
「つなぎ予算」頓挫
先週、「つなぎ予算」が上院で頓挫しました。このため今週から米国連邦政府機関の一部が閉鎖となります。
なお米国連邦政府機関の一部閉鎖は1977年以来、実に18回も起こっておりアメリカの投資家は「馴れっこ」になっています。
それらのシャットダウンの経験から言えば、それが米国のGDP成長に悪影響を与えた形跡はありませんし、株式市場も全然気にしませんでした。
長期金利に異変
もし今週以降マーケットが荒れるのだとすれば、それは連邦政府機関のシャットダウンとは別の材料だと思います。そこで私が注目しているのは長期金利の上昇です。
下は米国10年債利回りのチャートです。
これを見てもわかるとおり、米国の長期金利はずっと下落基調でした。しかし先週、10年債利回りが2.65%に達し、長期ダウントレンドを脱した観があります。
一般に金利低下局面では株式投資は簡単です。しかし金利上昇局面では細心の注意を払う必要があります。特に長期金利が急伸する局面ではS&P500のリターンが急に悪化することが知られています。
なぜ長期金利が上昇?
それではなぜ長期金利は上昇しているのでしょうか?
その最大の理由は、そもそも世界の経済が好調だからです。
リーマンショック以降の景気回復局面でもアメリカの企業の経営者は設備投資に消極的でした。このため長年の過少投資の反動で、今、キャッチアップ需要が爆発しています。
労働市場も「たるみ」が全くなくなり、ひっ迫感が出ています。その証拠に去年の暮れに税制改革法案が成立した後で、100社を超える大手企業が「社員全員に、即、10万円のボーナスを出す!」というような発表をしました。つまり1社がそういう発表をすると、従業員をつなぎとめておく必要性から他社も対抗上、ボーナス宣言をしなければいけないのです。
これは何を意味するか? と言えば、賃金の上昇プレッシャーが高まっているということです。
FRBは原油価格の上昇には普通、懐疑的な目を向けます。しかし賃金は、一度上昇しはじめると「クセになる」ので、大変警戒しています。
下は5年先5年物期待インフレ率と呼ばれるチャートで、「いまから5年先を起点として、それから先5年後のインフレ率を、市場参加者がどう見ているか?」を示しています。
この数字が最近、ハッキリと上昇し始めているのです。
現在のS&P500指数の向こう12ヵ月のEPSに基づいた株価収益率(PER)は18.6倍です。これはドットコム・バブルの一時期を除くと過去最高に近い水準であり、米国株式市場はショックに対してたいへん弱い状況になっていると言えます。