気は55.9%、弱気は21.6%です。この強気から弱気を引き算した「差」が、下のチャートになります。
このチャートは、上に行けば行くほど投資家が「熱くなっている」ことを示唆し、これが40を超えると過熱圏です。
いまは危険なほど過熱していないことがわかります。