FRBの量的引締め政策早期切り上げに関して

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■量的引締め政策とは?

先週、「FRBが量的引締め政策を予想より早く切り上げることを検討している」という報道がありました。今日はそのことについて説明します。

量的引締め政策はQTQuantitative Tightening)政策と呼ばれることもあります。
これは量的緩和政策(QE: Quantitative Easing)と対比される概念であり、QE政策の「後始末」としての政策だと考えることも出来ます。

 

■量的緩和政策の起源

リーマンショックが起きた時、連邦準備制度理事会(FRB)は慌てて政策金利を実質ゼロにしました。
それでもクレジット・クランチが収まらなかったので、もう一段踏み込んだ金融緩和を実施する意図で財務省証券や住宅抵当証券を直接市場から購入し、その代わりに現金を市中にばらまいたのです。これが量的緩和政策です。

その結果としてFRBのバランスシートは2008年の9千億ドル前後から、ピークには4.5兆ドルまで膨張しました。
上のチャートから分かるとおり201710月以降、そのバランスシートを圧縮することが始まりました。
現在は毎月500億ドルのペースで圧縮が行われています。この圧縮行為こそが量的引締め政策なのです。

さて、実際にはどのようにして圧縮が行われているのか? ということですが、FRBが在庫にしている債券の平均のデュレーションは7年前後であり、手持ちの債券のうち一部は償還が来てキャッシュに変わるわけです。
以前はそのようにして現金化されてしまった分に関してはもう一度債券を買い直すことでFRBのバランスシートを4.5兆ドルに固定していたのですが、現在は徐々に買い直しを止めることで在庫を減らしているというわけです。

 

■トランプ大統領との確執

これはFRBが買い上げる分が減るという意味で需給関係の悪化要因と言えます。
トランプ大統領はこの観点から「FRBは実質的な金融引締めを行っている」とパウエル議長を攻撃しました。
これに対し、パウエル議長は「QT政策に変更は無い」という立場を貫いてきました。
従って今回、QT政策を早い時期で切り上げるということになるとそれは新しい展開と言えます。

 

■新しい「着地点」として3.5兆ドルが浮上

当初の計画では5年くらいかけてFRBの総資産を1.5~3.0兆ドル付近に持って行くという考えでした。しかし現在はそれをずっと早く切り上げるべきだという議論が出ています。

ハト派で知られるミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は近く最終的な「着地点」を明示することが出来るかもしれないと述べています。
そして具体的な「着地点」として3.5兆ドルという数字が取り沙汰されているようです。すると現在の総資産が4.04兆ドルなので、現在の毎月500億ドルの減額というペースをこのまま貫いたとすれば今年の11月頃に「着地点」に到達することが考えられます。

 

■FRBの政策ツールの自由度に関して

なおリーマンショック後の新しい金融行政秩序下では、FRBQE政策によって市場にキャッシュを供給し、銀行の手許に残るキャッシュが増えた分、それを「準備金(リザーブ)」というカタチでFRBに預けさせるということを行っています。そしてそのような預金に対し、FRBはいくばくかの金利を商業銀行に対して支払っているわけです。
つまりキャッシュはそのようなカタチでリサイクルされており、これはある意味、FRBにとって「もうひとつの政策ツール」の様相を呈しているわけです。

それはFRBにとって政策ツールの多様化という面ではメリットがあります。
量的引締め政策の早期切り上げは、従って金融緩和を目指したものでは無く、FRBの政策ツールの自由度の確保という意味合いがあることを理解すべきだと思います。