パウエル議長、両院合同経済委員会の報告で現状維持を確認

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■両院合同経済委員会

11月13日(水)、ジェローム・パウエルFRB議長が両院合同経済委員会でアメリカ経済の現況に関し報告を行いました。
「現在の金利政策は当分変更しない」というのがその基本メッセージでした。
連邦準備制度理事会は10月30日の政策金利会合で米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートを0.25%引き下げ、1.75%としました。それと同時に、今後は当分様子見に徹し、政策金利は動かさない考えを表明しました。そのスタンスを堅持するというわけです。

■経済指標に異常なし

この利下げの後に発表された経済指標にも特に異常は見られていません。
例えばISM製造業景況指数は若干改善の48.3でした。

同様に非農業部門雇用者数もゼネラル・モーターズのストライキがあったにもかかわらず12.8万人という予想を上回る数字でした。

パウエル議長は事前に用意された原稿の中で「雇用の成長ペースは、やや鈍化したもののしっかりしている」と評しています。
次にFRBのもう一つの使命である物価の安定に関しては「目標としている2%より少し下の水準で推移している」としています。
今後の見通しに関しても「景気拡大は持続できる」と自信のほどを披露しています。

■市場の動き

FRBの「利下げ打ち止め宣言」が出て以来、市場参加者は米国、ならびに世界の景気の先行きに関し楽観的になっています。
一例として米国10年債利回りはFOMC直後の1.69%から現在は1.88%まで上昇しています。
投資家は(景気は強くなるぞ!)と感じたとき長期債を売ります。その際、利回りは逆に上昇するわけです。従ってここへきて10年債利回りが上昇したことは、投資家が景気の先行きに関して自信を持っていることを示唆しています。
同じ期間、ドイツの10年債利回りは-0.40%から-0.30%へと上昇しています。日本の10年債利回りも-0.14%から-0.05%へと上昇を見ました。
つまり長期金利の上昇は世界的に起こっていることであり世界の投資家が景気の先行きに関し楽観的になっているということです。

■景気拡大は長期的に持続可能?

リーマンショック後に始まった今回の景気拡大サイクルは10年目に突入しており過去最長となっています。普通、好景気は永遠には続かないので(どこかで景気後退が来てもおかしくは無い)と多くの投資家が身構えています。
その反面、好景気が10年続いたから、もうオシマイにならないといけないというきまりはありません。(今か? 今か?)とその終焉に対し身構えていても、ぜんぜん終わりが来ないシナリオも無いとは言い切れないのです。
事実、1年前の今頃と比べると(なんとか景気拡大を維持して行けそうだ)という信頼のレベルは逆に上がった観があります。
その理由は3回の予防的利下げを経て政策金利の水準が下方にリセットされ、余裕が生まれた事、そしてインフレ面では2%付近の、理想の展開が続いているということによります。
さらに長期に渡り低金利を維持したときに起こりがちな資産価格の行過ぎ、つまりバブル的兆候も殆ど感じられません。

■慢心も少しある

その反面、米中貿易交渉に関しては、やや楽観論が行き過ぎている観もあります。
来年は大統領選挙の年です。選挙戦の過程で有権者におもねる必要から中国に対して厳しい態度を見せる必要があります。

■まとめ

パウエル議長の議会証言では「当分現状維持」が再確認されました。経済指標の面でも異変はありません。米国経済は過去最長の景気拡大を更新中です。それが、今後もしばらく続くというシナリオが濃厚になり始めています。ただ投資家がやや楽観的になってきていることも事実です。強気のスタンスを維持しつつ、慢心には気をつけたいと思います。