
■アップルの利益警告
2月17日(月)、アメリカはプレジデンツ・デーの休日だったのですが午後にアップル(ティッカーシンボル:AAPL)が利益警告しました。
そこでは「1月28日に示した第2四半期(3月期)の売上高ガイダンスを達成できそうもない」ということが発表されました。
■先の決算発表で議論されたこと
ここでもう一度第2四半期の売上高ガイダンスを振り返ると、1月28日の時点でのコンセンサス予想623億ドルに対し630~670億ドルのガイダンスが示されていました。つまりその時点では楽観的だったのです。
投資家の多くはアップルのこの強気のガイダンスに勇気づけられ(新型コロナウイルスの問題は限定的だな)という印象を持ちました。それだけに楽観論の根拠となっていたアップルの言葉が翻されたことはショックでした。
■工場再開の立ち上がりの遅延
アップルが今回の利益警告に踏み切った直接のキッカケは春節のバケーションが新型コロナウイルスで一週間延長された後、組み立てに携わる従業員が工場に戻って来るのが遅れているからです。
一部の部品は供給が途絶えています。それが今後の組み立て・出荷計画に影響を与え、グローバルでの売り上げに影を落とすことがほぼ確実になったというわけです。
加えて中国国内のアップルストアは新型コロナウイルスで閉店しており、パートナー企業のストアの多くも閉まっています。つまり製品の供給サイドと需要サイドの両方で変調が起きているのです。
なお中国以外では需要動向に異変は見られないそうです。
■アップル以外の企業は何と言っている?
折からウォール街では2019年第4四半期決算発表がそろそろ終わりに近づいているのですが、これまでに決算発表で新型コロナウイルスによる業績見通し暗転を訴えた企業は意外なほど少なかったです。
先週までにS&P500採用企業が実施した364回の決算カンファレンスコールのうち38%に相当する138社のみが新型コロナウイルスに言及しました。そのうち34社のみが「新型コロナウイルスのせいでガイダンスを引き下げる」とコメントしたにとどまりました。
ガイダンスを下げた主な企業は代表的なところではスターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)、アライン・テクノロジー(ティッカーシンボル:ALGN)、クゥオルボ(ティッカーシンボル:QRVO)、ウォルト・ディズニー(ティッカーシンボル:DIS)、KLA(ティッカーシンボル:KLAC)、クアルコム(ティッカーシンボル:QCOM)、タペストリー(ティッカーシンボル:TPR)、アプライド・マテリアルズ(ティッカーシンボル:AMAT)、MGMリゾーツ(ティッカーシンボル:MGM)、エヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)などです。
今回、アップルが利益警告したことで今後他の企業も利益警告を行うところが出る可能性があります。
■サプライチェーンに占める湖北省の重要度
武漢はニューヨークのメトロエリアに匹敵する人口を誇っています。そんな大きな都市がロックダウンされ、人やモノの動きが制限されているのでこれは影響をあたえずにはいられません。幸い、ハイテク製品・部品の生産地として湖北省は重要ではなく、わずかに光ファイバー部品や液晶関係部品の工場が所在している程度です。
しかし湖北省に近接する地域はハイテクの生産拠点が多いです。また武漢は交通の要所であり、それを迂回しなければいけないとなるとロジスティクスに影響が出ます。
■中国の経済活動全般
さて春節以降の中国の経済活動全般についてですが、石炭消費、不動産販売件数、交通渋滞指数などのデータを見るとかなり低迷しています。このことから今後中国経済はかなり減速することが予想されますし中国と貿易を通じて密接に関係している韓国、日本、東南アジア諸国、オーストラリア、ブラジル、ドイツなどの経済も悪影響を受けると考えるのが自然です。
言い直せば米国以外に安全な投資先は余り無いということです。
■投資戦略
このことから当面は米国をオーバーウエイトし、他のマーケットをアンダーウエイトする投資戦略が良いと思います。米国の中では小型急成長株やバイオ株のように海外比率が低い株が良いでしょう。