
■OPEC総会
6月22日(金)、ウイーンで石油輸出国機構(OPEC)の総会が開催されました。
大方の予想通り表向きは100万バレル/日、実質的には60万バレル/日の増産が発表されました。
増産が発表されたにもかかわらず金曜日のWTI原油価格は+5.71%と大幅高し69.28ドルで引けています。
なぜ原油価格は急騰したのでしょうか?
■在庫
まず経済協力開発機構(OECD)諸国の原油在庫のチャートを見てください。今年はグレーの線です。
4月の在庫は28.11億バレルで、過去5年の平均(28.37バレル)より2600万バレル下回っています。
そもそも2016年にOPECが減産合意を打ち出した狙いは大幅に増えてしまった原油在庫を過去5年の平均値まで下げてくることにありました。従って4月の時点でこの目標は達成されたということです。
■計画より大きかった減産額
次に最近の減産額を見ると当初合意の180万バレル/日のカットを上回る、280万バレル/日近い減産が行われてきました。
その理由はベネズエラが折からの経済危機で原油生産が困難になり、どんどん生産高を落としているからです。
つまり今回の増産分を足しても生産高は2016年に生産調整が開始された当時の水準には一気には戻らないのです。
■需給バランス
下は最近のグローバルでの原油の需給バランスを示すチャートです。
2018年通年のグローバルでの原油の需要はOPECの予想では1日当り9885万バレル(前年比+165万バレル)と見込まれています。
今回増産が決められた関係で、供給は2018年第1四半期の実績8917万バレルより増えるものの、需要には到底追いつかないことがわかります。
つまり世界の原油の需要と供給はタイトなのです。
■シェール・オイルの出荷問題
西テキサスのパーミアン・ベイスンでは各社が競ってシェール・オイルを増産していますが、ここへきて大きな問題が発生しています。それは同地域のパイプラインのキャパシティが上限に達してしまったということです。
このためパーミアン・ベイスンの中心地であるテキサス州ミッドランドにおける原油価格と石油輸送施設のハブのあるオクラホマ州クッシングの原油価格(=WTI)を比べると下のチャートのようにミッドランドの方が大幅にディスカウントになっています。
これは出荷できない恐れのある将来の生産が、先渡し契約で叩き売られていることを示唆しています。
つまりパイプラインの増設が完成する2019年末までは西テキサスのシェール業者はむやみに増産できないのです。
■まとめ
OPECは実質60万バレル/日の増産を決定しました。しかし世界の原油の需給はタイトです。ベネズエラの原油生産が落ち込んでいる事、西テキサスのシェール・オイル生産がパイプラインの容量の関係で増産できないことなどを考慮すると原油市場の堅調はしばらく続くと思われます。