
■米中貿易協議第1ラウンド合意に両国が署名
2020年1月15日(水)ワシントンDCでトランプ大統領と劉鶴副首相が米中貿易協議第1ラウンド合意書に署名しました。
これまで両国は対立をエスカレートさせる一方であり、妥協らしい妥協はありませんでした。従って今回、両国が初めてお互いに譲歩したことは大いに投資家を安堵させるニュースです。
第1ラウンド合意に達したこと自体は既にクリスマスの前に報道されていたので、今回の調印式は古いニュースの確認以上の意味はありません。
しかしこれまで何度も肩すかしを受けて来たので、投資家としてはちゃんと調印式を経て合意書が成立したことでやっと安心できると思います。
■合意のあらまし
今回の合意ではまずアメリカが2019年12月15日から中国で作られた消費財がアメリカに輸入された際、課す予定だった関税をやめにしました。
それに加え2019年9月から既に始まっている、1200億ドル相当の中国からの中間財などの輸入品に対する15%の関税を、半分の7.5%に軽減することが決まりました。
その代わり、向こう2年間に渡り、中国は合計で2000億ドル相当の米国製品の購入を約束しました。
その内訳は工業品(2020年度が329億ドル、2021年度が448億ドル)、エネルギー(2020年度が185億ドル、2021年度が339億ドル)、サービス(2020年度が128億ドル、2021年度が251億ドル)、農産物(2020年度が125億ドル、2021年度が195億ドル)などとなっています。
今回の合意書は90ページを超えるものですが、そのうち2ページはテクノロジーのノウハウの強制移転に関し割かれており、「双方とも技術移転を強要する、あるいはプレッシャーをかけることは出来ないことに合意する」という一文が挿入されました。また個別企業に対して免許を交付するための条件として特定の技術を使用することを義務付けることを禁止しました。
これは一歩踏み込んだ合意だと評価できる反面、米国が中国の法律の改変を迫るような根本的な改革ではないため、不十分だと考える関係者もいます。
知財の保護に関しても秘密のノウハウを故意に盗み出すことに対し中国政府は刑事追及することを合意しました。
これらの約束が実際に遵守されるかどうかに関しては両国の協議によって協議され、もし違反していると片方が考えた場合は関税による報復をしてよいことが盛り込まれました。
■株式市場への影響
さて、今回の合意書への署名の株式市場へのインパクトですが、すでに合意したというニュースは株価に織り込まれているため、良いニュースをもう一度織り込み直す可能性は低いです。
むしろ「理想買い、現実売り」で一旦は利食いが先行するシナリオも覚悟すべきだと思います。
次の本格的な貿易交渉はたぶん大統領選挙の後になると思います。するとしばらくの間、貿易面でのニュースは株価に影響を与える材料としては後退すると思われます。
折から米国メキシコカナダ貿易協定(USMCA)も来週、米国上院の票決が行われ、可決される見通しとなっています。これにトランプ大統領が署名すればこちらの問題も片付くわけです。
S&P500指数は年初から+1.8%上昇しており上げピッチは急過ぎると言えます。
現在は極端に強気の相場観が支配しており無差別な買い方が蔓延しています。
ウォール街の格言に「相場は不安の壁を駆け上る」というのがありますが、今のように不安材料が消えてしまったマーケットというのは逆に怖いです。
今年1年を通じてみると米国株に対しては今まで通り強気で良いと思いますが、目先はスピード調整が欲しいところです。