Brexitの近況と英国経済

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

Brexitのスケジュール

Brexit(ブレグジット)とは英国のEU離脱を指します。2016年の国民投票でイギリス国民がEU離脱を希望する意思表示を行い、それに従い英国は20173月にEUに対して離脱の意向を正式に伝えました。これにより20193月に英国はEUを離脱することになります。言い換えれば英国のEU離脱まであと1年を切ったわけです。

様々なシナリオが存在する

さて、このように2019年3月のEU離脱はほぼ決定なのですが、具体的にどのようなカタチで離脱が行われるか? に関しては未だ様々なシナリオが存在します。それ次第で英国ならびに欧州経済に与えるインパクトは大きくなる場合もあるし、逆に軽微で済むことも考えられます。

現状では下のようなシナリオが考えられます。

シナリオその1:英国が1) EUを離脱、2) EUとの関税同盟も離脱するが、3) 北アイルランドだけはEUとの関税同盟にとどまるシナリオ

現状ではこのシナリオの実現可能性が一番高いです。このシナリオでは北アイルランドとアイルランドの国境は現状のまま開放しておくことになります。このシナリオの良い点は北アイルランドとアイルランドの紛争が起こりにくい点です。

しかし英国国内にはこの方式に対する反発もあります。なぜなら実質的に北アイルランドに関税や貿易に関し特例を与えることを意味するからです。

さらに長期的な視点に立てばアイルランドと北アイルランドの関係が緊密化することで将来、両者は統一を目指すことも考えられます。イギリス国民の中には、それを快く思わない人もいるでしょう。さらにアイルランドが統一しイギリスを離れた場合、それを見たスコットランドにおいても英国離脱運動が高まる可能性があります。

シナリオその2: 英国が1) EUを離脱、2)EUとの関税同盟はキープするというシナリオ

このシナリオでは2020年以降も英国とEUの間で人、モノ、資本、サービスなどは自由に行き来することが出来ます。経済面に関する限り、このシナリオがベストです。

しかし、このシナリオでは英国がそもそもブレグジットに「Yes」の投票をした主な動機となったEUからの移民の流入には歯止めをかけることが出来ません。またEUに対して運営資金を納めなければいけないし、EU裁判所に従う必要があります。つまりブレグジット投票で英国民が願ったことがことごとく実現しないことになるのです。その理由からこのシナリオに対しては政治的な反対が強いと思われます。

さらに英国がEUとの関税同盟にとどまれば、第三国と独自に自由貿易協定を締結することも出来ません。

シナリオその3: 英国が1) EUを離脱、2) 自由貿易協定を締結するというシナリオ

このシナリオでは人の行き来は制限されるけれど、モノ、資本、サービスなどの大半は新しい協定の下で自由に行き来できます。

ただしアイルランドと北アイルランドの間では「壁」を建設するまでは及ばないものの、ハイテクを駆使し、人の行き来を制限する必要が生じます。

英国経済

英国経済はブレグジットという不確実性を孕んでいるものの概ね堅調に推移しています。

世界経済は過去7年間でもっとも強い成長をみせており、英国はそれに助けられています。

ブレグジットにまつわる国民投票以降、ポンド安(2015年のピークから-15%)の状態が続いています。
ポンド安は1) 英国の輸出産業にとってプラスに働く、2) 輸入品のインフレを誘発する、3)実質賃金の伸びを低くしている、などの影響をもたらしています。

その結果、英国企業は概ね高い収益性を示していますが、家計部門の消費は低調です。

英国の生産性の成長は前年比+0.2%程度で推移しており、これは過去最低水準に近いです。またユーロ圏、米国(ともに+0.65%程度)と比べても弱々しいです。この状態では大きな賃上げは期待薄だと思います。

イングランド銀行金融政策委員会の予想は以下の通りです。

単位=% 2018年1Q 2019年1Q 2020年1Q 2021年1Q
GDP 1.7 1.8 1.7 1.7
消費者物価指数 2.9 2.3 2.2 2.1
失業率 4.3 4.2 4.1 4.1
政策金利 0.5 0.8 1 1.2

まとめ

ブレグジットに関してはあと1年を切ったわけですが未だ大きな不確実性を残しています。英国経済は安定的に推移していますが家計部門の消費は低調であり、大きな賃上げも期待薄であることから消費主導で経済が大きく加速することは予想しにくいです。そのシナリオではポンドの上昇は限定的だと思います。