
■8月の雇用統計
9月4日(金)、8月の雇用統計が発表されました。全体的に着実な改善が見られました。
まず非農業部門雇用者数ですが予想140万人に対し137.1万人でした。
失業率は予想9.8%に対し8.4%でした。
上のチャートで今回の失業率の改善のペースをリーマンショック後の失業率のピーク時(2010年)と比較してみて下さい。明らかに今回の方が急ピッチに改善していることがわかります。
また今回は失業率が10.0%を初めて下回り、今年の春、ロックダウンで失業率が急上昇した際言われていた「もう今年中に失業率は10%を下回らないのでは?」という悲観論者が間違っていたことが証明されました。
人種別の失業率は下のチャートのようになっています。
今回の新型コロナ不況は有色人種を直撃したことがわかります。
次に学歴別の失業率のチャートを掲げます。
明らかに高学歴の方が失業率が低いです。これはレストランなどのサービス業に従事するワーカーの学歴が一般に低いことが関係しています。今回の新型コロナは「ソーシャル・ディスタンシング」の必要からサービス産業をとりわけ直撃しました。その結果が学歴別失業率にも表れたというわけです。
平均時給は4月に急上昇しましたが、いまは通常の水準に戻ってきました。
これはロックダウンでレストランなどのワーカーが一時的に大量に失職した関係で低賃金労働者が平均時給の計算から除外されたことが原因です。
8月の平均時給の伸びが例年とほぼ同じに戻ったということは状況がノーマルに戻りつつあることを示唆していると思います。
■まとめ
8月の雇用統計は全体的に米国経済がだいぶノーマルな状態に戻ってきたことを実感させました。
金曜日の立会ではこの雇用統計の発表を受けて長期金利が上昇しました。
市中金利と株式のバリュエーションは「シーソーの関係」にあります。すなわち市中金利が上昇すると株式は売られやすいのです。金曜日の寄付きに木曜日に続いて売り物が殺到したのはそのような理由からです。
したがって9月の米国株式は長期金利の低下という援護射撃が無くなるリスクを孕んでいると言えると思います。
レーバーデー明けは相場の地合いが変わりやすいので、引き続きニューヨーク市場からは目が離せません。