FRBの采配が正しいと考える投資家が増えた結果長期金利が低下

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■長期金利が低下

先週、米国10年債利回りが急低下しました。債券利回りが低下しているということは債券が買われ、債券価格は上昇していることを意味します。

先週の利回り低下幅は、2020年春に新型コロナが蔓延し投資家が安全資産である債券に大挙して投資資金をシフトして以来の大きなものでした。

■市場は不況到来を心配しているのではない

先週の長期金利の低下が新型コロナで外出禁止令が出て以来、最大だったということで(ひょっとして市場参加者は景気の腰折れを懸念しているのでは?)と皆さんは感じるかも知れません。

私は米国がこのまま景気後退に突入するリスクは小さいと考えています。そうではなくて、連邦準備制度理事会(FRB)の手綱さばきが結局正解だったのでは? と考えるトレーダーが増えているから長期金利が低下しているのだと思っています。

■景気の息の根が止まるのは中央銀行が慌てて利上げしたとき

そもそも中央銀行が利上げをする理由は「好景気の時期を、なるべく引き延ばしたい」と願うからです。

経営者は賃金インフレで余り利幅が圧迫され過ぎると採用意欲を失ってしまいます。すると突然パタリと雇用が止まってしまうリスクがあるのです。いまは下のチャートに見られるように労働者が自ら転職するケースがとても増えています。

(出典:セントルイスFRB)

これは労働者が自信を持っており、より有利な働き口を求めて積極的に転職していることを示し、それ自体は労働市場の健全性を物語っています。

しかしあまりに「売り手市場」になり過ぎると賃金=インフレ・スパイラルと呼ばれる悪循環が起きます。

この悪循環が始まると手のつけられないインフレに発展するので中央銀行は矢継ぎ早に利上げをすることを迫られます。普通、景気が失速するのはそのような場面です。

だからFRBはハラハラしながらこの展開を見守ってきたと思います。

■市場の利上げタイミング観測は、FRBが示したシナリオに鞘寄せしている

FRBは今月から債券買入れプログラムの縮小(=テーパー)を開始しており、来年の6月までにそれは完了する見込みです。

普通、債券買入れプログラムが完了した後で、いよいよ利上げに着手します。つまり第一回の利上げは来年の6月に敢行されるというのが自然なシナリオなのです。

米国の政策金利はフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)と呼ばれるもので、それには先物が存在し、CMEというデリバティブ取引所でトレードされています。

その先物の取引実勢価格から、市場参加者がどのくらいの確率でFFレートが動くと織り込んでいるか? を逆算する方法があります。

その細かい計算方法は皆さんは知る必要はないので、確率計算の結果だけを示すと、下のチャートのようになります。

(出典:CME FedWatch)

チャート中黄色のバーは直近、すなわち11月20日の時点での確率を表しています。すると2022年6月15日に開催が予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)で現行の政策金利、0.25%が引き上げられ、0.5%になる確率は46.7%になっていて、そこが最大確率であることが読み取れます。

これはまさしくFRBが誘導しているシナリオであり、FRBの心の位置と市場参加者の心の位置が「6月15日のFOMCで初回の利上げがある」という点に関し一致してきていることを示唆します。

次に今からほぼ一年後、2022年12月14日に予定されているFOMCにおける利上げ確率を見ると、下のチャートのようになっています。

(出典:CME FedWatch)

これを見ると0.75%のところが最大値になっています。FRBは0.25%刻みで利上げすると見られていますから現行の政策金利である0.25%がこのチャートに示されたように0.75%になるのなら、それは2回の利上げを織り込んでいるということになります。

つまり「2022年の利上げ回数は2回」というのが市場参加者の予想なのです。

これはFRBが市場に対してシグナルしてきたシナリオと一致しており、そこにハチャメチャ感はありません。この程度のゆっくり、整然とした利上げが景気の腰折れを招くリスクは低いでしょう。

つまり「好景気の時期を、なるべく引き延ばしたい」というFRBのシナリオ通りの展開に持って行ける可能性が大なのです。

これは米国経済にとってもベストのシナリオだし株式市場にとっても歓迎すべき展開であることは言うまでもありません。