
1.連邦公開市場委員会
昨日、12月18・19日の二日間に渡って開催されていた連邦公開市場委員会(FOMC)が閉会しました。
米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは予想通り0.25%利上げされ、2.5%になりました。
サプライズとしては声明文の中から「緩やかな利上げ(gradual increases)を続ける」という表現が削除されなかったという点です。
その代りこの部分は「もう少し緩やかな利上げ(some gradual increases)を続ける」という表現に改変されました。
言い直せば今回の利上げで「打ち止め」ではなかったということです。
全体として声明文のトーンはタカ派でした。
2.経済予想サマリー
経済予想サマリーはFOMCメンバーが各自の予想を提出し、それを集計したものです。ですからこれは投票に付されたものではありませんし、二日間のFOMCでの討議の後で、議長がそれぞれのメンバーに予想の修正を迫るというような性質のものではありません。
したがって経済予想サマリーの語りかけてくるメッセージとFOMC声明文のトーンがややズレるということは珍しくありません。
今回の経済予想サマリーでは、まず2019年末のフェデラルファンズ・レートの予想がこれまでの3.1%から2.9%に下がりました。
次に2019年のGDP予想も少し下がりました。
PCEコア・インフレの予想も下がっています。
つまり経済予想サマリーは、最近の一部の経済指標の弱さや株式市場の下落を反映する格好で、下方修正されているのです。
3.記者会見
今回の記者会見では記者団から「最近株式市場が下がっているのになぜFRBはスタンスを変更しないのか?」という質問が繰り返し出されました。
それに対してジェローム・パウエル議長は「いま蔓延しているのは神経質なムードだ。しかしそれはあくまでもムードに過ぎない」として株式市場の下落を、金利政策を考える上で参考にしない姿勢を打ち出しました。
別の記者は「FRBのバランスシートの圧縮が金詰り感に影響しているのでは?」と質問しましたが、それに対しパウエル議長は「利回り曲線(イールドカーブ)の短期の方はFRBのバランスシートの圧縮の影響を受けないはずだ」とし、言下にその悪影響を否定しました。
さらに今後の経済指標がもし悪化した場合、FRBのバランスシート圧縮をストップするのか? という質問に対しては「直近のデータに応じて金利政策のさじ加減を調整する際には、フェデラルファンズ・レートの上げ下げで対応したほうがいい。だからFRBのバランスシートの圧縮は粛々と行う」という返答をしました。
これら一連のやりとりからFRBはどんなことがあってもバランスシートの圧縮は止めないという姿勢がハッキリ打ち出されたと思います。これはタカ派的です。
最後に11月28日に「エコノミック・クラブ・オブ・ニューヨーク」でジェローム・パウエル議長がスピーチした際、米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートが中立的と考えられる水準より「ちょっと下(just below)」のところまで来ているとコメントし「利上げの打ち止め」をほのめかしたにもかかわらず、それをしなかった理由を、記者が議長に問い詰める場面がありました。
4.まとめ
今回のFOMCは全体としてタカ派的でした。特に株式市場の下げやFRBのバランスシート圧縮が金詰り感を招いている事に対するパウエル議長の答弁は「とりつくしまもない」と聞くものに感じさせる冷淡なものでした。記者会見が進むにつれて株価が下がったのはそのような理由からだと思います。