このところの米国株式市場の下落をどう捉える?

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1.10月の安値を試すNY市場

 ニューヨーク株式市場は10月から下落が続いており、現在は10月末につけた直近の安値を試しにゆく展開となっています。

 そもそも今回の下げはなぜ起こったのでしょうか?

2.市中金利の上昇が相場下落の引き金に

 今回の下げは米中貿易戦争が原因だという声もありますし中東情勢や10月までの原油価格の高騰を指摘する向きもあります。
 しかしこれらの要因の中で最も重要なのは金利だと思います。
 10月に入って早々、米国10年債利回りが3.20%を超えました。この水準は過去に鬼門となった水準であり10年債利回りがこれを超えたあたりから(さすがに株式市場は行き過ぎでは?)という意見が多く聞かれるようになりました。
 つまり下げのキッカケになったのは市中金利の上昇なのです。

3.金融相場の起源

 ここで一歩さがり、今回の景気サイクルを振り返ってみれば、2008年に起きたリーマンショックの後の大不況が起点だと考えることが出来ます。
 当時米国連邦準備制度理事会(FRB)は緊急の措置としてアメリカの政策金利であるフェデラルファンズ・レートを実質的に「ゼロ」にしただけでなく国債や住宅抵当証券などをFRBが直接買い込む、いわゆる量的緩和政策を打ち出しました。
 このように中央銀行が経済を元気付けるために金融緩和し、実体経済や株式に代表される資産価格を支えることにより創り出される相場を金融相場と言います。今回の金融相場は201512月まで続きました。

4.業績相場へのバトンタッチ

 さて、米国の景気はようやく回復してきたので、201512月にFRBは利上げに転じました。この時点でマーケットは景気回復に伴う企業業績の伸長を手掛かりに買い進む、業績相場へと移行したと解釈できます。
 その後の米国企業の業績の伸びは安定していました。従って良い感じで業績相場へのバトンタッチが出来たと評価できると思います。

5.税制改革

 さて、201712月にはクリスマスの直前に議会が税制改革法案を可決しました。これにより法人税の税率が下がったことで企業利益がジャンプすることが確実になりました。さらに減税は景気刺激的なので好景気を背景とした業績の伸長も期待できるようになったのです。
 そのような理由から201712月を境として、ウォール街のアナリストの米国企業のコンセンサスEPS(一株当たり利益)はスルスルと上昇しはじめたのです。
 2018年を通じての株高は、このような業績の伸びを素直に買う展開が続いてきたと言えます。

6.業績相場は終焉?

 201712月以降、S&P500指数のコンセンサスEPSはずっと上昇し続けました。このように持続的にコンセンサス予想がズンズン上昇することは極めて珍しいです。しかし過去1年間全く危なげなく上昇を続けてきたコンセンサスEPSが、過去3週間は逆に下落に転じているのです。
 これは米中貿易戦争による不透明感に加えて賃金の上昇が企業の利益を圧迫していることなどによります。
 いずれにせよ業績相場が続くには金利上昇から来るマイナスを補って余りあるほど業績が伸びる必要があるわけで、その業績の推力が失われた今、金融相場から業績相場へと順調に進行してきたひとつの相場のサイクルが、かなり終盤に近付いてきたことを感じさせます。

7.債券利回りからの競争に株は勝てない?

 FRBの度重なる利上げにより米国2年債利回りは2.8%を超える水準にまでヒタヒタと上がってきています。

 これは何を意味するか? といえば「無リスク証券」と呼ばれることも多い米国財務省証券を買ってさえいれば、それなりのリターンが確保できるということです。
 今年は世界のありとあらゆる原資産が冴えない動きになっています。だから殆どの市場参加者は年初来まったく儲かってないか、下手をすればマイナスになっている人も多いです。そういうとき2年債を抱いておくだけで2.8%のリターンが得られるということは、たいへん魅力です。

 このことから最近では株を減らして米国の短期国債にお金を避難させる投資家が多いです。

8.FRBの動きに注目

 そこで注目されるのは次にFRBがどう動くか? ということです。大方の市場参加者は12月の連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBはもう1回利上げすると見ています。
 ただ今よりさらに相場が荒れ、ニューヨーク市場が下落するようであれば、FRBは利上げの手を止める可能性もあります。
 実際、9月のFOMCの記者会見でジェローム・パウエル議長は「資産価格が広範に下落したら利上げの手を止める」と公言していました。いまそのシナリオへ限りなく近づいていると見ることもできるのです。
 もしFRBが利上げの手を止めるということになると、その決定をどう市場参加者に伝えるか? というのは難しい問題になります。もちろん利上げの打ち止めは歓迎されると思いますが、その一方で「すわリセッションが来るのか?」と恐れおののく投資家も出ると予想されるからです。
 第二次世界大戦後、FRB13回の政策金利引上げ局面を経験してきました。その中で最長だったのは1960年代の利上げサイクルであり、これは実に6年間も続きました。
 今回の利上げサイクルは201512月からですのでまる3年経過しています。つまり過去で2番目に長い利上げ局面となっているのです。
 その意味では「そろそろ利上げも打ち止めか?」という観測が出てもおかしくないわけです。

9.利上げストップ=リセッションを意味しない

 さて、FRBが利上げをストップしたからといってそれが即、景気後退に直結するとは限りません。実際、1990年代にはFRBが利上げの手を止めた後も景気は持続し、ドットコム・ブームが続きました。

 だから今回も利上げストップ=リセッションという風に断定することはできないと思います。