「双子の赤字」でドル安、金利上昇が起きるという認識は正しくない

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「双子の赤字」

最近、「双子の赤字」という言葉をしばしば目にするようになりました。「双子の赤字」とは1)政府の財政赤字と2)経常赤字を指します。

もともとこの言葉が使われ始めたのは1980年代のアメリカであり、当時はロナルド・レーガンが大統領でした。レーガンが大統領に就任したのは19811月、減税、規制緩和、軍事費の増大などから成る包括的な経済政策が打ち出されたのはその年の7月でした。

「双子の赤字」=ドル安、金利上昇は正しくない

さて、このところドルが軟調です。米国の長期金利は上昇しています。そこで「双子の赤字」がこれらの原因だと考える市場参加者が居るようです。
しかし歴史を紐解けば、必ずしもそれは正しくありません。

順番に見てゆきましょう。

まず米国の債務はこんな感じで推移しました。

レーガノミックスが打ち出された1981年後半を境に、債務が増えていることが確認できます。
連邦債務の伸び率はレーガノミックスが始まる直前は+10%でしたが、1983年春には+22%までジャンプしています。

次に経常収支を見ます。こちらもレーガノミックスが始まると、すぐに数字が悪化したことが読み取れます。

つまりレーガノミックスが「双子の赤字」を作り出した原因であることは、データにハッキリと現れているのです。

当時のドル相場

しかし1981年夏のドル/円相場は大体230円、「双子の赤字」が著しく酷くなった1984年には250円につっかける展開でしたから、ドル安どころか、むしろドルは高くなりました。

急激なドル安が始まったのは1985年の「プラザ合意」後です。つまり政治的な理由でドル安が演出されたのです。

当時の長期金利

次にレーガノミックス当時の長期金利を見ます。

1981年夏の10年債利回り14.5%から1983年にかけてはむしろ金利低下を見ていることがわかります。

つまり「双子の赤字」下ではドル安、長期金利上昇が起きるというのは、かならずしも正しくないのです。

「双子の赤字」=アメリカ経済崩壊は単純すぎる考え方

アメリカは国内でのモノ作りが廃れ、消費財の多くを中国などから輸入しています。その関係で景気が良くなり消費が増えると経常収支も悪化する傾向があります。それ自体は、アメリカの弱さとは無縁であり、単にそういう収支構造になっているだけと言う風に解釈すべきでしょう。

中国がアメリカに沢山モノを売ると、そうやって獲得したドルを運用するために米国財務省証券を買わざるを得ません。

こう見てくると「双子の赤字」=アメリカ経済崩壊と考えるのは、単純すぎる見方だということがわかると思います。