
原油価格急落
先週金曜日、WTI原油価格が-4.65%の急落を演じ$67.43まで下がりました。その引き金になったのはサウジアラビアとロシアが6月22日にウイーンで開催される石油輸出国機構(OPEC)の総会を前に現行の生産調整を緩め、増産する可能性について話し合いを始めたという報道があったからです。
需給バランス
現在のOPECの生産調整は2年前に合意され、グローバルで原油生産を2%減らす意図で始められました。
下は最近のグローバルでの原油の需給バランスを示すチャートです。
供給が需要を下回っていることが読み取れます。
2018年通年のグローバルでの原油の需要はOPECの予想では1日当り9885万バレル(前年比+165万バレル)と見込まれています。
2018年通年のグローバルでの原油の供給は1日当り9155万バレル(前年比+190万バレル)と見込まれています。このうちOPECの生産分は1日当り3193万バレル(前年比+18万バレル)です。
過剰在庫はほぼ解消
現在の経済協力開発機構(OECD)全体の原油在庫は28.29億バレルです。
2年前にOPECが生産調整の話し合いを始めたときの目標は「在庫水準を過去5年平均(黄色)まで下げる」というものでした。2018年(グレー)の線はそれに限りなく近づいています。つまり目標は、ほぼ達成できたということです。
イベントリスクに備える
つまり現在世界の原油市場は均衡を取り戻しており、2014年に原油価格が急落した当時のような需給関係の崩れは解消しているのです。
今後ベネズエラの原油生産が折からの同国の経済危機で急減するようなことがあれば、逆に原油価格はオーバーシュートしてしまうリスクもあります。ちなみにベネズエラは2016年を通じて平均215.4万バレル/日を生産していたのですが、最近、急に生産量が細っており4月は143.6万バレル/日でした。
今回、サウジアラビアが検討しているのは30~40万バレル程度の増産です。これはベネズエラの原油生産が一段と落ち込むことに対するリスクヘッジだと言えます。ただロシアは70~80万バレルの増産を示唆しており、サウジアラビアと対立していると言われています。
まとめ
先週、サウジアラビアとロシアが原油の増産に関する話し合いを始めたという報道があり、原油価格が急落しました。この話し合いは原油市場の需給バランスが当初のOPECの目標にほぼ到達したことを受けて開始されたものであり、原油価格のオーバーシュートを未然に防ぐための牽制だと捉える事が出来ます。原油価格が急落した2014年と現在の状況はかなり違います。現在、需給バランスはちょうどいいです。したがって原油がベアマーケット入りする心配は無いと思います。