新型コロナウイルスが大統領選挙に与える影響

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■大統領選挙のスケジュール

今年の大統領選挙は11月3日に本投票が行われます。現在、すでに民主党のジョー・バイデン元副大統領が指名確実大統領候補となっています。共和党は現職のドナルド・トランプが出馬することが確実視されています。

民主党大会は8月17日から20日にかけてウィスコンシン州ミルウォーキーで開催される予定です。

その前にジョー・バイデン大統領候補は副大統領候補を指名しなければいけません。現時点ではネバダ州上院議員キャサリン・コルテス・マストとカリフォルニア州上院議員カマーラ・ハリスが有力視されています。

副大統領候補が決定すれば、いよいよ市場参加者も大統領選挙に注目しはじめると思います。

■新型コロナウイルスの影響

さて、ここまでの大統領選挙戦はジョー・バイデン候補が指名確実候補になった後、新型コロナウイルス禍が発生し、選挙どころではなくなっています。

当初7月に予定されていた民主党大会が8月にずれ込んだことも投資家の関心が選挙から離れる原因になりました。

ピュー研究所はワシントンD.C.に所在する超党派の世論調査シンクタンクですが、同研究所が4月29日から5月5日にかけて約1万人に実施した聞き取り調査では回答者の60%がソーシャル・ディスタンシング(感染を避けるため距離を置くこと)が新型コロナウイルスの拡散防止に役に立ったと回答しました。

また国民の多くは現在新型コロナウイルス拡散防止のための政策を策定している医学関係の専門家の打ち出してきた対策を信じ、それに素直に従うと回答しています。

ただ民主党支持者と共和党支持者という区分けでは民主党支持者はソーシャル・ディスタンシングならびに専門家の打ち出す対策に賛成意見が多いのですが、共和党支持者は懐疑派が多いです。

また黒人は医師に対して懐疑的な人が多いです。これは新型コロナウイルスの死者の中で黒人の比率が高かったことも影響していると思います。

リアルクリアポリティクスの集計では5月21日現在でジョー・バイデンが48.4%、ドナルド・トランプが42.9%の支持率となっています。両者の間に5%近い差がありますが、これは新型コロナウイルス禍がひどくなる前と余り変化はありません。その意味では新型コロナウイルスは有権者の意見にあまり影響を与えてないと言えます。

次にベッティング(賭け)サイトにおけるオッズ(勝率)を見ると5月24日の時点でドナルド・トランプが50.5%、ジョー・バイデンが42%となっており、逆にトランプ優勢となっています。この構図は3月下旬以降ずっと変わっていません。

本選挙の際に実際に勝敗を決める選挙人団(electoral college)から計算される得票予想ではジョー・バイデンが183、ドナルド・トランプが125、「どちらともいえない」が230でした。つまり「どちらともいえない」の数が多く、現時点では勝敗を予想することは困難です。

■長期経済低迷は支持率に影響する

上に見たように、これまでのところ新型コロナウイルスは大統領選挙戦に余り影響を与えていません。その理由は「今回は伝染病が景気暗転の原因であり、トランプ政権の采配とは無関係だ」と考える有権者が多いからでしょう。

しかし今後米国経済の低迷が長引くと「トランプ政権の対応がまずい」という風に評価が変わって来る可能性があります。