新型コロナワクチンの承認申請が出された 米国経済はダブルディップ・リスクに晒されている

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■新型コロナワクチンの承認申請が出された

先週金曜日、ファイザーが新型コロナワクチンの承認申請を米国食品医薬品局(FDA)に提出しました。同社によるとこの新型コロナワクチンは投与を受けなかった人に比べて95%も新型コロナウイルスに罹るリスクを低減するのだそうです。

このデータの強さから考えてFDAが同ワクチンを承認する可能性は高いです。

FDAは12月10~15日頃に承認の判定を下すと言われています。

もし承認された場合、すでに作り置きしてあるワクチンをすぐに全米の病院で新型コロナ患者のケアで奮闘している前線の医師、看護婦などの医療関係者に配布する予定です。

つぎに老人ホームなどクラスタが発生するとたいへんなことになるハイリスクの施設を中心にワクチン接種が行われます。

一般の市民にワクチンが回ってくるのは2021年の夏ごろになると言われています。

 

■ワクチンが承認されると……

ワクチンが承認されると人々が街に繰り出すため、景気は上向くことが予想されます。実際、歴史を紐解けば黒死病やスペイン風邪が流行し、それが終息した後、景気が良くなり、賃金の上昇や出生率が上昇したことが報告されています。

それはゆくゆく長期金利の上昇を招く可能性があります。

(出典:セントルイスFRB)

10年債利回りは11月第2週に1.00%につっかける展開になったのですが、いまは鎮静化しています。もし金利が突発的に上昇するシナリオではそれは株式にとってもマイナスになると思います。とりわけ高いバリュエーションまで買い進まれているハイパー・グロース株にとってはアゲンストの風が吹くことになります。

 

■足下の景気は逆に悪くなりつつある

しかし今日の時点での足下の景気は、むしろ悪くなりつつあります。その理由はいま欧州や米国で新型コロナの第三波が猛威を振るっており、人々が外出しにくいムードになっているからです。

折角の感謝祭(サンクスギビング)も親戚・家族の集いを自粛する動きが出ています。この調子だとクリスマスも淋しいことになりそうです。

すでに新型コロナ第三波の影響でクレジットカードなどのリアルタイムの消費動向を見ると売上が落ち込み始めています。

今年のクリスマスは皆、外出を控え、ネットで買い物をする「デジタル・クリスマス」にならざるを得ないと思います。

 

■政府支援も打ち切り

一方、米国財務省は「地方自治体向け融資プログラム、中小企業向け融資プログラムは予定通り年内いっぱいで終了する」と発表しています。

マーケットは正常に機能しているのだからもうこのプログラムは必要ないというのが財務省の立場です。

今年の春に新型コロナでロックダウンを余儀なくされたとき、議会は慌てて景気支援法案(CARES ACT)を可決しました。その後、下院は第二弾としてHEROS ACTを提出したのですが、こちらのほうは結局、流産しました。つまり今回は財政の支援がないままに新型コロナ再燃による景気のダブルディップをしのがなければいけないということです。

 

■読みにくい相場先行き

現在のマーケットの置かれた状態を見ると①ワクチンが承認されると景気が強くなるかも? という材料と②足下では新型コロナ第三波で景気がつんのめりそうになっている…という強弱観が対立する展開になっています。いまのところ市場参加者は浮足立っていません。それを示す好例が高利回り債スプレッドだと思います。

(出典:セントルイスFRB)

高利回り債スプレッドは市場参加者が動揺したときにチャートが上昇することで知られています。いまは低位で安定しています。

つまり(足下景気が暗転したとしてもすぐワクチンが出来るのだから景気は戻ってくる……ここは慌てず様子を見よう)と投資家は考えているわけです。