
■「世界経済見通し」
国際通貨基金(IMF)は毎年春と秋に「世界経済見通し」を出版します。秋の号は10月に出たばかりです。同レポートを世界経済の立ち位置を把握するのにとても有益なのでその要点をまとめておきます。
■今年の経済成長は6月の予想より上方修正
2020年の世界の経済成長に関しては下の表のようになっています。
| 2019年 | 2020年 | 2021年 | 6月予想との差2020年 | 6月予想との差2021年 |
世界 | 2.8 | -4.4 | 5.2 | 0.8 | -0.2 |
米国 | 2.2 | -4.3 | 3.1 | 3.7 | -1.4 |
EU | 1.3 | -8.3 | 5.2 | 1.9 | -0.8 |
日本 | 0.7 | -5.3 | 2.3 | 0.5 | -0.1 |
中国 | 6.1 | 1.9 | 8.2 | 0.9 | 0.0 |
6月の予想に比べると全ての地域で今年の予想が上方修正されました。その反面、来年の予想に関しては少しだけ下方修正が入っています。
■5・6月に世界の経済活動が加速
「世界経済見通し」によると5.6月に世界の経済活動が加速しました。
一例として鉱工業生産高は下のチャートのようになっています。
(出典:国際通貨基金「世界経済見通し」)
中国は2月をボトムとして、それ以外の地域は4月をボトムとして経済活動が復活してきている様子がわかります。ただ中国を除いて他の地域は未だ新型コロナ前の水準までは鉱工業生産は戻ってないことがわかります。
次は小売売上高のチャートです。
(出典:国際通貨基金「世界経済見通し」)
こちらのチャートで特徴的なのは中国の消費の戻りが意外に鈍い点です。この理由なのですが中国は先進国に比べて社会保障制度が遅れておりその分、国民が普段から高い貯蓄率を維持することで不測の事態に備える習慣があるからだと察せられます。
今回新型コロナで怖い目に遭ったので、中国の消費者は慎重な態度を崩してないというわけです。
次に世界の貿易量のチャートを示します。
(出典:国際通貨基金「世界経済見通し」)
貿易量はリバウンドしつつあります。しかし新型コロナ以前の水準までは戻っていません。
「世界経済見通し」は「第二四半期の世界のGDPは、大体、ポジティブ・サプライズだった」としています。
その一方で9月以降、先進国での新型コロナの感染者数は再び増加傾向にあり、それに対する懸念を表明しています。
新型コロナの「第2波」が来ると経済の再開を一時ストップしなければいけなくなるケースも出てきます。その意味で今後の感染者数の推移からは目が離せません。