英国EU離脱国民投票を直前に控えゴールドETFが大人気

■いよいよ23日に迫った国民投票

英国がEUから離脱すべきかを直接国民に問うレファレンダム(国民投票)が6月23日に実施されます。

もし英国がEUを離脱することになると新しい不確実性が金融市場にもたらされることが懸念されています。

そのシナリオでは英国ならびに欧州大陸各国の経済は一段と低迷するでしょう。そしてイングランド銀行や欧州中央銀行(ECB)は、追加的な緩和政策を繰り出すことを強いられるでしょう。

これはゴールドには追い風です。

■マイナス金利でゴールドが上昇する理由

ゴールドには利子や配当がつきません。すると市中金利が高い局面では投資家は確実に利子や配当をもらえる銀行預金や株式投資の方が有利だと考えます。

しかし現在の欧州や日本のようにマイナス金利の状態では利子がつかないというゴールドのハンデは誰も気にしません。

一方、投資家が経済や政治の先行きに漠然とした不安を抱いている時、ゴールドは人気になりやすいです。

■大人気になっているゴールド関係のETF

このような理由から、ゴールドや金鉱株のETFには投資家の資金の流入が続いています。

先週(6月13日の週)は一週間でSPDRゴールドシェアETF(ティッカーシンボル:GLD)に6.2億ドルの資金が流入しました。これで同ETFへの年初来の資金流入は102億ドルに達しました。

なおSPDRゴールドシェアETFの年初来パフォーマンスは+22.2%となっています。

一方、金鉱株に投資するETFの人気も凄いです。ヴァンエック・マーケット・ベクトル金鉱株ETF(ティッカーシンボル:GDX)には先週だけで4.8億ドルの資金が流入しました。同ETFの年初来パフォーマンスは+88.8%です。

■ゴールドETFと金鉱株ETFの間のパフォーマンスの差はどうして生じる?

皆さんはゴールドのETFと金鉱株のETFの間で、どうしてこれほどまでにパフォーマンスに開きが出るのか疑問に思うかも知れません。

その理由は金鉱株ETFが保有しているのはバリック・ゴールド(ティッカーシンボル:ABX)やニューモント・マイニング(ティッカーシンボル:NEM)のような産金会社の株式であり、それらの産金会社の業績は金価格の上昇幅より遥かに早いペースで拡大する傾向があるからです。

これは「オペレーティング・レバレッジ」と呼ばれる現象が起因しています。

産金会社が地中からゴールドを掘り出してくる際にかかる採掘コストは、大体900ドル前後です。すると金価格が900ドルを割り込むと、産金会社は赤字になってしまいます。

逆に金価格が900ドルを超え、1000ドル、1100ドル、1200ドルとどんどん上昇してゆくと、産金会社の利幅の拡大率は金価格そのものの上昇率より数倍早いペースになるのです。まるで「てこの原理」を利用したように利益が等比級数的に伸びることから、オペレーティング(=操業時のという意味)・レバレッジと呼ばれているわけです。

さて、注意しなければいけないのは、金鉱株のオペレーティング・レバレッジは、逆の方向でも働くということです。

つまり金価格が下落しているときは、産金会社の利益は、金価格の下落ペースよりもっと速いペースで消えてゆきます。だから金価格下落局面では金鉱株ETFの下げはゴールドETFよりはるかにきつくなるのです。

この関係をよく理解してトレードに生かしてください。