
1.資産価格下落は景気後退の到来を示唆?
このところ米国株式市場や原油価格が下落しています。下は米国の原油の指標銘柄であるWTIのチャートです。
連日の容赦ない下落で「これはシェールの増産ということに加えて、景気後退による需要の減退を予期しているのではないか?」という声が上がっています。
2.12月の連邦公開市場委員会の予想
大方の予想では12月19日の今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備制度理事会(FRB)は0.25%の利上げを発表すると見込まれています。米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)は2.5%になる計算です。
フェデラルファンズはデリバティブ取引所、CMEに先物が上場されています。その先物の取引価格をもとに市場参加者がどのくらいの確率で利上げが行われるかを織り込んでいるか逆算することができます。それによれば現在は72.3%の確率でFFレートが2.5%になることが織り込まれています。これは比較的強いコンセンサスだと言えます。
3.2019年のFFレート予想はバラバラ
しかし市場参加者による2019年のFFレート予想は先物価格から見る限りかなりバラついています。いまのところ2019年で初回の利上げがあるのは2019年6月19日のFOMCであると先物価格は示唆しています。
その場合でもFFレートが2.75%になる確率は38.9%でしかなく、かろうじて2.50%の確率36.0%を上回っているに過ぎません。つまり「本当にそうなるかどうか、わからない」のです。さらに「2019年の利上げ回数は1回きりだろう」と市場は見ています。
4.「経済予想サマリー」とのかい離が大きくなっている
さて、前回、FOMCメンバー達が彼らのFFレート予想を示したのは9月26日に行われたFOMCの際公表された「経済予想サマリー」でした。つまりそれから2か月が経過しています。
その予想を見ると2019年末のFFレートの予想は3.1%になっています。仮に2018年12月19日のFOMCで0.25%の利上げが大方の予想通り実施され、政策金利が2.50%になったとしたら、そこからさらに0.6%FFレートが上るというのがこのチャートの示唆するところです。これは利上げ回数に直すと2.4回分ということになります。
しかし上に示したようにCME FedWatchでは「2019年は多分1回、6月19日に利上げがあるのみ」と言う風に市場参加者は織り込んでいるので、FRBの考え方と市場の考え方には大きな齟齬(そご)があるのです。
言い直せば、FRBはこのところのマーケットの動きについてゆくことが出来てないというわけです。
FRBが後手に回っているのだとしたら、慌ててそれが軌道修正される際に市場が荒れることも予想されます。
今後のFRBからのコミュニケーションに注目したいと思います。