
■新規失業保険申請件数
4月9日(木)に発表された新規失業保険申請件数は660.6万件と予想の525万件より悪かったです。
なお先週の数字は664.8万件から686.7万件へと修正されています。過去三週間で新規失業保険を申請した人の数は1680万人で米国の就業人口1.62億人の10.37%に相当します。
余りにも新規失業保険申請が集中したために未だ処理できていない申請書が残っていると言われていますので来週も悪い数字が続くと考えるべきでしょう。
失業保険継続受給者数は745.5万人でした。
■連邦準備制度理事会がこれまでに発表した支援策の強化・追加を発表
この悪い新規失業保険申請件数の発表にタイミングを合わせる格好で連邦準備制度理事会(FRB)が家計、企業、州政府、地方政府を支援する2.3兆ドルの追加景気支援策を発表しました。これは先に発表された一連のFRBのプログラムを強化、拡大する目的で行われます。
まず賃金保護プログラム流動性ファシリティ(PPPLF: Paycheck Protection Program Liquidity Facility)を通じて既に発表されている銀行のPPP(Paycheck Protection Program)融資を額面金額にて買い上げます。
つぎに地方商店街拡大貸付ファシリティ(MSELF: Main Street Expanded Loan Facility)を通じて6千億ドルのローンを買い上げます。その際、先に発表された2兆ドルの景気刺激策(CARES Act)により供給される資金のうち750億ドルをエクイティー資本として充当します。買い取りの対象になるのは4年物ターム・ローンで、初年度は元本の償却と利払いが免除となります。
さらに地方商店街新規貸付ファシリティ(MSNLF: Main Street New Loan Facility)を通じて従業員1万人以下、売上高25億ドル以下の企業に対し新規の融資を行います。
既に発表されている新発社債購入のためのプライマリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ(PMCCF)、既発社債購入のためのセカンダリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ(SMCCF)ならびに自動車ローン、スチューデントローンなどの資産担保証券(ABS)を購入するターム・アセット・バックト・セキュリティーズ・ローン・ファシリティ(TALF)の規模ならびに適用範囲は最大8500億ドルまで拡大します。
さらにミュニシパル・リクイディティー・ファシリティ(MLF: Municipal Liquidity Facility)を新設し、州政府、市、郡などの地方政府が発行する債券を購入することを通じて5千億ドルの流動性を提供します。
FRBがこうして積極的に流動性の提供に乗り出している理由は前回発表されたPPPなどのプログラムが余り進捗していないからだと思います。
■えこひいきを疑われるリスクを敢えておかす理由
今回のMSNLFなどはFRBが直接末端の借り手に対して手を差し伸べる行為に他ならず、これは「誰を助け、誰を見殺しにするか?」というような不公平の問題を引き起こしかねない難しい問題です。
そのような微妙な問題を差し置いてFRBが敢えて行動に出た理由はアメリカ経済が心臓発作を起こしかけているからだと理解出来ます。
ある意味、「FRBは世界最大のPEファンドに変身した」という風にも形容できるでしょう。
これは投資家からすれば頼もしい一方で(事態はそれほど深刻なのか?)と戦慄させる展開です。