債券市場はFRBに金利政策メッセージの変更を要求している

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■長期金利の上昇

このところ米国の長期金利が上昇しています。下は10年債利回りですが1.38%まで上って来ました。

(出典:セントルイスFRB)

普通、投資家が今後景気は強くなり、その結果インフレ圧力が増大すると考える局面で長期債は売られやすいです。長期債が売られると利回りは逆に上のチャートに見るように上昇するわけです。

すると債券市場の投資家は「景気は今後強くなる!」と考えていることが上のチャートから読み取れるわけです。

■現在の米国の金利政策

アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利としてフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)を使用しています。現行のFFレートは0~0.25%のレンジです。

このように少し幅を持たせてある理由は今のように政策金利の絶対値が限りなくゼロに近い場面では、ピンポイントで政策金利をひとつのレートに固定するのがすごく難しいからです。でも実質ゼロ金利だと考えて良いでしょう。

FRBはそれに加えて債券買い入れプログラムを実施しています。そこでは毎月800億ドルの米国財務省証券と400億ドルの住宅抵当証券、合計1200億ドルを買い入れています。

いま中央銀行が債券を投資家から買い上げるということはその対価として現金をそれらの投資家に渡しているわけですから、これはキャッシュを市中に散布し、カネ余りの状態をわざと作りだしていると考える事が出来ます。

このようにして現在FRBは7.55兆ドルを市中にばら撒いています。

(出典:セントルイスFRB)

 

■政策金利決定枠組み

さて、FRBは去年、「政策金利をどう決める?」というアプローチの見直しを行いました。FRBの物価ターゲットはこれまで通り2%で変更ないのですが、従来は景気が強くなり始めると、そそくさと利上げし、着地としてピッタリ2%のインフレ率にピンポイントで到達する考え方が行動規範となっていました。

しかしこのやり方だと時期尚早に引締めが始まってしまうという過去の反省から、いまはもっと「ゆるーく」2%というターゲットを捉えて良いのではないか? という主張がFRB内で主流派となったのです。

それを踏まえ、「少々景気が強くなっても、慌てず、ゆっくり引締めの腰を上げる」という基本方針が打ち出されました。この新しい基本方針が「政策金利決定枠組み」なのです。

この新方針が打ち出され、未だ半年しか経ってないので、いまFRBは頑としてその新方針を変更したくないと考えています。

それはつまり1. 政策金利自体も現行の0~0.25%を変更しないし、2. 債券買い入れプログラムも現行の毎月1200億ドルを変更しない、ということに他なりません。

■市場はFRBの「心変わり」を織り込み始めた

しかし市場では奇妙な事が起こりはじめています。それは4月28日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)から政策金利の確率が現行の0.25%の水準に「100%そうなる」と市場関係者が考えなくなり始めているからです。

(出典:CME FedWatch)

 

これを見ると僅かに4.1%の確率でFFレートが0.5%になると考えている投資家が存在していることがわかります。

普通、政策金利を操作することに加えてFRBが債券買い入れプログラムを現在のように並行で走らせている局面では、利上げに着手する前にまず債券買い入れプログラムを手仕舞うのが常套的なやり方です。

すると4月28日のFOMCから政策金利が変更されるかもしれないと考える投資家が存在するということは、当然、その前に債券買い入れプログラムに関しても、テーパーリング(=縮小)する意図を市場に伝え始めないといけないのです。

これは2013年にFRBが当時実行していた債券買い入れプログラムを縮小する意図をほのめかしたとき、市場が荒れた「テーパー・タントラム」のエピソードからもわかるとおり、たいへんデリケートな問題です。

新型コロナ・ワクチンの接種が進むにつれて経済の先行きは明るさを増しています。するとある時点でFRBは現在の超緩和的な金利政策を修正しなければいけません。金利政策のメッセージ変更はとても難しいと思います。