債券利回り上昇は一段落 市場参加者の関心は2022年へ

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■債券利回り上昇は一段落

2月後半以降、米国10年債利回りのことが話題に出ない日はありませんでした。

10年債利回りは3月18日に1.75%まで上昇しましたが、現在は1.63%まで下がって来ており、落ち着きを見せ始めています。

長期で見れば1980年代初頭から始まった10年債利回りのダウントレンドは、現在もガッチリと守られており、トレンドは反転していません。

日米の長期金利の差がとても大きくなっています。10年債の場合、日本の機関投資家が為替ヘッジのコストを加味しても米国債に投資することでJGBより1.4%も高い利回りを得ることが出来ます。そのことはある時点で日本の機関投資家が米国債への投資を増やすことを示唆しています。

■消費者物価指数

現在、消費者物価指数はFRBの物価ターゲットである2.0%を少し下回る1.7%前後で推移しています。

現在、アメリカでは新型コロナワクチンの注射がどんどん捗りはじめており、それに呼応するカタチで景況感も明るさを増しています。

普通、景気が良くなるとインフレも強まることから、今後インフレ率は2%を超えて、ずんずん高進する可能性があります。

その場合でも連邦準備制度理事会(FRB)は利上げには慎重な態度を示すでしょう。その理由はFRBが政策金利を決定する「考え方」を手直ししたからです。

■新金利政策決定枠組み

FRBは去年、新金利政策決定枠組みを示し「インフレ率は一定の期間の平均を取って2%になれば良いわけで、多少のオーバーシュートは黙認する」方針を打ち出しました。

この新金利政策決定枠組みが市場参加者からクレディビリティーを獲得するためには、実際にインフレ率が2%を超え、さらにその場合でもFRBが頑として動かないということを実地で示す必要があります。

パウエル議長はそれをやる気満々です。

幸い市場参加者のインフレ期待は2%以下の水準にアンカーされています。ですからFRBの初動が遅れてもインフレは手のつけられないことにはならないと思います。

■2022年が意識されはじめた

先の連邦公開市場委員会(FOMC)で参考資料として示された経済予想サマリーでは、FRBのメンバーは今年のGDP成長率を6.5%、2022年を3.3%と予想しています。

今年の6.5%成長という数字は1984年以来の強い数字です。しかしそれは去年新型コロナで経済がボロボロになったことの揺れ戻しとして強い数字が出るだけであって、今後、米国経済がずっと急成長を続けるということではありません。

一方、2022年以降のGDP成長率を見ると、また昔通りの、年率2~3%前後の低成長へと戻ってゆくと思われます。

いま株式市場の参加者は1. 足下の強い景気と、2. 来年以降の低成長を、一体どういう風に株価に反映させるべきか? で悶々としています。このところの気迷い商状は、そういったところに原因があると思います。

■政策金利

現在のフェデラルファンズ・レートは0~0.25%です。当分、利上げは無いと思います。

前回リーマンショック後に利上げが始まったのは2015年からです。その際、利上げする前に先ず債券買い入れプログラムが縮小されました。今回もまず債券買い入れプログラムの縮小から手を付けるのが自然なやり方です。

■債券買い入れプログラム

債券買い入れプログラムの様子を知るには連邦準備制度の総資産のチャートを見ると良いです。これはFRBが在庫にしている債券類の総和を知るために、もっとも手っ取り早いデータポイントです。

(出典:セントルイスFRB)

前回、リーマンショックの後、債券買い入れプログラムを実施したときはそれをどう手仕舞うか? が問題になり、ベン・バーナンキ議長がちょっと手仕舞い、すなわちテーパーリングをほのめかしたら、市場がかなり荒れました。2013年5月のことです。このエピソードをテーパー・タントラムといいます。

今回、2021年2月から3月にかけて相場が荒れたのは、ジェローム・パウエル議長がひとこともテーパーに言及してないにもかかわらずそれがおこってしまったので、テーパーレス・タントラムと呼ぶ人も居ます。

いまのところFRBが近くテーパーリングをシグナルする可能性はゼロに近いです。

■まとめ

債券利回りの上昇は一段落した観があります。株価は新型コロナワクチン接種にともなう米国経済の強烈な回復を織り込みましたが、そろそろ「その次」を考える局面に来ています。この場合の「その次」とはより低い成長率を指します。それをどう織り込んでいいのかわからないという気迷いが、このところの気まぐれで予測のつかない相場の背景にあります。