ブレグジット「重要な投票」の行方

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■ 山場を迎えるブレグジット

英国がEUを脱退するいわゆるブレグジットの期限は329日ですが、実質的な山場は絵英国議会が「重要な投票(Meaningful Vote)」を行う312日(火)です。

思い出して頂ければ英国がEUを脱退するにあたり「関税をどうする?」、「国境をどうする?」というようなことを規定した合意書をテリーザ・メイ首相が英国に持ち帰り、それを議会の投票にかけたのが1月でした。

しかしこの議会の票決では圧倒的反対でアッサリと合意書が否決されてしまいました。

それ以降、メイ首相は合意書の内容を一部変更することでなんとか議会の賛成をとりつけようとしています。

 

■ 合意書のどこがいけない?

英国の代議士たちが懸念を抱いているのはバックストップ条項と呼ばれる規定です。バックストップ条項は、アイルランドと北アイルランドの間の国境に関しては、もし新たな協定の合意が形成出来なかった場合、当面、これまで通り国境をOPENにしておき、検問所とかを設けないことにしましょうということが規定されています。

アイルランドと北アイルランドは昔から紛争が絶えませんでした。ひとつの理由はアイルファンドはカトリック、英国の一部である北アイルランドはプロテスタントだからです。特に1970年代以降はIRAとよばれる過激派によるテロとか衝突が繰り返されました。

英国がEUに加盟し、EU域内で「ヒト、モノ、カネ」の行き来が自由となり、国境が撤廃されてからはイザコザはすっかり起こらなくなりました。

折角、アイルランドと北アイルランドが良い感じで仲良くやっているのに、国境とか検問所とかを設置するとまた雰囲気が険悪になることを両国は恐れているのです。

だからバックストップ条項で「これまで通り、スースーの素通りにしましょう!」ということ自体はEU側も英国側も望んでいる事です。

しかしこのバックストップ条項には、いわゆる「出口(Exit)規定」が無く、なし崩しのままに英国が関税同盟に残留することを意味するかもしれないのです。それでは英国が入国管理のイニシアチブを執ることは出来ませんし、第三国と関税に関する二国間協定を結ぶことも出来ません。

だからバックストップ条項に出口規定を設けてください!というのが英国側の要求なのです。

 

■ 土壇場の交渉は難航

このリクエストを携えて、英国のジェフリー・コックス法務長官がいまブリュッセルを訪れています。しかしジェフリー・コックスの高慢な態度がEU側から不評を買っており、EU側は「どこまで譲歩させる気だ?」と態度を硬化させています。

もうひとつEU側が態度を硬化させている理由として(もし英国が合意書の改訂に成功しなかった場合、とりあえずブレグジットの期日を延期する決議をするだろう)という読みがあるからです。言い換えれば今、英国からせかされて不本意な譲歩をするメリットはEU側には無いということです。

 

■ 週末から来週火曜日にかけてのシナリオ

ジェフリー・コックスは今週の日曜日か、最悪の場合月曜日まで粘ってEUから譲歩を引き出そうとすると思われます。もし譲歩を引き出すことが出来、それを急いで英国に持ち帰り、火曜日の「重要な投票」にかけてそれが可決されれば、その合意書にもとづき、秩序ある離脱へと進んでゆきます。そして329日にEUからサヨナラということになるのです。

しかし譲歩を引き出せない場合、ないしは譲歩を引き出したけれど英国議会で票決に付したらやっぱり否決されてしまった場合、英国議会はブレグジットそのものを延期するべきか?ということに関し採決することになります。そこで延期に賛成ということになればEUに「ブレグジットを遅らせたいのですが、いいですか?」という風にお伺いを立てることになります。

これは英国を除いたEU27か国全部がOKする必要があります。たぶんEUはそこまで意地悪をしないと思うので、英国の延期の嘆願を受け入れると思われます。

メイ首相は30日から60日程度の短い延長を主張してきましたが、この際、180日くらいの延長をしたほうがいいという意見もあります。その場合、もういちどブレグジットの是非を国民投票で直接英国民に訊き直すという可能性も未だ残っています。

 

■ ポンドについて

上記のように今週末から来週火曜日にかけては緊迫した展開になると思われるのでポンドのボラティリティーは上昇する可能性があります。

英国の事業会社や機関投資家は329日のブレグジットに備えてポンドのダウンサイドリスクをヘッジしています。もし180日とかの長い延長が決まった場合「とりあえず当座はヘッジの必要はもうない」という判断からヘッジをはずす動きが出る可能性があります。その場合はポンドに買い圧力が生じると言われています。

英国の経済はブレグジットの不透明感にもかかわらず思いのほか腰の強さを見せてきました。ただ足元の景気の強さの一因はブレグジットに備えメーカーや小売業者が在庫を積極的に取った為だとも言われています。もしブレグジットが延期された場合、その過剰在庫を取り崩す間、しばらく新規の買付けが鈍る可能性もあります。それは見かけ上、英国の景気が弱くなったような印象を与えるかもしれません。その場合、意に反してポンドが軟化するというシナリオもありうると思います。