
■ 非農業部門雇用者数
6月7日(金)に発表された非農業部門雇用者数は予想18万人に対し7.5万人にとどまりました。
加えて3月と4月の数字はそれぞれ3.6万人と3.9万人下方修正されました。
2019年に入ってからの非農業部門雇用者数は毎月16.4万人のペースで拡大しています。これは2018年の平均である22.3万人より明らかに減速しています。
今回の発表で目に付いたのは建設セクターの雇用が4千人の伸びにとどまった点です。いまは夏の住宅建設シーズンであり、本来であればもう少し数字が伸びても良いはずです。
製造業、鉱業などの景気敏感なセクターの雇用もいまひとつでした。
これらのことは現在の景気拡大のサイクルがかなり最終局面に入っていることを示唆しています。
■ 平均時給
一方、平均時給は6¢の上昇でした。
つまり賃金は上昇しているけれど、その上昇圧力は余り強くないということです。
■ 今後の政策金利への影響
今回の非農業部門雇用者数の数字は明らかに弱い数字でした。市場参加者は年内に3回の利下げを織り込んでいます。
最初の利下げは7月31日の連邦公開市場委員会(FOMC)になると予想する向きが多いです。その後、9月18日のFOMC、12月11日のFOMCでも相次いで利下げが行われるというわけです。
なお、上に書いたシナリオは連邦準備制度理事会(FRB)が毎回0.25%刻みにフェデラルファンズ・レートを引き下げるシナリオを想定していますが、普通利下げ局面では0.50%刻みになることが多いです。言い換えれば利下げの時の方がドラマチックな政策金利の変更が行われやすいということです。
FRBは米国の景気がリセッションに入るのを防ぐことが出来るのでしょうか?
直近の2回の利下げ局面では、それは出来ませんでした。どちらのケースも経済はハードランディング(急激な景気後退)を経験しました。
先週の非農業部門雇用者数の発表を受けて、ウォール街の関心は「リセッションが来るのか?」から「リセッションはもう避けられない。その場合、ソフトランディングになるのか、それともハードランディングになるのか?」という問題に移りつつあります。
■ 貿易交渉関連のニュースは好転
週末にアメリカがメキシコとの貿易交渉に合意したという報道がありました。これで6月10日から導入される予定だったメキシコ製品への5%の関税はキャンセルされました。
さらに6月末の日本で行われるG20でトランプ習近平会談が行われることが決まりました。
これらはマーケットにとって良いニュースです。
このため今週のマーケットは高く始まる可能性が高いです。
その反面、貿易交渉に大きな進展があり、株価が戻せば、FRBが利下げしなければいけない必要性は大幅に後退します。
その辺りのバランスに注意しながらトレードを進めてゆきたいと思います。