
■米とメキシコが貿易協定で合意
トランプ大統領は27日、米メキシコ貿易協定に署名すると発表しました。
投資家が注意しなければいけないのは貿易に関する取決めに関しては下院が権限を握っているという点です。
したがって如何にトランプ政権とメキシコ側が合意に達したと言えども米国の下院がこれを可決する必要があります。
議会が中間選挙までにこれを可決できるかどうかがみどころです。
■協定の主な内容
協定のおもな内容としては自動車が非課税扱いになるためには部品の75%が北米で生産されなければいけないことが合意されました。これまでの北米自由貿易協定(NAFTA)では62.5%でした。
つぎに自動車生産にあたりこのコンテンツの40~45%が時給16ドル以上の「高賃金労働者」によって生産されなくてはいけないことが規定されました。これにより自動車会社は米国に工場を維持することを強いられ、ないしはメキシコの労働者の賃金を引き上げることが必要になります。どちらの場合もアメリカ国外へアウトソースする動機を弱める効果があります。
■カナダとの交渉にも注目
NAFTAのもうひとつのパートナー、カナダとアメリカの話し合いは現在進行中です。カナダの代表はクリスティア・フリーランド外相です。いまワシントンDC入りしています。
アメリカとメキシコの交渉においてはトランプの娘婿ジャレッド・クシュナー氏とメキシコのビデガライ外相との間の個人的な友好関係が合意に至る過程で大いに役立ちました。
カナダとの交渉でそのような個人的なつながりが交渉を救う保証はありません。
■NAFTAとは真逆のねらい
NAFTAはアメリカ企業が競争力を維持するため、アウトソーシングを強化し、コストを下げることを主眼に締結されました。しかし今回の米メキシコ貿易協定はそれとは真逆のねらいで進められたと言えると思います。つまりなるべく製造業をアメリカ国内に踏みとどまらせることがねらいなのです。
■本当の敵は中国
「敵の敵は味方」という言葉がありますが米メキシコ貿易協定を締結することは今後米国が米中貿易戦争を有利に戦う上で必要なことです。
アメリカ企業がグローバル戦略を立案する際、まずメキシコを考え、それから中国を考えます。このことからもわかるように、アメリカ企業にとりメキシコという国は大事な「プランB」すなわち代替プランとなっているのです。
まずそれを固めることで中国との交渉を戦いやすくするという側面があることを忘れてはなりません。
■株式市場への影響
今回の米メキシコ貿易協定は多くのアメリカの製造業にとってはコスト増を意味すると思います。しかし悪いニュースは株価に織り込まれてしまっているので、「悪材料の出尽くし」と捉えられる可能性もあります。
ちなみにアメリカ企業の中で売上高に占めるメキシコならびにカナダ比率の高い企業をリストアップしておきます。
銘柄名 | コード | カナダ・メキシコ比率 |
アメリカン・アクスル&マニュファクチャリング | AXL | 53% |
カンザスシティ・サザン | KSU | 40% |
マグナ・インターナショナル | MGA | 32% |
コルゲート・パルモーリブ | CL | 30% |
モルソン・クウァーズ | TAP | 27% |
アグコ | AGCO | 24% |
クウァンタ・サービセズ | PWR | 17% |
フォード・モーター | F | 16% |
コストコ・ホールセール | COST | 16% |
リア | LEA | 14% |
フルアー | FLR | 11% |
ユニオン・パシフィック | UNP | 10% |
ゼネラル・モーターズ | GM | 10% |
ボルグ・ワーナー | BWA | 10% |