
1.米国株式を巡る環境は改善
米国株式を巡る1) 金利、2) 企業収益、3) 株式バリュエーションの環境は改善しています。そのことは米中貿易戦争、サウジアラビア情勢、米国の中間選挙などの目先の不透明要因にもかかわらず米国株式に対して積極的になれる条件が整ったことを意味します。< /p>
そこで今日はそれらを整理します。
2.長期金利
まず米国の長期金利ですが9月以降の騰勢に衰えが見え始めています。
10年債利回りが3.2%を超えてどんどん上昇するシナリオは明らかに株式にとって好まざる展開ですが、現在の3.2%以下の水準で金利が横這いになるのであればそれは株式に支援的な金利水準と言えます。
長期金利がこの水準で落ち着くだろうと予想されるひとつの根拠として、これまで長期金利と歩調を合わせて上昇してきた原油価格がここへきてザックリと調整していることを挙げることができます。
3.企業収益
米国は第3四半期決算発表シーズンに入っています。これまでにS&P500採用銘柄のうち17%が決算発表を終えています。一株当たり利益(EPS)が予想を上回った企業は80%を超えておりいつもよりポジティブ・サプライズが多くなっています。但し上振れ幅(+3.9%)は小さいです。一方売上高が予想を上回った企業は64%でした。
S&P500の今年と来年のコンセンサスEPS予想は良い感じで伸びています。
四半期EPSが前年同期と比べてどれだけ成長しているかを見ると下のようになります。
いま決算発表の真只中である第3四半期とその次の第4四半期に関してはいずれも成長率が底上げしています。言い換えれば第1四半期(+25.4%)、第2四半期(+25.3%)の成長率と殆ど遜色ない成長が見込まれているのです。
これだけ素晴らしく米国企業の業績が伸びているのに株式市場が弱気相場入りするというのは、やや説得力に欠ける主張だと思います。
これは先週決算を発表したメガバンクの経営者が口を揃えて言っていたことですが、現在の景気拡大局面で心配なのは景気拡大期間がすでに過去最長になっているという時間経過の面だけであり、普通好景気時に見られる1) 消費者の身の丈を超えた消費、2) 企業の無謀な借入れ、3) 資本市場におけるレバレッジを増やした強欲な投資、などの兆候は見られていません。
実際企業の貸付ポートフォリオを見ると焦げ付きは減っており、信用サイクル暗転に備えて引当金を取っていた分が過剰引当になってしまったのでそれらを一部削る動きがありました。
4.株式バリュエーション
向こう12ヵ月のS&P500指数のEPSに基づく株価収益率は15.9倍です。これは過去5年の平均値である16.3倍より低いです。
PERが低下した理由は1) コンセンサスEPS予想が増えた事、2) 先々週、米国の株式市場が下がったこと、の二つによります。
5.まとめ
ここへきて米国の長期金利の上昇はようやく小休止する兆候を見せています。これは株式にプラスです。企業業績は相変わらず絶好調です。景気の頂点で見られがちな消費者や企業による無謀な借入れも見られていません。その一方で株式バリュエーションは先々週の株価の調整で過去5年の平均よりむしろ安い水準まで下がってきました。それらのことを総合すると株式に対して積極的になれる要因が揃ったと思います。