悪いISM製造業景況指数と地政学リスクで米長期金利は低下、米国株式はまずまずのスタート

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■新年のニュース

新年に二つのニュースが出ました。
ひとつは12月の米国ISM製造業景況指数の数字が悪化したというものです。予想49.0に対し結果は47.2でした。

もうひとつは在バグダッド米国大使館に暴徒が殺到し、これに危険を感じた米国は裏で糸を操っているイスラム革命防衛隊クッズフォースの司令官をロケット攻撃で殺したというものです。

これら二つのニュースで投資家はリスクオフの態度を取りました。その結果、安全資産である円が急伸、米国債が買われたので10年債利回りは1.83%へ低下、さらに「有事の金」ということでゴールドに買いが集まりました。

市場のセンチメントがリスクオフに振れたことで株式市場の過熱感は払しょくされました。

■地政学リスクで景気後退観測が出ているが…

次に政策金利に関してですが、上に述べた一連の出来事で市場参加者は再び「今年もフェデラルファンズ・レートが利下げされる」ということを織り込み始めています。利下げは1回、利下げ幅は0.25%、タイミングとしては今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)である12月16日が見込まれています。

しかし私の考えではISM製造業景況指数の低迷はむしろボトムに近く、そのうち反発すると予想します。その理由はISM製造業景況指数の細目を見ると顧客在庫が急激に絞り込まれており、これは再び在庫の積み増しが起こる前兆だからです。

別の言い方をすれば新年以降に台頭してきた景気に対する悲観的な意見は経済の実情を正しく反映していません。実際には米国の景気はそれほど悪くありません。

従って連邦準備制度理事会は去年後半に打ち出した「とうぶん政策金利は動かさない」というスタンスを堅持すると考えて良いでしょう。

■1月の最初の5立会日が重要

これを書いている1月7日の時点で年初から4立会日を消化し、S&P500指数は年初来+0.20%、ナスダック総合指数は+1.07%、ダウ工業株価平均指数は+0.16%です。つまりナスダック総合指数を除けば、かろうじてプラス圏だということです。

ウォール街には「1月インジケーター」と呼ばれるジンクスがあります。それによると過去70年間で1月の最初の5立会日が通算してプラスで終わった年は44回あり、そのうち36回は1年を通じてプラスで終わりました。言い直せば81.8%の確率でその年の相場が高くなったというわけです。

そのくらい1月の出だしは重要なのです。従って1月8日の立ち合いで米主要三指数がプラスを維持できるかどうかに注目したいと思います。

■大統領選挙の年と株式市場

加えて今年は大統領選挙の年です。普通、米国の経済が良く、株式市場も堅調な場合、現職の大統領が有利に選挙戦を進めます。すると今は米国の景気が良く、株式市場も新値圏にあるわけですから順当に行けばトランプ大統領が有利ということになります。

ただ1・2月の株式市場が大きく崩れるシナリオでは、それは現職大統領が苦戦することの前兆であると言われています。

その意味でも1月に株式市場が良いスタートを切ることが重要なのです。

■来週以降のみどころ

さて、米国では来週から2019年第4四半期の決算発表シーズンになります。銀行株がまず続々と決算を発表する予定です。

次に1月15日前後に米国と中国の代表が米中貿易交渉第1ラウンド合意に署名すると言われています。

■まとめ

悪いISM製造業景況指数のニュースと地政学リスクの台頭で米国株式市場の過熱感は取れました。1月最初の5立会日がプラスであればその年の株式市場が高いという、いわゆる「1月インジケーター」に注目したいと思います。