9月のISM製造業景況指数は改善 但しサプライチェーンの問題がインフレ圧力を招来

■9月のISM製造業景況指数

9月のISM製造業景況指数が発表されました。コンセンサス予想59.6を上回る61.1でした。

(出典:米サプライマネージメント協会)

調査票に対する回答を見ると半導体をはじめとする電子部品の不足で苦しんでいるメーカーが多いです。

港湾の積み下ろし作業の遅延、コンテナの不足、労働者が新型コロナを理由に仕事に出勤してこない、などの問題で需要に応じきれないという回答者がありました。

素材の不足ならびに素材価格の急騰は幅広い企業に影響を及ぼしています。人手が足らないので新規採用を増やそうとしても適材が見つからないというコメントもありました。

幸いなことに需要そのものは強いのでサプライチェーンの問題ならびにインフレの問題を除けば見通しは明るいです。

ハリケーン・アイダでメキシコ湾沿いの石油施設が操業を一時停止した影響で石油化学製品の供給が滞っているという報告がありました。

またコンテナを貨車に積み替えて目的地へ送る複合輸送ではボトルネックが生じています。

家具のメーカーはベトナムにおける新型コロナの蔓延で工場閉鎖になった影響を受けています。

熟練機械工の払底からいままで社内で行っていた作業の一部を外注する羽目に陥っているメーカーもあります。

接着剤、アルミ、苛性ソーダ、銅、段ボール、ディーゼルオイル、電気モーター、電子部品、ポリエチレン、紙製品、プラスチック、鉄鋼、ステンレススチールなど幅広い品目でコスト・インフレが起きています。

■まとめ

このようなメーカーの購買担当者の声を聞くと、インフレは本当に連邦準備制度理事会(FRB)が考えているように一過性なのか首をかしげたくなります。

実際、最近、長期金利はスルスルと上昇しており投資家がインフレに対するガードを固くしていることを感じさせます。

賃金はこのところ普段より速いペースで上昇しているのですが、ISM製造業景況指数のアンケートのコメントからもわかるとおり思ったように労働者を雇えない雇用主が増えているということは賃金インフレが一過性のものではなく、しばらく尾を引くリスクを感じさせます。

もし賃金インフレが昂進する展開になればFRBは慌てて金融の引き締めを行わなければいけなくなるかもしれません。

以上のことは企業のマージンを圧迫し業績悪化の原因を作ります。加えて長期金利の上昇は株式バリュエーションにとって悪い材料です。

これらのことから米国株に対しては引き続き慎重な見方を堅持すべきだと思います。