
■党首選の結果
昨日、英国の保守党の党首選が行われ、ボリス・ジョンソンが9.2万票、ジェレミー・ハントが4.7万票を獲得、次期首相にはボリス・ジョンソンが選ばれました。
■ジョンソンの経歴
ボリス・ジョンソンは元『デイリー・テレグラフ』のEU特派員です。彼は1989年から1994年までブリュッセルに詰め、反EUの論陣を張りました。
その後2001年から庶民院議員を二期務め、2008年にロンドン市長になりました。
2016年、英国のEU離脱を巡る国民投票の際、ジョンソンは英国のEU離脱を声高に主張しました。これが反響を呼び離脱派が勝利しました。
■英国経済
英国のGDPは国民投票の前、前期比+0.7%で成長していたのですが国民投票後+0.4%に落ちました。
最近では2018年12月から2019年2月までの3か月間で英国のGDPは+0.3%成長したと予想されています。つまり今もペースは落ちているわけです。
離脱派が国民投票で勝利して以来、英国企業の先行投資意欲は低いです。
家計部門に目を転じると2018年の支出は+1.7%でした。これはその前の5年間の平均である+2.3%と比べるとやや弱いです。
インフレ率は限りなく2%に近い水準で推移しています。
英国のインフレ率はポンド相場の影響を受けやすいです。すなわちポンドが下落している局面ではインフレが加速しやすいです。2016年以降インフレが加速した原因はブレグジットの投票後、ポンドが下落したことによります。
現在、英国のインフレ率はちょうど良い水準の2%付近にあります。しかしこのところのガソリン価格の下落で今後インフレ率は2%を割り込むと予想されます。
一方、賃金はインフレ率より速いペースで上昇しています。2019年2月の賃金成長率は前年比+3.4%でした。これは近年では最も高い成長率です。しかしリーマンショック前と比べると賃金の伸び率は弱々しいと言えます。
賃金の伸びは歓迎すべきことですが、それが強すぎると今度はインフレ懸念が頭をもたげてきます。
全体として英国経済はなるべく早くブレグジットを巡る不透明感から脱却する必要に駆られえていると言えるでしょう。
■今後の日程
ボリス・ジョンソンは「10月31日までに必ず英国はEUを離脱する」と約束しています。
テリーザ・メイ前首相は英議会とEUとの間の板挟みにあい、何も決まらない膠着状態に陥りました。
今回、ジョンソンが首相になることで新しいモメンタムが生まれることが期待されています。
その反面、EUからすれば、英国の首相が変わったからと言って基本的には何も変わっていないわけで、今後、ブレグジットの条件の面で新たな譲歩をする可能性は低いです。
場合によってはEUとの間で合意が形成されないまま英国が無理矢理EUを離脱する、いわゆるハード・ブレグジットのシナリオも覚悟する必要があるでしょう。