ITは運用の世界も変えている ミレニアル世代にとりETFが最も重要な投資対象になる理由

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急速にデジタル化する社会

AI(人工知能)や自動運転車に代表されるように我々の暮らしは急速にデジタル化しています。

調査会社IDCによると2010年に全世界に存在したデジタル・データの総量は1.227ゼタバイト(*)でした。それが2013年には5ゼタバイトに、そして2020年には45ゼタバイトに、さらに2025年には180ゼタバイトに増えると見込まれています。

資産運用の世界でもデジタル・テクノロジーが運用や投資手法を変革しつつあります。そこで今日はそれについて述べます。

 

ロボアドバイザー

皆さんはロボアドバイザーという言葉を聞いたことがありますか? ロボアドバイザーの「ロボ」はロボットを指し、「アドバイザー」は運用助言を指します。つまりロボットによる運用助言がロボアドバイザーというわけです。

実際にはロボアドバイザーは投資理論に即し、人間の感情を排し、受益者のニーズや相場の局面に応じて適切なアドバイスをコンピュータにより自動化し提供する手法を指します。

ロボアドバイザーの中には、あなたのポートフォリオを診断してくれるだけというサービスもある一方、「お任せ」で運用そのものをやってくれるところもあります。

 

ロボアドバイザーはETFを利用

さて、ロボアドバイザーは主にアセット・アロケーション(資産配分)に関する意思決定を人間の代りに実行してくれます。その際、ロボアドバイザーは主にETF(上場型投資信託)のようなインデックス投資の商品を利用します。

 

「手数料込み」から「別枠フィー」へ

ロボアドバイザーは「運用のIT化」を象徴するサービスですが、それ以外の伝統的な資産運用のビジネスも、いまどんどんインデックス・ファンドやETFにシフトしています。このトレンドを後押ししている要因に、運用業界に対する行政の指導があります。

これまでは受益者のポートフォリオを入れ替えする場合、運用を指図するものはそのポートフォリオの入れ替えで発生した売買手数料などでサービスの対価を受け取ることが主流でした。 

しかし行政は「もっと透明性を高めなさい」と指導しており具体的には「アドバイスのフィーは、別枠で請求しなさい」という流れになっているのです。つまり「明瞭会計」というわけです。

 

「別枠フィー」ビジネスの隆盛は、ETFの隆盛を意味する

こうした時代の流れを反映して、アメリカの運用資産の中で「別枠フィー」を取る契約になっている運用資産は2010年の段階で5兆ドルにまで増えています。2020年には「別枠フィー」契約の運用資産がさらに20兆ドルへ達すると見られています。(出典:チェルーリ・アソシエーツ)

「別枠フィー」型の運用では「手数料込み」ではないため、ポートフォリオを入れ替え、あるいは維持するコスト、つまり売買手数料や運用フィーは、極限までゼロに近いことが望ましいのです。

その点、コストの面でETFに勝る投資商品は、ほぼ無いと言えます。つまりETFの利用は今後ますます増えると思われます。

ETFの運用資産は現在の5兆ドルから2023年には12兆ドルへと増えると予想されます。これは年率+19%成長ということになります。(出典:ブラックロック)

 

ETFの「伸びしろ」について

さて、こんにちのETF5兆ドルという運用資産をもう少し細かく見ると、内訳は下の表のようになっています。

アセットクラス

ETF

市場規模

株式

4兆ドル

83兆ドル

債券

0.8兆ドル

96兆ドル

先物・スワップ

0.2兆ドル

25兆ドル

(出典:ブラックロック)

なるほどETFは近年素晴らしい成長を記録したわけですが、全体の市場規模から見れば、まだまだ拡大の余地が大きいことがわかると思います。

 

業界はIT化へと大きく舵を切っている

こうしたトレンドを見越し、運用業界はいまIT化へと大きく舵を切っています。たとえば業界のリーダー企業であるブラックロックは「アラジン」というITプラットフォームを発表しています。「アラジン」はトレーディングのみならずポートフォリオ管理ツール、リスク分析ツール、パフォーマンス分析ツール、報告書作成ツール、コンプライアンス・ツールなどを包括しています。

 

顧客の目線

さて、次に顧客の目線でトレンドを分析した例を紹介します。

調査会社コスキ・リサーチが20176月に実施したアンケート調査では個人投資家の運用資産の中に占めるETFの割合は5年前の16%から26.8%へと上昇しています。

アンケートの回答者のうち5人に2人は「将来、ETFをポートフォリオの中心に据える」と答えています。回答者の43%が「もう個別株への投資は止めて、ETFだけで行く」と言っています。

こうしたETFへの傾倒は、ミレニアル世代に顕著な傾向です。「自分の投資ポートフォリオはETFを主体としている」と回答したベビーブーマー世代(=高齢者)は3割しか居なかったのに対し、ミレニアル世代の56%が、そう回答しました。

つまり、今後、資産運用の担い手がベビーブーマーからミレニアル世代へと代わってゆくにつれて、今日述べてきたようなトレンドは一層強まる可能性があるということです。 

(*)=ゼタバイト(ZB)は1021乗。ちなみにギガバイト(GB)は109乗。